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前回のADMEと肝初回通過効果の概要で、薬は吸収、分布、代謝、排泄という運命をたどることを簡単に確認しました。今回から吸収についてみていきます。
まず、吸収は投与した薬が血液循環に乗ることでした。特に経口投与した薬の多くは小腸から吸収されるのでしたね。
薬の吸収に重要な小腸についてまず見てみます。
小腸はひだがあり、さらに細かく見ると絨毛で覆われています。絨毛はさらに小腸上皮細胞で覆われています。イメージとしては、突起物がついたバスマットです。個人的には、足が気持ち悪いので、普通の平べったいバスマットが好きです(笑)この構造をとることで、表面積がとても広くなります。
小腸上皮細胞の管腔側は微絨毛と呼ばれるさらに細かい絨毛がついています。この表面のことを刷子縁膜と呼びます。逆に血液側の底の部分は側底膜と呼びます。
刷子縁膜などの細胞膜は、リン脂質などの構成成分からできていて、脂質二重層と呼ばれています。脂質二重層の中にタンパク質が色々な形で埋め込まれていて、ある程度の流動性を持ちます。これを流動モザイクモデルと呼びます。
この脂質二重層からなる小腸上皮細胞を薬は透過しますが、その透過方法は細胞を透過する経細胞輸送と、細胞と細胞の間の隙間を透過する細胞間隙輸送があります。
これも前回軽く触れていますが、一応確認します。小腸や大腸の上部から吸収された薬は門脈を経由して肝臓に送られます。肝臓に送られた薬は代謝を受けますが、これを肝初回通過効果と呼びます。
この肝初回通過効果を受けると、分布する薬の量が減ってしまうためロスしてしまうことになります。そのため口腔粘膜、直腸、皮膚、肺、注射といった投与経路であれば、肝初回通過効果を回避できるため有効に薬が使えます。
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小腸から吸収される薬の吸収に影響を与える要素として大きく3つあげられます。
粉に水を溶かすときなど私たちは、クルクルかき混ぜて溶かしますよね?かき混ぜた方が基本的に早く溶けるからです。薬も早く溶けるためにはかき混ぜた方が早く溶けます。しかし、小腸上皮細胞と消化管腔の間にはこの撹拌があまり行われない非撹拌水層と呼ばれる層が存在していて吸収に影響を与えています。
脂溶性が高くて、生体膜を透過しやすい薬では、非撹拌水層が律速となります。
錠剤をイメージすると、最初は1?くらいの大きさのものを飲み込みます。それが体の中で溶けていき、かなり小さくなって吸収されます。よって薬が溶けるかどうかは吸収に影響を与えます。錠剤などの固形薬物の溶解速度はNoyes-Whitney(ノイエスホイットニー)式で表されます。
また難しいのが出てきたぞと思うかもしれませんが、ここでは式についてあまり語るつもりはありません。この式で重要なのは、速度が固体の表面積と溶解度に影響を受けるということです。
溶解度は高い方が溶けるわけですから、そのまま受け入れてもらえると思います。問題は表面積です。
しかし、表面積もカレーのルーを考えれば楽勝です。カレーのルーは、割って入れますよね?割って入れた方が液体と触れる面積、つまり表面積が増えるからです。薬も同じです。表面積があれば溶けやすいことがわかると思います。
よって、製剤上の工夫によりこれらの要素を上げることにより溶解速度が速くなります。代表的な方法には以下のようなものがあります。
Gastric Emptying Rateを略してGERとも呼ばれます。小腸で薬はほとんど吸収するため、胃にずっと薬があるままだといつまでも吸収されません。そのため胃から小腸へ薬が移動する速度は吸収に影響を与えると言えます。
胃内容排出速度に影響を与えるものとしては、食事や併用薬があります。
一般的に食後で薬を飲めば、食事が渋滞を起こしているため、胃内容排出速度は低下します。
しかし、胃内容排出速度だけで吸収が決まるわけではありません。その例として有名なものに以下のようなものがあります。
併用薬などに胃腸運動を抑制する薬などがあると、胃内容排出速度が低下します。胃腸運動を抑制する薬には、抗コリン薬や三環系抗うつ薬などがあります。