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心不全は、心臓の機能が低下して全身に血液を送り出せなくなってしまった状態をいいます。心不全で血液が十分に送り出せなくなると以下のような症状が出てきます。
血液が十分に送り出せず、息切れはなんとなくわかりますが、むくみはなぜおこるのでしょうか。それには、レニン-アンギオテンシン-アルドステロン系が関わってきます。
心不全により血液量が低下すると、腎血流量も低下します。そうすると、その刺激が腎の傍糸球体細胞に伝わり、レニンと呼ばれる物質が出てきます。また血流量低下により交感神経機能を高めて血圧を維持しようとします。腎臓のβ1受容体が刺激されることでもレニンは分泌されます。
出てきたレニンによって、アンギオテンシノーゲンはアンギオテンシンTとなります。アンギオテンシンTはアンギオテンシン変換酵素(angiotensin converting enzyme;ACE)によってアンギオテンシンUに変換されます。
アンギオテンシンUは血管平滑筋のアンギオテンシンUAT1受容体に結合して血管収縮させます。その他にも副腎皮質のアンギオテンシンUAT1受容体に結合してアルドステロンを分泌させます。アルドステロンは鉱質コルチコイドの一種でありNa+と水を維持させるように働きます。この結果むくみが生じます。
体液量や血管抵抗が増えることは心臓にとって、とても負担になります。心臓より手前の段階、つまり心臓に戻る血液量による負荷を前負荷と言います。逆に心臓のあと、つまり末梢血管抵抗による負荷を後負荷と呼びます。
前負荷や後負荷が増えても、心臓は頑張ろうとして心機能を維持しようとします。心機能を維持しようとした結果、心肥大と呼ばれる状態となります。心肥大は長期的に見ると心機能に障害をもたらすため良い状態とは言えません。
心不全治療薬としては、この前負荷と後負荷を取り除く薬と、強心薬の2つにわけられます。
これらは、強心配糖体に分類されます。二次的な作用もありますが、おおまかに以下の2つの作用があり、イメージとしては「心臓を強くゆっくり」にします。
心筋の細胞膜上には、Na+,K+ATPaseというものがあります。これは、Na+を細胞外に出し、代わりにK+を細胞内に取り込むポンプの働きをしています。これが働くことで、細胞内はNa+が少ない状態になります。
そして、もう1つNa+,Ca2+交換系というのもあります。これは、細胞内にNa+を取り込み、Ca2+を細胞外に排出しています。これが働くことで、先ほどで減ってしまったNa+を細胞内に呼び戻すイメージになります。
これらによってNa+はほぼ元に戻されるかもしれませんが、Ca2+は細胞外に放出され減ってしまっている状態になります。心臓の収縮にはCa2+が必要で、これでは心臓の収縮力が落ちてしまいます。
強心配糖体ははじめのNa+,K+ATPaseを阻害する作用があります。ここを阻害することで、Na+とK+の交換を抑制します。そうすると、細胞内のNa+は保たれるのでNa+を呼び戻す必要がなくなります(Na+とCa2+の交換がいらなくなる)。よってCa2+も細胞内もとどまることができ、心臓が収縮する。といった作用をもたらします。
心筋の収縮力が高まることによって、体内の循環が良くなるため、利尿作用が二次的に起こります。
心臓には刺激伝導系という電気のようなものが走っていて、その電気がうまく伝わることで拍動します。その伝わり方は、洞房結節→房室結節→ヒス束→左脚右脚→プルキンエ線維という順番に伝わります。強心配糖体は、刺激伝導系のうち、房室結節からヒス束の興奮伝導速度を低下させることによって、遅らせます。
この作用によって、刺激伝導系の下流へのパルスが来にくくなるため、我慢しきれなくなった心室筋が自ら勝手に動いてしまうことがあります。よって心室性不整脈を起こす可能性があります。
心筋のβ1受容体が刺激されると、アデニル酸シクラーゼが活性化されます。アデニル酸シクラーゼが活性化されると、ATPからcAMPが増えます。cAMPが増えるとプロテインキナーゼAと呼ばれるリン酸化酵素が活性化し、心筋の収縮力を高めます。「〜アミン」なので覚えやすいと思います。
先ほどの図で言うところのアデニル酸シクラーゼに直接働きかけて、心筋の収縮力を高めます。
cAMPはホスホジエステラーゼV(PDEV)と呼ばれるものによって、5’-AMPに分解されてしまいます。よって、これらの薬はホスホジエステラーゼVを阻害し、cAMPを増やして心筋の収縮力を高めます。
ミルリノンの「ミ」からV(三)をイメージすればホスホジエステラーゼVを引っ張り出しやすいです。
心筋が収縮するにあたって、Ca2+がトロポニンCというところにくっつくことが必要です。アカルディ(ピモベンダン)は、トロポニンCのCa2+をより感じ取りやすくして、くっつきやすくします。その他にも、ホスホジエステラーゼV阻害作用も持ちます。
アクトシン(ブクラデシンナトリウム)はcAMPに変化して、直接cAMPを増加します。
先ほどのアカルディ(ピモベンダン)と合わせたゴロがあります。
トロをベンチで食べすぎてしまったために、キャンプでブクブク太ってしまったというお話です。
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ここでは詳しい作用機序は省略しますが、利尿作用によって無駄な水を出します。無駄な水を出すことで前負荷の軽減ができます。
利尿薬の詳細は利尿薬、水だけでなくNaとKの動きを抑えようでまとめています。
これもここでは細かい作用機序は省略しますが、血管を拡張させることで、前負荷と後負荷の軽減ができます。
レニン-アンギオテンシン-アルドステロン系で出てきた、ACEを阻害します。そうすることで前負荷と後負荷の軽減をはかり、レニン-アンギオテンシン-アルドステロン系の悪循環をしないようにします。
ACE阻害薬は「〜プリル」なので覚えやすいです。
レニン-アンギオテンシン-アルドステロン系で出てきたアンギオテンシンUがAT1受容体にくっつくのを遮断することによって、効果を示します。ARBは、「〜サルタン」であるため覚えやすいです。
α1受容体遮断作用とβ1受容体遮断作用が主に関わります。
α1受容体を遮断すると血管が広がるので、後負荷が軽減します。
β1受容体を遮断すると、心臓の無駄な拍動を抑えられます。他にもレニンの分泌も抑えることで、レニン-アンギオテンシン-アルドステロン系の抑制作用もあります。
先ほどのアーチスト(カルベジロール)とともに、現場ではとても使われます。
ANP(atrial natriuretic polypeptide)は、心不全になった時に、体を守るために心房から出てくる物質であり、血管拡張作用や利尿作用を持ちます。ハンプ(カルペリチド)は人工的に作ったANP製剤です。