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薬を飲んでいると、「この薬とあの薬は飲み合わせが悪い」とかそういう話を聞くかと思います。今回は飲み合わせを薬理の面から学んでいきます。
まず飲み合わせは大きく2つのパターンにわけられます。
1つ目が、薬どうしが意気投合して、効果を強めるパターンです。
2つ目が、薬どうしがけんかをしてしまい、効果が弱まってしまうパターンです。
おそらくこれだけでもなんとなくのイメージが出来ると思います。薬理では、意気投合するパターンを協力作用、けんかしてしまうパターンを拮抗作用と言います。
薬と薬が仲良くなって、効果が強まります。協力作用の効果は、薬どうしによって異なり、強くなる幅も変わってきます。その強くなり方によって大きく2つにわけることができます。
薬どうしの効果が和になって現れることを相加作用と言います。
例えば、〇ラゴンボール風に例えると、〇空と〇じろべぇは普通程度のお友達です。ありえないですが、戦闘力(効果)を〇空が1、〇じろべぇが1だとしましょう。この場合で、二人が協力して戦闘するなら「1+1」で2となります。
つまり相加作用は純粋に足し算となります。
薬どうしの効果が和以上に現れることを相乗効果と言います。
同じく先ほどの例とすると、〇空と〇リリンになります。〇空と〇リリンは小さいころから、ともに修業した仲です。同じく戦闘力を〇空が1、〇リリンが1だとしましょう。この場合で、二人が協力して戦闘すると、息の合ったコンビプレーで戦闘力「1+1」が2ではなく、3となるのです。
相乗効果は、マンガなどでよくある「俺とお前がいれば、もっともっと強くなれる」っていうやつです。
薬どうしがけんかをしてしまうパターンが拮抗作用になります。拮抗作用にはいくつか種類がありますが、中でも以下の2つが重要となってきます。
薬どうしが1つの受容体をめぐって争うような拮抗を競合的拮抗と言います。なんだかよくわからないと思うので、少しずつかみ砕いていきます。
まず薬が効果を発揮するには、受容体と呼ばれる受け皿のようなものにくっつくことが必要です。薬と受容体は、よくカギと鍵穴に例えられます。カギを薬、鍵穴を受容体とします。カギ(薬)が鍵穴(受容体)に入ることで、扉(効果)が開きます。
そして、ここにドアを開けられる本物のカギと、ささるけれどもカギを回せない偽物のカギがあったとします。競合的拮抗は鍵穴をめぐって、これらの2本のカギが争っているような状態となります。
では薬に話を戻しましょう。
本物のカギをアセチルコリン、偽物のカギをアトロピン、鍵穴をムスカリン性アセチルコリン受容体とします。
アセチルコリンがムスカリン性アセチルコリン受容体にくっつくと、部位によって様々な効果が出てきますが、ここでは腸管が収縮するという作用を起こすとします。
逆にアトロピンがムスカリン性アセチルコリン受容体にくっついた場合は偽物なので、腸管の収縮が抑えられます。
アトロピンをマウスに投与したとします。この時、ムスカリン性アセチルコリン受容体にくっついていき、全てのムスカリン性アセチルコリン受容体にアトロピンがくっついている状態になります。
ここで、アセチルコリンを投与していきます。はじめは少量なので、ムスカリン性アセチルコリン受容体には影響を与えませんが、量を増やしていくとアトロピンがくっついているムスカリン性アセチルコリン受容体の周りを取り囲みます。
それにビビったアトロピンは、アセチルコリンに場所を明け渡し、今度はアセチルコリンがムスカリン性アセチルコリン受容体にくっつき始めます。
そうしてどんどん量を増やしていくことで、今度はアセチルコリンがムスカリン性アセチルコリン受容体に全てくっついている状態となります。
では用量-反応曲線はどうなるでしょうか?
アセチルコリンだけの時のグラフに対して、アトロピンがある場合はアトロピンをどかす分、余計にアセチルコリンが必要となります。そのため用量-反応曲線の効果は100%のまま高濃度側(右側)に水平移動します。
これが競合的拮抗の内容です。
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次に非競合的拮抗を見ていきます。
薬どうしの作用するところが異なるが、主作用薬の作用を妨げるような拮抗を非競合的拮抗といいます。こっちもよくわからんですね(笑)
先ほどのカギと鍵穴の例を再び思い出してください。今度は鍵穴と、チェーンの扉だとしましょう。本物のカギで鍵穴は空きますが、チェーンがあると少ししかあけることが出来ず、完全には扉は開きません。
同じく薬に話を戻すと、カギをアセチルコリン、鍵穴をムスカリン性アセチルコリン受容体、そしてパパベリンをチェーンだとします。
アセチルコリンがムスカリン性アセチルコリン受容体にくっついたとしても、パパベリンでチェーンされているので、腸管の収縮率は下がります。
先ほどと同様に、パパベリンを投与した状態で、アセチルコリンを増やしていく実験を行います。
先ほども説明したように、今度はいくらアセチルコリンを増やしたとしても別のところでパパベリンがチェーンをかけているので無意味となってしまいます。
用量-反応曲線は、アセチルコリンのみのグラフと比べると、効果が100%より低下して頭打ちのグラフとなります。
これが非競合的拮抗です。