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私たちが感染症にかかったりすると、抗生物質が処方されることがあります。抗生物質は適正に使われれば、とても治療に役立ちます。
しかし抗生物質の不適切な使用によって、耐性菌ができてしまったりと、いたちごっこの状態が続いています。今回は抗生物質の基本的なことをまとめていきます。
まずは細菌の構造から確認していきます。
細菌は、外側の細胞壁と内側の細胞質という構造をとっています。
細菌の細胞壁はペプチドグリカンと呼ばれるものによって出来ています。このペプチドグリカンが作られるにもいくつか過程があります。
おおざっぱに言うと、N-アセチルムラミン酸とN-アセチルグルコサミンという成分が結合して1本の鎖のようなものを作っています。その1本の鎖どうしを、トランスペプチダーゼと呼ばれる酵素が、ペプチド鎖をくっつけることによって、より強固なつなぎをつくります。1本の鎖どうしを網の目にするようなイメージです。これによってペプチドグリカンがつくられます。
ペプチドグリカンはヒトにはないものなので、これを攻撃することができれば、人体に影響なく、細菌のみを攻撃することができます。そのため、抗生物質のターゲットの1つとなります。
細胞壁に働く抗生物質には以下のようなものがあります。
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β-ラクタム系は、さらに細かくペニシリン系、セフェム系、カルバペネム系、ペネム系などに分けられます。
とても有名なペニシリンですが、トランスペプチダーゼと結合して、ペプチドグリカンの合成を阻害することで、細胞壁の合成を阻害します。
胃酸で分解されやすいため、注射薬となっています。
天然のペニシリンの欠点を改善して、人工的に合成したペニシリンになります。例えば、先ほどの天然のペニシリンは注射のみでしたが、酸性に対する耐性をもたせることで、内服も可能となっています。
消化性潰瘍治療薬、ピロリ菌の除菌でも紹介したように、サワシリン(アモキシシリン)はピロリ菌の除菌にも使われます。
素直に細菌がやられてくれれば良いが、細菌も命に関わることなので必死に生きようとします。細菌が生きようとする結果、β-ラクタマーゼと呼ばれる薬剤を分解する酵素を出して分解しようとします。そうなると、ペニシリン系の薬は失活してしまいます。
そこで、さらなる対抗策として出てくるのがβ-ラクタマーゼ阻害薬であり、その名の通りβ-ラクタマーゼを阻害します。そうすることで、失活を防いでくれます。
これらの薬は、ペニシリン系に加えて、βラクタマーゼ阻害薬を配合した合剤となっています。
セフェム系もトランスペプチダーゼに作用し、ペプチドグリカンの合成を阻害して、細胞壁の合成を阻害します。
セフェム系はさらに細かく世代分類されます。第一世代セフェム系は、グラム陽性菌に抗菌力が強く、グラム陰性菌に抗菌力は弱いとされています。名前が「セファ」とつくため、ア→+をイメージするとグラム陽性菌については覚えやすいです。
また第一世代セフェム系は、β-ラクタマーゼへの抵抗性が低いです。
第二世代セフェム系からは、β-ラクタマーゼへの抵抗性があります。
抗菌力も変わり、グラム陰性菌にもグラム陽性菌にも使えます。
第三世代セフェム系は、さらにグラム陰性菌への抗菌力が増しますが、グラム陽性菌への抗菌力は弱いとされています。
第四世代セフェム系は、グラム陽性菌にもグラム陰性菌にも有効で、緑膿菌にも有効です。マキシピーム(セフェピム)は、発熱性好中球減少症で使われることがあります。
カルバペネム系もトランスペプチダーゼに結合して、ペプチドグリカンの合成を阻害することで、細胞壁の合成を阻害します。
広い抗菌力を持ちますが、デパケン(バルプロ酸)とは併用禁忌です。カルバペネム系がバルプロ酸の血中濃度を低下させてしまうと考えられているからです。
こちらは、バルプロ酸は併用注意なので、禁忌ではないです。
グリコペプチド系はN-アセチルムラミン酸の末端であるD-Ala-D-Alaに結合することによって、細胞壁の合成を阻害します。
急速な静注をすると、ヒスタミンを遊離してレッドネック症候群も起こすことがあるため、時間をかけて点滴静注をする必要があります。
現場で問題となりがちな、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)によく使われます。MRSAに有効な薬たちのゴロを紹介しておきます。
バンコクのリゾート地にやってきましたが、そこでアールグレイでティータイムをするという優雅な物語です。
ペプチドグリカンの材料の合成初期段階を抑えることで、細胞壁合成を阻害します。