薬物動態、肝クリアランスCLhと肝抽出率Eh

薬物動態、腎クリアランスCLrの計算式では腎クリアランスを確認しました。今回は肝クリアランスを確認します。肝クリアランスは、その名の通り肝臓におけるクリアランスです。

 

 

血流にのって薬が肝臓に流れてきます。肝臓で代謝され、その後キレイな血液が出てきます。この時肝臓を1回通過した時の薬物濃度の減少率を肝抽出率Ehと呼びます。肝クリアランスとの関係は、肝血流速度Qhとすると、

 

CLh=Eh・Qhが成り立ちます。肝血流速度に肝抽出率を掛け合わせたら、肝クリアランスになることはイメージしやすいかと思います。

 

いつものように例題を見てみます。

 

 

例題

ある薬は、肝臓の代謝と尿中排泄により消失する。全身クリアランスは1L/minであり、静脈内投与後の尿中未変化体排泄率は10%である。この薬を経口投与した時、肝初回通過効果により消失する割合はいくらか?ただし、経口投与した、この薬は消化管粘膜を100%通過し、消化管粘膜における代謝もなく、肝血流量は1.5L/minとする。

 

CLh=Eh・Qhを使うことを考えます。Qh=1.5L/minと出ているので、CLhを求めることができれば、Ehを出すことができるため答えが出ることがわかります。

 

CLhを求める。

問題文に「肝臓の代謝と尿中排泄により消失する」とあるため、CLtot=CLh+CLrとなることがわかります。

 

CLrを求めるためには前回学んだCLr=CLtot・Aeを使いましょう。問題文に「静脈内投与後の尿中未変化体排泄率は10%」とあるため、Ae=10%=0.1とわかります。CLtot=1L/minであるため、これらをCLr=CLtot・Aeに代入して、CLr=0.1L/minとなります。

 

CLrがわかったため、CLtot=CLh+CLrに、これを代入すると、CLh=0.9L/minとなります。

 

ADMEで学んだように、経口で投与された薬は小腸で吸収されて、門脈へ送られ肝臓で代謝を受けます。

 

 

問題文に「消化管粘膜を100%通過し、消化管粘膜における代謝もなく」とあるため、消化管で消失しないことがわかります。つまり、経口投与された薬は、そのまま肝臓で代謝を受けます。

 

 

今回は単位は一致しているため、単位を変換する必要はありません。CLh=Eh・Qhに、CLh=0.9L/minと、Qh=1.5L/minを代入して、Eh=0.6=60%となります。

 

問題文から、情報を読み取る力が求められるため、よーく読んで間違えないように気をつけましょう。

 

まとめ

  • 肝臓を1回通過した時の薬物濃度の減少率を肝抽出率という。
  • CLh=Eh・Qhが成り立つ。