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データから母集団を推定する方法
標準正規分布表、面積と確率では標準正規分布表の読み方などを見ました。今回はデータから母集団を推定する方法についてみてみたいと思います。
選挙の出口調査
母集団と標本でもお話ししたように、選挙の結果発表をする時に全員開票される前にあっという間に結果が出てきます。これはまさに今回のデータから母集団を推定する統計学の技術の結晶とも言えます。では、これはどのようにして一部のデータから推定されているのでしょうか?
選挙を例にあげておきながら、いろいろな政党などへの投票などになり複雑になってしまうので、以下のシンプルな例でみてみたいと思います。
選挙に立候補したAさんに対して、賛成の人は〇、不賛成の人は×のアンケートをとった。その結果、賛成の〇を投票した人が10人いた。〇と×をつける確率はそれぞれ50%とすると、投票者数として以下の人数が妥当かどうかを考えよ。
- 16人
- 36人
考えるにあたって〇と×をつける可能性は50%であるため、投票者が20人だと半分の10人は〇をつけるのではないかと推測できます。ただ20人から1人ずつ減って19人だとしても、10人〇をつける可能性があります。このように一人ずつ減っていって、何人までなら妥当かということを調べます。
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16人
もうすでにお察しかと思いますが妥当性を調べるにあたって、正規分布の95%予言的中区間を利用します。正規分布の95%予言的中区間は、μ−1.96σ〜μ+1.96σでした。
つまり、μとσがわかれば95%予言的中区間を出すことができます。
ここでは細かいことは割愛しますが、今回のように〇と×が50%の場合ではμとσは母集団の数Nとすると近似的に以下の式で出すことができます。
- μ=N/2
- σ=(√N)/2
この式より、μ=8、σ=2となります。これを先ほどのμ−1.96σ〜μ+1.96σに代入すると、4.08〜11.92となります。つまり16人投票した場合、〇をつける人は4.08〜11.92人となり、〇が10人はこの中に入るので妥当ということができます。
36人
先ほどは人数が減っていくバージョンを見ましたが、逆に上限はどれくらいとなるでしょうか?同様に正規分布の95%予言的中区間で妥当かどうかを見ていきます。
同様にμとσを求めると、μ=18、σ=3となります。このことから、正規分布の95%予言的中区間は12.12〜23.88となります。10はこの範囲外となるので、想定外の数値となります。よって、36人と予想するのは妥当ではないと判断できます。
仮説の36人は妥当ではないため、このような場合では統計学では仮説を棄却すると言います。少し先の話になりますが、このような表現をすることを覚えておいてください。
まとめ
- 正規分布の95%予言的中区間を使うことで、データから母集団を推定することができる。
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