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パーキンソン病は有名人が病気を公表したりすることもあり、世間的にも結構認知されている病気です。パーキンソン病は脳の異常により、体の運動障害がみられます。以下のような症状が特徴的な症状になります。

その他にも仮面様顔貌、前屈前傾姿勢、すくみ足、小刻み歩行、突進歩行などがあります。これらのようにうまく動かせないのは後で説明する運動抑制系の間接路が優位となっていて過剰なNo Goが起こっているためと考えられています。
ホーン&ヤール(Hoehn&Yahr)の症状の分類はパーキンソン病の重症度分類に用いられ以下のようにランク分けされています。
T〜V度までの覚え方として、人間の形に合わせると覚えやすいです。T度であれば腕の形に合わせて片側と覚えます。U度は両腕の形に合わせて両側性と覚えます。V度はさらに真ん中の体幹の形に合わせてバランス障害と覚えます。

これらの症状が起こるメカニズムを見ていきます。
脳には黒質と呼ばれる場所があります。黒質にはドパミン作動性神経があり、そこでドパミン(DA)と呼ばれる物質を作っています。作られたドパミンには2つの作用があると考えられています。
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つくられたドパミンは線条体にあるGABA作動性神経のD2受容体にくっつきます。
D2受容体にドパミンがくっつくとGABAの放出を抑制します。

先ほどの振戦などの症状は、GABA神経系を経由して筋肉に情報が伝えられて起こります。よって、ドパミンを増やしてGABA作動性神経の抑制をすればいいことがわかります。
同じくドパミンが線条体にあるコリン作動性神経のD2受容体にくっつくとアセチルコリンの放出を抑制します。

アセチルコリンは、先ほどのGABA作動性神経のムスカリン受容体にくっつくと、GABAの放出を促進します。そのため、アセチルコリンが多い状態ではGABA作動性神経が活性化してしまいます。

よってドパミンを増やせば、コリン作動性神経の抑制もできて、最終的にはGABA作動性神経の抑制にもつながると考えられています。
逆に線条体のドパミン受容体遮断作用のある薬はパーキンソン症候を引き起こす可能性があり薬剤性パーキンソン症候群の原因となります。
パーキンソン症候群という大きな枠組みで見た時に、一次性の病態にはパーキンソン病、レビー小体型認知症、進行性核上性麻痺などがあります。それに対して薬剤性パーキンソン症候群は二次性の病態となります。薬剤性パーキンソン症候群の場合、被疑薬中止後数週から数か月かけて徐々に改善します。
先ほどのメカニズムからもわかるように、おおざっぱに言ってしまえば、ドパミンを増やして、アセチルコリンを減らせばいいわけです。そのため、パーキンソン病治療薬は大きく3つにわけることができます。
パーキンソン病治療薬は理論を抑えれば国試もしっかり解けるはずなので、少し解説していきます。
ドパミンが不足しているからドパミンを足してあげれば良い気がしますが、そう簡単にはいきません。なぜならドパミンは血液脳関門を通過できないからです。血液脳関門は名前の通り、脳に入るための関門です。そのためここを通過しない限りは目的部位である脳にドパミンは到達できないのです。

ドパミンでは通過できないのでどうすれば良いか。映画のシーンを思い浮かべてください。変装して関門を通過するやついますよね。ドパミンも変装すればいいのです。ドパミンを変装させたものをレボドパと言います。レボドパであれば、監視の目をすり抜け、通過できます。

しかしここでまた映画のシーンを思い浮かべてください。変装は始めのうちはバッチリですが、だんだん衣装がとれてきたりしてボロがでてきますよね。変装にボロを出させようとする邪魔者がいます。それが末梢性芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素(AADC)や末梢性カテコール-O-メチル転移酵素(COMT)と呼ばれる酵素たちです。
末梢性芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素(AADC)はレボドパをドパミンにする酵素です。
末梢性カテコール-O-メチル転移酵素(COMT)はレボドパを3-O-メチルドパにする酵素です。

これら邪魔者をどうにかすり抜け、血液脳関門を通過してしまえばこっちのもの。レボドパは変装を解除して、ドパミンとなり目的部位に向かいます。ただ今の話からもわかるようにレボドパの変装できる時間は短く、半減期は約90分と言われています。その他薬物動態にも個人差があり、次で説明する薬を組み合わせて処方されることがほとんどです。
前置きが長くなりましたが、薬に行きます。
レボドパだけでなく、邪魔者である末梢性芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素(AADC)を阻害するベンセラジドやカルビドパ、末梢性カテコール-O-メチル転移酵素(COMT)を阻害するエンタカポンを配合しレボドパの変換を防ぎます。このことによってレボドパの投与量が少なくなり、レボドパの副作用である吐き気や動悸などを減らすことが出来ます。

COMT(末梢性カテコール-O-メチル転移酵素)を阻害し、末梢でのレボドパの変換を防ぎます。つまり、レボドパの中枢移行を増やします。
先ほどのマドパー(レボドパ+ベンセラジド)、ネオドパストン(レボドパ+カルビドパ)などと併用して、wearing-off現象の改善に使われます。wearing-off現象とは、直訳すると、すり減らすなどの意味であり、長年レボドパを使っていると効果が短くなってしまう現象のことです。
レボドパは血液脳関門を通過した後は、ドパミンになります。その後ドパミンはD2受容体に結合して作用します。これらの薬はD2受容体を直接刺激することで作用します。

先ほどは麦角アルカロイドという種類でしたが、これらは非麦角アルカロイドと呼ばれています。非麦角アルカロイドは麦角アルカロイドに比べて、心臓弁膜症の副作用が起こりにくいと言われています。なお、ニュープロ(ロチゴチン)はパッチ剤で、アポカイン(アポモルヒネ)は皮下注製剤です。アポカイン(アポモルヒネ)はoff症状に使われます。off症状は、突然薬が効かなくなる症状のことです。
あと現場で覚えておく知識として、ビ・シフロール、ミラペックス(プラミペキソール)は腎排泄です。
ドパミン作動性神経からドパミンの遊離を促進します。

ドパミン作動性神経から出てきたドパミンは、D2受容体に作用すると言いましたが、ここでも邪魔者がいるのです。ドパミンはMAOB(B型モノアミン酸化酵素)によって一部が阻害されてしまいます。これらの薬はMAOBを阻害して、中枢でのドパミンの代謝を防ぎます。

GABA作動性神経にあるムスカリン受容体を抑制することで作用します。向精神薬などによるパーキンソニズムに有効とされています。

ドパミンは、GABA作動性神経のD2受容体に結合して、GABA作動性神経を抑制するという話をしました。それに対して、興奮的に働くのがアデノシンです。アデノシンがアデノシンA2A受容体に結合することで、GABA作動性神経を興奮させてしまいます。ノウリアスト(イストラデフィリン)はアデノシンA2A受容体に拮抗して、興奮するのを抑えます。

パーキンソン病のすくみ足とは、歩こうという意思に対して、はじめの一歩が出にくくなってしまう症状です。すくみ足はノルアドレナリンの生成が抑制されることが原因と言われています。ドプス(ドロキシドパ)は中枢内でノルアドレナリンに変換されて、ノルアドレナリンを補充します。

理論を抑えて国試を何回か解けば、抗パーキンソン病治療薬は覚えられると思います。