血管外漏出は、通常の点滴や抗がん剤により起こる。

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血管外漏出の原因と対策、抗がん剤とともに

血管外漏出とは、静脈注射した薬剤や輸液が血管の外に漏れることです。その結果、炎症や壊死などを起こす可能性があります。

 

通常の点滴などで起こる可能性がありますし、特に血管外漏出で問題になるのが抗がん剤になります。抗がん剤は、レベルにより3つに分けられています。

 

  • 起壊死性抗がん剤
  • 炎症性抗がん剤
  • 起炎症性抗がん剤

 

 

起壊死性抗がん剤

一番重篤な障害を起こしうるグループです。潰瘍や壊死などをもたらす可能性があります。

 

イメージとしては、アントラサイクリン系ビンカアルカロイド系、タキサン系などがあり、代表的な薬に以下のようなものがあります。

 

アントラサイクリン系
  • アドリアシン(アドリアマイシン)
  • イダマイシン(イダルビシン)
  • カルセド(アムルビシン)
  • ダウノマイシン(ダウノルビシン)
  • ファモルビシン(エピルビシン)
  • ピノルビン(ピラルビシン)

 

ビンカアルカロイド系
  • エクザール(ビンブラスチン)
  • オンコビン(ビンクリスチン)
  • ナベルビン(ビノレルビン)
  • フィルデシン(ビンデシン)

 

抗腫瘍性抗生物質
  • コスメゲン(アクチノマイシンD)
  • マイトマイシン(マイトマイシンC)

 

タキサン系
  • タキソール(パクリタキセル)
  • タキソテール(ドセタキセル)

 

アルキル化薬
  • サイメリン(ラニムスチン)

 

炎症性抗がん剤

起壊死性抗がん剤と比べると、弱めのグループです。発赤、腫脹、疼痛などの炎症反応を起こす可能性があります。

 

イメージとしては、アルキル化薬白金系代謝拮抗薬などがあり、代表的な薬に以下のようなものがあります。

 

アントラサイクリン系
  • アクラシノン(アクラルビシン)

 

アルキル化薬
  • アルケラン(メルファラン)
  • イホマイド(イホスファミド)
  • エンドキサン(シクロホスファミド)
  • ダカルバジン(ダカルバジン)
  • テモダール(テモゾロミド)
  • ブスルフェクス(ブスルファン)

 

白金系
  • アクプラ(ネダプラチン)
  • エルプラット(オキサリプラチン)
  • パラプラチン(カルボプラチン)
  • ランダ(シスプラチン)

 

代謝拮抗薬
  • ジェムザール(ゲムシタビン)
  • 5-FU(フルオロウラシル)
  • フルダラ(フルダラビン)
  • メソトレキセート(メトトレキサート)

 

トポイソメラーゼT阻害薬
  • カンプト(イリノテカン)
  • ハイカムチン(ノギテカン)

 

トポイソメラーゼU阻害薬
  • ベプシド(エトポシド)

 

その他

 

起炎症性抗がん剤

問題を起こすのが一番低いグループです。ほぼ炎症を起こしません。

 

イメージとしては、分子標的薬などがあり、代表的な薬には以下のようなものがあります。

 

抗腫瘍性抗生物質
  • ペプレオ(ペプロマイシン)

 

代謝拮抗薬
  • キロサイド(シタラビン)
  • サンラビン(エノシタビン)
  • ビダーザ(アザシチジン)
  • ロイナーゼ(L-アスパラギナーゼ)

 

その他
  • インターフェロン製剤
  • インターロイキン製剤
  • ハーセプチン(トラスツズマブ)
  • ベクティビックス(パニツムマブ)
  • リツキサン(リツキシマブ)

 

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血管外漏出の症状

 

自覚症状

不快感、違和感、圧迫感、しびれ感、疼痛など

 

他覚症状
  • 初期;発赤、腫脹など
  • 進行;水疱形成(水ぶくれ)→硬結形成(しこり)→潰瘍形成(ただれ)→壊死形成

 

血管外漏出の原因

  • 末梢静脈壁が脆弱であるとき

新生児や高齢者、ステロイド長期使用者は末梢静脈壁が脆弱であるため、血管外漏出を起こしやすいです。

 

  • 静脈炎を起こしているとき

静脈炎を起こしているときは、血管が収縮して血液量が減ります。そのため、その血管は詰まりやすくなり、刺入部から輸液剤が漏れる可能性が高くなります。

 

  • 感覚麻痺、運動麻痺、意識障害があるとき

自覚症状が乏しくなるため、発見が遅れます。

 

  • 可動関節での末梢静脈確保しているとき

動かせる位置だと、留置針先端が静脈壁を貫通する可能性があります。

 

  • 就寝時も輸液しているとき

寝返りなどの動作で静脈壁が貫通する可能性があります。また翌朝まで発見が遅れる可能性があります。

 

血管外漏出の予防

  • 前腕の中間など、静脈血流量が多いところを選ぶ
  • 静脈炎を起こしている静脈を避ける
  • 血管痛や静脈炎を予防するために、ステロイド混注する

 

抗がん剤漏出時の対策

  1. 点滴を中止する。
  2. 留置針抜去する前に、可能な限り薬剤や血液を吸引して除去する。
  3. ステロイド注射を漏出した範囲より大きめに、周囲から中心に向かって局注する。(周囲の細胞の炎症を予防する)
  4. ステロイド外用剤を塗布する。
  5. 局所を冷やす。(血管を収縮させて、抗がん剤を拡散させないため)
  6. 皮膚科や形成外科に診察してもらう。

 

 

まとめ

  • 血管外漏出は通常の点滴でも起こりうることであり、特に抗がん剤が大きな問題となる。

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輸液が必要な患者とは
薬剤師や新人や実習生の人は注射や輸液のことをあまりわかっていないです。輸液はなんらかの理由で経口不可の状態のために行い、不足している水や電解質、栄養を補充します。
輸液を投与する経路
輸液の投与経路は、末梢静脈、中心静脈があります。末梢静脈であれば第一選択として腕で、次に脚が選ばれることが多いです。中心静脈は、高カロリー輸液をいく場合などに選ばれます。
輸液で使われる器材を知る。
輸液ポンプ、シリンジポンプ、中心静脈カテーテル、フィルターなど様々な器材が、患者の病態や状況によって組み合わあされて薬液が投与されます。薬剤師でも最低限のことは知る必要があります。
輸液は何の目的でするのか
輸液は、生命を維持したり、不足しているものを補うために行います。生命を維持するには、維持液がよく使われます。不足しているものを補うには、末梢静脈栄養と中心静脈栄養があります。末梢静脈栄養は手技がやさしく、感染のリスクが少ないのがメリットです。しかし高いカロリーが投与できません。中心静脈栄養は高カロリーが投与できます。
ヒトの水分を学ぶ。脱水、溢水をメインに。
ヒトの60%は水分でできています。その60%のうち、20%が細胞外液で40%が細胞内液となっています。脱水は主に水分欠乏性脱水とナトリウム欠乏性脱水にわけられ、水分欠乏性脱水では5%ブドウ糖液が、ナトリウム欠乏性脱水では生理食塩水やリンゲル液が使われます。溢水はむくんでいる状態で、特に下腿にむくみがでてきます。
ナトリウムと水分の関係。
ナトリウムは135〜145mEq/Lが基準値となります。この基準からずれたときは、ナトリウムを考えるだけでなく、水分も考える必要があり、補正する場合も橋中心髄鞘崩壊症が起こる可能性があるため、急に補正をかけてはいけません。
カリウムは数値だけでなく、心電図も見よう。
カリウムは細胞内に多く存在し、神経や筋肉が働くのに必要な電解質です。基準値は3.5〜5mEq/Lで、基準値以外にも、心電図でモニタリングすることが重要です。
輸液製剤は5つの分類わけから始めよう
実習生や新人が輸液製剤を考える上では、カリウム、ナトリウム、糖の有無をまず考えます。そして輸液製剤は、電解質輸液、5%ブドウ糖液、高カロリー輸液、電解質補正液、血漿増量剤の5つの分類にわけられます。
輸液量は3つの要因で決まる。
輸液量は、3つの要因で成り立つ式で決まる。維持輸液量は生命を維持するのに必要な水分量で、水分のバランスである。補充輸液量は失った体液に近い組成のものを投与する。安全係数は2日〜3日かけて投与することを意味する。
輸液の速度と滴数の計算
輸液の量を決めたら、速度を決めます。速度は2のべき乗の法則をもとに、病態、年齢、体重をもとに医師から指示が入ります。次に、滴数を決めます。これには輸液セットが関わり、現在は20と60があります。
手術における輸液、サードスペースとは?
手術をする前には、禁飲食となるので、脱水を予防するために、術前や術中に輸液が必要となります。輸液する量は、術式や手術時間、出血量、サードスペースへの移行などをもとに決められます。
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配合変化は薬剤師と看護師で協力しあって防ぐことが重要となります。薬剤師側はデータや理論上の問題を、看護師は調製や実際の投与における問題をみることが重要となります。お互いが協力しあうことで配合変化を防げます。
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抗がん剤調製の基本。払い出しと後片付け
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