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t分布のヒストグラムと統計量Tの計算例題
前回のt分布と統計量Tとは?では統計量Tについてみました。母平均を推定するためには、あとヒストグラムが必要です。そのため今回はt分布のヒストグラムについてみていきたいと思います。
t分布のヒストグラム
統計量Tは
T=(標本平均−母平均)×√(n−1)/標本標準偏差
で表されました。複雑そうな数式なので、t分布のヒストグラムもカイ二乗分布みたいになるかと思いきや、そうではありません。むしろシンプルな正規分布のような以下のヒストグラムをとります。
正規分布と似たような山の形ではありますが、正規分布と比べるとt分布は山のてっぺんが低く、山の麓の部分が高いのが違いとなります。
次にt分布どうしを見てみると、赤が自由度1、緑が自由度2、青が自由度5、紫が自由度限界となっていて、自由度が大きくなるにつれて山のてっぺんが高くなっていくのがわかるかと思います。この自由度の限界については今度別のページで解説できたらとは思っています。とりあえず今はこういうグラフを描くんだと思ってもらえればよいです。
ではt分布のヒストグラムも確認したところで、統計量Tの計算を例題で見てみましょう。
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例題
ある錠剤の重さの正規母集団の母平均が2だったとする。この正規母集団から5個データをとったところ、1g、4g、1g、4g、5gだった。この時の統計量Tはいくらになるか?
T=(標本平均−母平均)×√(n−1)/標本標準偏差であるため、まず標本平均から出していきます。
標本平均=(1+4+1+4+5)/5=3
次に標本標準偏差を出します。標本標準偏差は標本分散に√(ルート)をとれば出てくるので、先ほどの標本平均を利用して標本分散をまず出します。
標本分散={(1−3)^2+(4−3)^2+(1−3)^2+(4−3)^2+(5−3)^2}/5=2.8
標本分散=2.8であるため、√(ルート)をとり、標本標準偏差=1.67です。
これらをT=(標本平均−母平均)×√(n−1)/標本標準偏差に代入すると
T=(3−2)×√(5−1)/1.67
T=1.20
今回は統計量Tの計算をしやすくするために母平均が2と知っているものとして例題を作りましたが、前回も言ったように本来であれば母平均を推定するためにt分布はあるので、次回は知らないものとして推定する方法をみていきます。
まとめ
- t分布のヒストグラムは正規分布に似たような山のようなグラフを描く。
- t分布と正規分布の違いは、山のてっぺんと山の麓の高さが違う。
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- 正規分布の95%予言的中区間と例題
- 標準正規分布のデータに一定数σをかけて、さらに一定数μを足して加工するため、正規分布の95%予言的中区間は、μ−1.96σ〜μ+1.96σです。
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- 1つの母集団からn個のデータを観測して標本平均を作ると、nが大きいほど標本平均は母平均に近い数値をとる可能性が高くなります。
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- 母分散をカイ二乗分布で推定する方法
- (標本−母平均)/母標準偏差を行うことで、標準正規分布に変換できます。つまりこの変換を行いカイ二乗分布をとることで、95%予言的中区間を利用することができます。
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- (標本−標本平均)/母標準偏差の二乗の和は標本分散に比例するためカイ二乗分布をとります。ただし、自由度がn−1となります。
- (標本−標本平均)/母標準偏差の二乗の和の自由度が1下がる理由
- (標本−標本平均)/母標準偏差の二乗の和は元は2つだったデータが式変形することで1つに減るため、自由度が1下がったカイ二乗分布となります。
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- (標本−標本平均)/母標準偏差の二乗の和を出すことで母平均が未知の正規母集団を区間推定することが可能となります。それの例題となります。
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