薬物動態、モーメント解析法とMRTのまとめ

Sponsored Link

薬物動態、モーメント解析法とMRT

今まで、1-コンパートメントモデルに使われる薬物動態パラメータを確認してきました。今回は頭を少し切り替えてください。

 

 

1-コンパートメントモデルは薬を投与した瞬間に瞬間的に全身に移行すると考えるモデルでした。このように今まではあるモデルに基づいて解析してきましたが、今回はモデルに基づかない解析法について見てみます。

 

モデルに基づかない解析法の代表例にモーメント解析法があります。モーメント解析法はモデルに基づかない代わりに、得られたデータを統計学的に考えていく解析法になります。

 

AUCとAUMCとMRT

1-コンパートメントモデルの時にもAUCが出てきました。1-コンパートメントモデルでは瞬時に全身に移行するため、下の図のようなAUCが得られました。

 

 

本来は薬を投与したとしても、吸収や消失には時間がかかるため、山のようなグラフを描くはずです。よって、モーメント解析法におけるAUCは山のような面積となります。

 

 

またモーメント解析法では、血中薬物濃度と時間の積を縦軸、時間を横軸で得られた曲線下の面積であるAUMC(Area Under the first Moment Curve)も使われます。

 

 

このように、投与された薬が体に存在する時間のことをMRT;Mean Residence Time(平均滞留時間)と呼びます。

 

MRTを式で表すと、MRT=AUMC/AUCが成り立ちます。

 

MAT

MRTに似たような言葉にMAT;Mean Absorption Time(平均吸収時間)があります。

 

静注した時のMRTをMRTiv、経口投与したときのMRTをMRTpoとすると、MRTpo=MAT+MRTivが成り立ちます。これは体内動態を考えれば式のイメージができますね。

 

 

そして体内動態が1-コンパートメントモデルに従う時に吸収速度定数kaと消失速度定数kelを使うと、次のようにあらわせます。

 

MRTiv=1/kel

 

MRTpo=1/ka+1/kel

 

これもMRTpoは静注とは違って、吸収する過程があることをイメージできれば式は覚えやすいと思います。

 

では例題を見ていきましょう。

 

Sponsored Link

Sponsored Link


 

例題

ある薬を経口投与してモーメント解析を行ったところ、MRTが12hと得られた。また静脈内投与をしたところMRTが10hと得られた。この薬の体内動態が1-コンパートメントモデルに従い、消化管における時間の遅れは無視できるとき、吸収速度定数はいくらか?

 

吸収速度定数を聞かれているので、MRTpo=1/ka+1/kelを使うことを考えます。問題文より、MRTpo=12hと出ているため、あとkelを求めることができれば答えを出せます。

 

Kelを求める。

Kelを求めるには、MRTiv=1/kelを使うことを考えます。問題文よりMRTiv=10hとわかるため、MRTiv=1/kelに代入して、kel=0.1と求められます。

 

MRTpo=1/ka+1/kelに、MRTpo=12、kel=0.1を代入して、ka=0.5が答えです。

 

まとめ

  • モデルに基づかない解析法に、モーメント解析法がある。
  • 投与された薬が体に存在する時間をMRTと呼ぶ。

Sponsored Link

薬物動態、モーメント解析法とMRT 関連ページ

ADMEと肝初回通過効果の概要
薬を経口投与した後は、吸収、分布、代謝、排泄といったADMEと呼ばれる流れを受けます。薬を経口投与する際には、肝初回通過効果を受け、一部の薬が代謝されます。
薬の吸収は非撹拌水層、溶解速度、胃内容排出速度などの影響を受ける。
経口投与された薬は小腸から吸収され、肝初回通過効果を受けます。吸収された薬に影響を与える要因として、非撹拌水層、溶解速度、胃内容排出速度などがあります。
薬の分布、毛細血管壁と血漿タンパク質
薬の分布では非結合形薬物が組織に移行できます。逆に結合形薬物は血漿タンパク質に薬がくっついています。血漿タンパク質の代表例にアルブミンやα1-酸性糖タンパク質などがあります。
薬の分布、結合定数とLangmuir(ラングミュア)式
薬の結合定数を測定する方法には、平衡透析法、限外ろ過法などがあります。平衡透析法では計算問題、Langmuir(ラングミュア)式ではグラフがどうシフトするのかが問われます。
薬の分布、血液脳関門と分布容積
脳への薬の分布に血液脳関門関わり、脂溶性が高く、分子量が小さいものが血液脳関門を透過しやすいです。分布容積は分布のしやすさを表す指標です。
薬の代謝、CYPの阻害と誘導
分布した薬は代謝を受けて排泄の準備が行われます。代謝に関わるものにシトクロムP450というものがあり、酸化反応に関わります。CYPは薬によって阻害や誘導を受けます。
薬の排泄は糸球体ろ過、尿細管分泌、尿細管再吸収より行われる。
薬は胆汁中排泄などもありますが、基本的には糸球体ろ過、尿細管分泌、尿細管再吸収により排泄されます。クレアチニンの腎クリアランスは腎機能の指標となります。
生体膜透過、単純拡散はめんつゆをイメージしよう。
生体膜透過には、単純拡散などの種類があります。単純拡散はFickの法則により、透過速度は濃度勾配に比例して、膜の厚さに反比例します。またpH分配仮説により分子形が生体膜を透過しやすいです。
特殊輸送、能動輸送はP-糖タンパク質とMichaelis-Menten(ミカエリスメンテン)式をおさえよう。
特殊輸送は能動輸送、促進拡散、膜動輸送などがあります。能動輸送においては、P-糖タンパク質とMichaelis-Menten(ミカエリスメンテン)式をおさえることが重要です。
薬物動態、消失半減期t1/2とグラフの読み方
薬物動態を考える際に、消失半減期、分布容積、全身クリアランス、バイオアベイラビリティなどのパラメーターを使います。消失半減期t1/2は血中濃度が半分になるまでの時間です。
薬物動態、分布容積Vdとグラフの描き方
分布容積Vdは、組織への移行のしやすさを表す指標です。薬物動態では分布容積はDiv=C0・Vdと計算式をあらわすことができます。この式を使って、グラフの描き方を見てみます。
薬物動態、全身クリアランスCLtotとAUC
薬物動態のうち、CLtot(全身クリアランス)は、単位時間あたりの薬を除去した血液の容積をさします。また、AUC(血中薬物濃度時間曲線下面積)は濃度の合計をさし、CLtot(全身クリアランス)との関係式があります。
薬物動態、腎クリアランスCLrの計算式
全身クリアランスは腎クリアランスを用いて、CLtot=CLr+CLhとあらわすことができます。また腎クリアランスはCLr・Cp=U・VやCLr=(GFR・fp+分泌クリアランス)(1-R)とあらわすことができます。
薬物動態、腎排泄と尿中排泄率Ae
薬物動態の尿中排泄率Aeを使うことで、肝代謝か腎排泄かを判断する手掛かりとなります。尿中排泄率Aeを用いて、クリアランスを表すとCLr=CLtot・Aeが成り立ちます。
薬物動態、肝クリアランスCLhと肝抽出率Eh
薬物動態のうち、肝臓を1回通過した時の薬物濃度の減少率を肝抽出率Ehと言います。また肝クリアランスCLhを用いて、肝抽出率を表すと、CLh=Eh・Qhとなります。
薬物動態、量的バイオアベイラビリティと絶対的バイオアベイラビリティ
薬物動態のうち経口投与した後、どれくらい利用されるかの割合をバイオアベイラビリティと言います。計算式では、絶対的バイオアベイラビリティ(F)=(AUCpo/Dpo)/(AUCiv/Div)が成り立ちます。
薬物動態、点滴静注と定常状態
点滴静注を続けると4〜5半減期くらいで定常状態に達します。早く定常状態にもっていくために、点滴静注と負荷量(loading dose)を併用することがあります。

 
HOME プロフィール お問い合わせ