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独立性の検定、帰無仮説と対立仮説
前回のクラメールの連関係数と例題までで相関分析の基本的なことを見ました。今回は独立性の検定について見てみます。
独立性の検定とは
前回のクラメールの連関係数を求める例題では、薬学部の20人のアンケート結果から得られたものでした。母集団を日本全国の薬学部と考えると、別の20人が選ばれていたらアンケート結果は変わっていたはずです。母集団のクラメールの連関係数を求めるには、全薬学部生からアンケート結果をもらわないといけません。
統計学は標本から母集団を推定する学問であるため、標本から母集団のクラメールの連関係数を推定できそうですが、残念ながらできません。ただ母集団のクラメールの連関係数が0でないことはわかります。
母集団のクラメールの連関係数が0ということは、2変数が無関係であるということを示すわけですが、これを調べる方法が独立性の検定となります。つまり、検定とは母集団について立てた仮説が正しいかどうかを標本のデータから推測することを言い、独立性の検定はその1つといえます。
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帰無仮説と対立仮説
検定を行うには、帰無仮説と対立仮説を立てる必要があります。
- 帰無仮説;立証が難しそうな肯定的な仮説
- 対立仮説;帰無仮説に対立する仮説
先ほどの薬学部のアンケートの例でいうと、
- 帰無仮説;母集団における性別と好きな科目のクラメールの連関係数は0である
- 対立仮説;母集団における性別と好きな科目のクラメールの連関係数は0よりも大きい
と表現することができます。
帰無仮説と対立仮説は統計学の独特な表現なので慣れないと思うので、例題を見てみましょう。
例題1
「ある製薬企業の錠剤を作る工場では、不良品発生率は平均0.05より大きい」という仮説を検定したい。この時の帰無仮説と対立仮説を答えよ
- 帰無仮説;平均不良品発生率は0.05である。
- 対立仮説;平均不良品発生率は0.05より大きい
例題2
「ある大手薬局グループの就業時間の母平均は40時間より大きい」という仮説を検定したい。この時の帰無仮説と対立仮説を答えよ
- 帰無仮説;就業時間の母平均は40時間である
- 対立仮説;就業時間の母平均は40時間より大きい
どうでしょうか?感覚的に帰無仮説と対立仮説がわかったでしょうか?次回は検定をさらに深掘りしていきます。
まとめ
- 検定とは母集団について立てた仮説が正しいかどうかを標本のデータから推測することを言う。
- 独立性の検定は、標本から母集団のクラメールの連関係数が0でないことを調べる方法をいう。
- 検定するにあたって、帰無仮説と対立仮説をたてる必要がある。
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- 1つの母集団からn個のデータを観測して標本平均を作ると、nが大きいほど標本平均は母平均に近い数値をとる可能性が高くなります。
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- 母集団が正規分布している場合は、そこから標本平均を作った場合も正規分布します。正規分布している母集団からの標本平均における95%予言的中区間はμ−1.96σ/√n〜μ+1.96σ/√nです。
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- カイ二乗分布表は標準正規分布表とは異なり、横軸以上の面積が占める割合を表しています。カイ二乗分布表の読み方と例題をまとめてみました。
- 母分散をカイ二乗分布で推定する方法
- (標本−母平均)/母標準偏差を行うことで、標準正規分布に変換できます。つまりこの変換を行いカイ二乗分布をとることで、95%予言的中区間を利用することができます。
- (標本−標本平均)/母標準偏差の二乗の和はカイ二乗分布する
- (標本−標本平均)/母標準偏差の二乗の和は標本分散に比例するためカイ二乗分布をとります。ただし、自由度がn−1となります。
- (標本−標本平均)/母標準偏差の二乗の和の自由度が1下がる理由
- (標本−標本平均)/母標準偏差の二乗の和は元は2つだったデータが式変形することで1つに減るため、自由度が1下がったカイ二乗分布となります。
- 母平均が未知の正規母集団の区間推定の例題
- (標本−標本平均)/母標準偏差の二乗の和を出すことで母平均が未知の正規母集団を区間推定することが可能となります。それの例題となります。
- t分布と統計量Tとは?
- 統計量Tを出して、t分布がわかれば、未知の母平均を推定することができます。統計量T=(標本平均−母平均)×√(n−1)/標本標準偏差で求められます。
- t分布のヒストグラムと統計量Tの計算例題
- t分布のヒストグラムは正規分布に似たような山のようなグラフを描きます。t分布と正規分布の違いは、山のてっぺんと山の麓の高さが違います。
- t分布表の読み方
- t分布表の確率95%の数字を見て、そのプラスマイナスで挟まれる範囲の面積が95%となります。t分布は自由度が上がるにつれて正規分布に近づいていくため、自由度が∞の時の確率95%は標準正規分布と一緒の1.96となります。
- t分布を利用した未知の母平均の区間推定、例題
- 統計量Tとt分布表を用いることで、未知の母平均を推定することができます。薬学部の統計学ではt分布までできていれば、かなりのレベルまで達しています。
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- 相関分析のうち、数量データと数量データの組み合わせにおける指標を単相関係数といいます。単相関係数の求め方を例題とともにまとめました。
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- 相関比の求め方と例題
- 数量データとカテゴリーデータの関連性の指標として、相関比があります。相関比=級内変動/(級内変動+級間変動)で求めることができます。求め方と例題をまとめました。
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