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前回の母平均が未知の正規母集団の区間推定の例題までで母分散(母標準偏差)の推定を見ました。かなり初めの方に話したと思いますが、データをとらえるうえで大事なのが平均と標準偏差でした。では、母分散のみだけでなく母平均も推定することができるでしょうか?
結論としては母平均を推定することができ、それを可能にするのがt分布です。今回はt分布に使われる統計量Tについてみていきたいと思います。
統計量Tはイギリスのゴセットという人によって見つけられたものです。ゴセットはスチューデントというペンネームを使い、学術雑誌に統計量Tを投稿したそうです。そのためスチューデントのt分布などともt分布は呼ばれます。
t分布を利用すれば母平均を推定できますが、その統計量Tは以下の式で表されます。
統計量T=標準正規分布するデータ×√(Wの自由度)÷√(カイ二乗分布W)
おそらく意味不明だと思うので、標準正規分布するデータと√(Wの自由度)÷√(カイ二乗分布W)にわけて考えてみます。
正規分布している母集団からの標本平均における95%予言的中区間でもお話ししたように、正規母集団からn個の標本をとった場合の標本平均は
とすることで標準正規分布に従うようになります。
(標本−標本平均)/母標準偏差の二乗の和はカイ二乗分布するでも説明したように
となります。またWの自由度はn−1となるのでした。
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これらを先ほどのTを代入して整理すると以下のようになります。(数式にする関係上、記号などを用いています。)
T=(標本平均−母平均)×√(n−1)/標本標準偏差
初めの式はかなり複雑そうな式でしたが、式変形をすることでずいぶんとスッキリしました。標本平均や標本標準偏差を求めることは、これまでの内容がしっかり理解できていればなんということはないと思います。
この統計量Tの分布がしっかりとわかれば、いつものように95%予言的中区間を作って、母平均を区間推定することができます。しかも式変形からもわかるように母分散や母標準偏差が消えているので、それらをしらなくても区間推定できるわけです。
次回、例題を交えながら統計量Tの計算やt分布についてもっとみていきたいと思います。