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何にもつなげられない
薬の前に、ドパミンの作用などを確認する。
脳には黒質と呼ばれる場所がある。黒質にはドパミン作動性神経があり、そこでドパミン(DA)と呼ばれる物質を作っている。作られたドパミンには2つの作用があると考えられている。
つくられたドパミンは線条体にあるGABA作動性神経のD2受容体にくっつく。
D2受容体にドパミンがくっつくとGABAの放出を抑制する。
振戦などの症状は、GABA神経系を経由して筋肉に情報が伝えられて起こる。よって、ドパミンを増やしてGABA作動性神経の抑制をすればいいことがわかる。
同じくドパミンが線条体にあるコリン作動性神経のD2受容体にくっつくとアセチルコリンの放出を抑制する。
アセチルコリンは、先ほどのGABA作動性神経のムスカリン受容体にくっつくと、GABAの放出を促進する。そのため、アセチルコリンが多い状態ではGABA作動性神経が活性化してしまう。
よってドパミンを増やせば、コリン作動性神経の抑制もできて、最終的にはGABA作動性神経の抑制にもつながると考えられている。
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ドパミンが不足しているからドパミンを足してあげれば良い気がするが、、そう簡単にはいかない。なぜならドパミンは血液脳関門を通過できないからである。血液脳関門は名前の通り、脳に入るための関門。そのためここを通過しない限りは目的部位である脳にドパミンは到達できない。
ドパミンでは通過できないのでどうすれば良いか。映画のシーンを思い浮かべてください。変装して関門を通過するやついますよね。ドパミンも変装すればいい。ドパミンを変装させたものをレボドパと言う。レボドパであれば、監視の目をすり抜け、通過できる。
しかしここでまた映画のシーンを思い浮かべてください。変装は始めのうちはバッチリですが、だんだん衣装がとれてきたりしてボロがでてくる。それがハラハラして映画は楽しいのですが(笑)同じように変装にボロを出させようとする邪魔者がいる。それが末梢性芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素(AADC)や末梢性カテコール-O-メチル転移酵素(COMT)と呼ばれる酵素たちである。
末梢性芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素(AADC)はレボドパをドパミンにする酵素。
末梢性カテコール-O-メチル転移酵素(COMT)はレボドパを3-O-メチルドパにする酵素。
これら邪魔者をどうにかすり抜け、血液脳関門を通過してしまえばこっちのもの。レボドパは変装を解除して、ドパミンとなり目的部位に向かう。
前置きが長くなったが、メネシット配合錠(レボドパ、カルビドパ)はレボドパだけでなく、邪魔者である末梢性芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素(AADC)を阻害するカルビドパを配合しレボドパの変換を防ぐ。このことによってレボドパの投与量が少なくなり、レボドパの副作用である吐き気や動悸などを減らすことが出来る。
レボドパ量として、1 回100〜125mg、1日100〜300mg経口投与よりはじめ、毎日又は隔日にレボドパ量として、100〜125mg増量し、最適投与量を定め維持量(標準維持量はレボドパ量として1回200〜250mg、1日3回)とする。適宜増減するが、レボドパ量として、1日1500mgを超えないこととする。
レボドパ単味製剤の服用後、少なくとも8時間の間隔をおいてから、レボドパ1日維持量の約1/5量に相当するレボドパ量を目安として初回量をきめ、1日3回に分けて経口投与する。適宜増減して最適投与量を定め維持量(標準維持量はレボドパ量として1回200〜250mg、1日3回)とするが、レボドパ量として1日1500mgを超えないこととする。
他の薬局で出されている併用薬について患者さんから電話が。
患者「メネシット配合錠(レボドパ、カルビドパ)を飲み始めてから、オシッコが黒くなることがあるんだけど、大丈夫なの?薬の説明書には書いてはあるんだけど心配で・・・」
うちじゃなくて、メネシット配合錠(レボドパ、カルビドパ)出している薬局に質問してくれよと思いながらも、断るわけにはいかず
私「調べて折り返しします。」
併用薬で、抗血小板薬などはなさそうだった。メネシット配合錠(レボドパ、カルビドパ)の添付文書を見てみると、確かに黒色尿の記載があった。
私としても薬の色なのかどうかが気になったので、メーカーさんに聞いてみることに。
私「患者さんが黒色尿が出たということなんですけれども、添付文書にも記載があって、これは薬の色と言うことでしょうか?」
メーカーさん「メネシット配合錠(レボドパ、カルビドパ)のうち、レボドパの代謝物がメラニンのような色素を作って黒色になるという報告があります。薬の色かどうかの判断はできませんが、ご参考にしてもらえたらと思います。」
というわけで無事に解決。ちなみにさらに調べてみると、メネシット配合錠(レボドパ、カルビドパ)などのレボドパを含む製剤はアルカリ性条件下で分解、酸化してメラニンを作って黒色を示すよう。特に高齢者などで嚥下機能が落ちている患者などが、酸化マグネシウムをかみ砕いて飲む→口の中がアルカリ性になる→その後ドパミン含有製剤をかみ砕く→口の中で反応して口が黒くなるというケースもあるようなので知っておきたい
尿の変色は赤とかのイメージが強かったが、黒色尿もあることを知れていい勉強になった。私自身も知らなかったので、もし他の患者さんに出たときはしっかりと伝えてあげよう。