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前回の薬の分布、結合定数とLangmuir(ラングミュア)式では薬にタンパクがどれくらいくっつくのかということを確認しました。今回は薬の組織への移行を見ていきます。
以前概要を説明したときに血液に乗って各組織へ分布していくという話をしましたが、もう1つわずかながら関与している経路があります。それはリンパ液です。リンパ液の流れる速度は、血液の流れる速度より遅いため、血液と比べると薬の分布にはあまり関与はしません。しかし抗がん剤をリンパ管に届かせることで転移を防ぐなど、新たな薬の分布経路としての可能性はあります。
薬を静脈内に投与すると、毛細血管内からリンパ管に移行することがあります。移行には分子量が関わり、分子量5000以下は血管、分子量5000以上はリンパ管に移行しやすいと言われています。
なお、リンパ管の経路の場合は肝初回通過効果を避けることができるのも特徴の1つになります。
脳は司令塔の役割を果たす大事な場所です。脳には血液と脳脊髄液という2つの液体が存在しています。そしてこれらの液体を介した2つの分布経路があります。そして大事な脳を守るために、それぞれバリアーが備わっています。
それぞれのバリアーについてみていきます。
血液脳関門は脳の毛細血管の内皮細胞が密着結合して作られています。血液脳関門はバリアーという話をしましたが、薬の脳内移行にも関わっているため、血液脳「関門」とあるように関所をイメージした方がわかりやすいかもしれません。ダメなものは門前払い、通っていいものは通行を許可されるといった感じです。
血液脳関門を構成する内皮細胞は、単純拡散で行われることが多いため、脂溶性が高く、また分子量が小さい薬が透過しやすくなります。
血液脳脊髄液関門は脈絡叢と呼ばれるところの上皮細胞が密着結合して作られています。毛細血管から、脳脊髄液へ薬が移行する際に血液脳脊髄液関門を通る必要があります。
血液脳脊髄液関門は、血液脳関門と比べて表面積が小さいため、脳への薬の移行性への関与は血液脳関門と比べると小さいです。そのため、脳への薬の移行性は血液脳関門が大きな役割を果たすことになります。
胎盤を通じて、胎児と母体で栄養物や排泄物のやりとりが行われます。そのため、母体に薬がある場合は胎児にも移行する可能性があります。それを防ぐために胎盤にも血液胎盤関門(blood-placenta barrier)が存在します。
胎盤透過性も単純拡散で行われることが多く、脂溶性が高く、分子量が小さい薬が透過しやすくなります。
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今までは、薬のバリアー機能などについてみてきましたが、今度は薬の分布のしやすさについてみてみます。薬は様々な種類がありますが、当然それぞれ違う構造式をとり、組織への分布のしやすさは違います。その分布のしやすさを表す指標が分布容積となります。
分布容積はdistribution volumeで略してVdとあらわされることがほとんどです。詳しくは薬物動態の方でまとめるので、ここではよくわからなくても大丈夫ですが、体内薬物量をX、血中薬物濃度をCとすると、X=C・Vdが成り立ちます。
分布容積の大きな薬の代表例は、チオペンタールやジゴキシンがあります。また国家試験的に抑えておきたいのが以下の2つです。
アンチピリンはクソ暗記するしかないですが、エバンスブルー、インドシアニングリーンは色つながりで覚えましょう。ブルー、グリーン、血=赤といった感じです。
とりあえず、今回は分布容積は分布のしやすさを表す指標というのだけは覚えてもらえればいいです。