Sponsored Link
前回の、免疫抑制薬、免疫とヘルパーT細胞の働きでは一部の病気は自分の免疫が関わるという話をしました。今回まとめる関節リウマチも免疫もその1つです。関節リウマチは、免疫が誤って自分の体を攻撃してしまいます。その結果関節に炎症が起こり、関節が腫れたり、痛みが出てきます。
炎症にはサイトカインと呼ばれるタンパク質が関係します。サイトカインは細胞から分泌されるタンパク質で細胞膜受容体に結合することで、免疫調節、生体防御などの働きに関与します。
サイトカインの種類はいくつかあり、関節リウマチに関わるサイトカインの例としては、IL-6(インターロイキン6)、TNF-α(腫瘍壊死因子)などの炎症性サイトカインがあります。これらの炎症性サイトカインを抑えることで、炎症を抑えることができます。
関節リウマチ治療薬には以下のようなものがあります。
Sponsored Link
Sponsored Link
構造式に金を含む製剤です。詳しい作用機序はわかっていませんが、異常な免疫反応を是正すると考えられています。
シオゾール(金チオリンゴ酸ナトリウム)は注射薬で、リドーラ(オーラノフィン)は内服薬です。
構造式にSH基を含む製剤です。詳しい作用機序はわかっていませんが、T細胞の増殖を抑えるなどの作用があると考えられています。
リンパ球などのDNAの材料の1つは葉酸です。葉酸がうまく使われるためにはジヒドロ葉酸レダクターゼと呼ばれる酵素により反応が進んでいくことが必要です。
リウマトレックス(メトトレキサート)は、ジヒドロ葉酸レダクターゼを阻害してリンパ球などの生成を抑制します。
リンパ球などのDNAの材料は他にもあり、それがピリミジンです。ピリミジンを作るには、ジヒドロオロテートデヒドロゲナーゼと呼ばれる酵素による反応が必要です。
アラバ(レフルノミド)はジヒドロオロテートデヒドロゲナーゼを阻害して、ピリミジンを作れなくします。
これらの薬に、細かい違いはありますが、炎症を引き起こすTNF-αに結合してTNF-αがTNF-α受容体に結合するのを阻害します。
これらの薬は注射薬で、毎日注射する薬ではないので、投与間隔に注意が必要です。
炎症を引き起こすIL-6は、IL-6受容体にくっつき作用します。アクテムラ(トシリズマブ)は、IL-6受容体に結合することで、IL-6が活性化しないようにします。
アクテムラ(トシリズマブ)も皮下注か点滴静注かで投与間隔が変わってきます。
T細胞の活性化には大きく2つのシグナルが必要と考えられています。
1つ目は、T細胞受容体(TCR)と抗原提示細胞(APC)表面の主要組織適合遺伝子複合体(MHC)によるシグナルです。
2つ目は、T細胞表面のCD28とAPC表面のCD80/CD86によるシグナルです。
オレンシア(アバタセプト)は、これらのシグナルのうちの2つ目、すなわちAPC表面のCD80/CD86に結合して、シグナルを阻害することでT細胞の活性化を抑制します。
炎症性サイトカインが受容体にくっつくと、ヤヌスキナーゼ(JAK;Janus kinase)を介してシグナルが伝達されていきます。
ゼルヤンツ(トファシチニブ)は、JAKに結合して、シグナル伝達を阻害します。
ヘルパーT細胞の働きを抑制するのが、サプレッサーT細胞です。
モーバー(アクタリット)はサプレッサーT細胞の分化誘導を促進して、免疫異常を正常化します。
ロイコトリエンなどの炎症性サイトカインの産生を抑制することで抗炎症作用を示します。
ケアラム(イグラチモド)は、B細胞による免疫グロブリンの産生を抑制、単球・マクロファージ・滑膜細胞による炎症性サイトカインの産生を抑制することにより、抗リウマチ作用を示します。これにはNFκB(Nuclear FactorκB)と呼ばれる転写因子の活性抑制が関わるとされていて、NFκB(Nuclear FactorκB)の活性低下が起こることで、免疫グロブリンや炎症性サイトカインのmRNA発現低下が起こると考えられています。