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データに一定数をかけた時の平均値や標準偏差への影響
前回のデータに一定数を加えた時の平均値や標準偏差への影響では、データに一定数を加えた場合平均値のみに影響を与えることがわかりました。今回はデータに一定数をかけた時の平均値や標準偏差への影響を見ていきましょう。
データに一定数をかけた時の標準偏差
前回は没問を例にデータに一定数を「加えた」場合でしたが、今回は定期試験などで気まぐれな先生が「よーし没問作ってしまった代わりに、全員得点を二倍にしちゃう」といった場合どのような影響がでるかを見てみましょう。前回同様にA〜Eでテストを受けた結果以下のような点数でした。
- A(前);1
- B(前);2
- C(前);3
- D(前);4
- E(前);5
前回同様に加点前を(前)とし、加点で二倍になった後を(後)と表記します。では加点後を見てみると
- A(後);2
- B(後);4
- C(後);6
- D(後);8
- E(後);10
これに対して、今回も標準偏差を出してみます。そして平均、偏差、分散なども出す必要があるのでついでに比較していきます。
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平均
加工前の平均値は3、加工後の平均値は6となります。得点が二倍になっているので、平均値も一緒に二倍になります。つまり、データに一定数をかけた場合は平均値もそのかけた数だけ増えます。
偏差
次に偏差です。先ほどの求めた平均をもとに偏差を出すと以下のようになります。
- A(前);−2
- B(前);−1
- C(前);0
- D(前);1
- E(前);2
- A(後);−4
- B(後);−2
- C(後);0
- D(後);2
- E(後);4
前回の「加えた」場合では前後で変化がありませんでしたが、「かけた」場合の偏差は加工前に対して、加工後は二倍となっています。
分散
次に分散です。先ほど求めた偏差をもとに分散を出すと、加工前の分散は2、加工後の分散は8となります。
前回の「加えた」場合では前後で変化がありませんでしたが、「かけた」場合の偏差は加工前に対して、加工後は4倍となっています。ほかのデータでやってもらえればわかりますが、データに一定数をかけて加工した場合、分散はかけた数の二乗倍となります。
標準偏差
最後に標準偏差です。先ほど求めた分散をもとに標準偏差を出すと、加工前の標準偏差は1.4、加工後の標準偏差は2.8となります。
前回の「加えた」場合では前後で変化がありませんでしたが、「かけた」場合の偏差は加工前に対して、加工後は2倍となっています。標準偏差も他のデータでやってもらえればわかりますが、データに一定数をかけて加工した場合、標準偏差はかけた数だけ増えます。
以上のことからわかるように、今回の気まぐれな先生が没問で点数二倍にすると一見みんな平等に得点が増えていそうな気がして喜んでしまいそうですが、平均値のみならず標準偏差にも影響を与えてしまうため、やってはならないことがわかります。万が一やっている先生がいたならば、統計学の知識をもってしっかりとツッコんであげてください(笑)
まとめ
- データに一定数をかけた場合、平均値も標準偏差もかけた数だけ増える
データに一定数をかけた時の平均値や標準偏差への影響 関連ページ
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