Sponsored Link
頻脈に使われる注射薬の違い、抗不整脈薬、アデホス-Lコーワ、ジゴシン
脈拍の基本、頻脈と徐脈のページにあるように、頻脈が起こると血圧が下がったり、循環をうまく保てなくなる可能性があります。今回は頻脈に使われる注射薬をみていきます。薬を見る前に、まずは心臓の刺激伝導を見てみます。
刺激伝導系
心臓には刺激伝導系という電気のようなものが走っていて、その電気がうまく伝わることで拍動します。その伝わり方は、洞房結節→房室結節→ヒス束→左脚右脚→プルキンエ線維という順番に伝わります。
これらの電気信号を調整しているのが、ナトリウムイオンや、カリウムイオン、カルシウムイオンになります。これらが細胞内を行き来することで、細胞がマイナスになったりプラスになったりと電気のようなものが発生するというのをイメージできれば大丈夫です。
抗不整脈薬(頻脈性不整脈)の分類
抗不整脈薬(頻脈性不整脈)の分類にはVaughan Williams(ボーンウィリアムズ)分類やSicilian Gambit(シシリアンガンビット)分類などがあります。ここではVaughan Williams(ボーンウィリアムズ)分類を見てみましょう。
Vaughan Williams(ボーンウィリアムズ)分類
分類と言っても、作用機序によって主に6つに分けられます。別にクラスが上だからと言って最強というわけではないです。
- クラスTa;ナトリウムチャネル遮断。カリウムチャネル遮断作用もあわせもつ。
- クラスTb;ナトリウムチャネル遮断。カリウムチャネル開口作用もあると考えられている。
- クラスTc;ナトリウムチャネル遮断。
- クラスU;β受容体遮断。
- クラスV;カリウムチャネル遮断薬
- クラスW;カルシウムチャネル遮断薬
主にイオンが行き来するチャネル(トンネル)をふさぐことで、それぞれのイオンが行き来できなくなります。イオンが行き来できないと、電気が発生するのが遅れるため、刺激伝導系の伝わり方が遅くなります。よって頻脈が改善するというイメージを持ってもらえれば大丈夫です。
では、薬をみていきましょう。別ページ、抗不整脈薬、刺激伝導系と活動電位とイオンの関わりでも一部内容がかぶりますが、まとめていますので良ければご覧になってください。
院内採用が異なるかもしれませんが、主に使われる薬として以下のものがあります。
- リスモダンP(ジソピラミド)
- キシロカイン(リドカイン)
- サンリズム(ピルジカイニド)
- オノアクト(ランジオロール)
- アンカロン(アミオダロン)
- ワソラン(ベラパミル)
- アデホス-Lコーワ(アデノシン三リン酸)
- ジゴシン(ジゴキシン)
Sponsored Link
Sponsored Link
リスモダンP(ジソピラミド)
リスモダンP(ジソピラミド)は、Vaughan Williams(ボーンウィリアムズ)分類におけるクラスTaに属する薬になります。ナトリウムチャネル遮断作用がメインですが、カリウムチャネル遮断作用も持ちます。
特徴
- ナトリウムチャネル遮断作用があり、刺激伝導系を遅らせる。
- カリウムチャネル遮断作用を併せ持つため、心室筋の活動電位持続時間と不応期を延長する。
- 他に抗コリン作用も持つため緑内障や尿貯留傾向のある患者は禁忌
用法用量
- 50〜100mg、(1〜2mg/kg)をブドウ糖液などに溶解し、5分以上かけて緩徐に静脈内注射。適宜増減。
キシロカイン(リドカイン)
キシロカイン(リドカイン)は、Vaughan Williams(ボーンウィリアムズ)分類のクラスTbに属する薬です。主にナトリウムチャネル遮断作用がメインで、カリウムチャネル開口作用もあると考えられています。一般的にリドカインと聞くと、局所麻酔のイメージが強いかと思います。静注用のキシロカイン(リドカイン)は頻脈性不整脈に使われます。
特徴
- 主に心室性不整脈に有効
- ナトリウムチャネル遮断作用があるため、刺激伝導系を遅らせる。
- カリウムチャネル開口作用があると考えられており、活動電位持続時間を短縮させる。
- 肝代謝であるため、腎障害患者に向いている。
- 効果は10〜20分で消失する。
用法用量
- 50〜100mg(1〜2mg/kg)を1〜2分間で緩徐に静脈内注射。効果が認められない場合は5分後に同量を投与する。効果の持続を期待するときには10〜20分間隔で同量を追加投与しても良いが、1時間内の基準最高投与量は300mgとする。
サンリズム(ピルジカイニド)
サンリズム(ピルシカイニド)は、Vaughan Williams(ボーンウィリアムズ)分類のクラスTcに属する薬です。主にナトリウムチャネルを遮断します。
特徴
- ナトリウムチャネルを遮断作用があるため、刺激伝導系を遅らせる。
- カリウムチャネルには影響を与えないため、活動電位持続時間や不応期には影響を与えない。
- 腎排泄であるため肝障害患者に向いている。
用法用量
- 期外収縮;0.075ml/kgを生食又は5%ブドウ糖液などで希釈し、血圧や心電図をモニターしながら10分間で徐々に静注する。適宜増減。
- 頻拍;0.1ml/kgを生食又は5%ブドウ糖液などで希釈し、血圧や心電図をモニターしながら10分間で徐々に静注する。適宜増減。
オノアクト(ランジオロール)
オノアクト(ランジオロール)はVaughan Williams(ボーンウィリアムズ)分類のクラスUに属する薬です。β受容体を遮断することで作用します。
特徴
- 特にβ1受容体を遮断し、刺激伝導系を遅らせる。
用法用量
- 手術時の頻脈性不整脈;0.125mg/kg/分の速度で静脈内注射した後、0.04mg/kg/分の速度で静脈内持続投与する。モニターしながら、0.01〜0.04mg/kg/分で適宜調節。
- 手術後の頻脈性不整脈;0.06mg/kg/分の速度で静脈内注射した後、0.02mg/kg/分の速度で静脈内持続投与する。5〜10分を目安に目標とする徐拍作用が得られない場合は、0.125mg/kg/分の速度で静脈内持続投与した後、0.04mg/kg/分の速度で静脈内持続投与する。モニターしながら、0.01〜0.04mg/kg/分で適宜調節。
- 心機能低下例における頻脈性不整脈;1μg/kg/分で静脈内持続投与を開始する。モニターしながら1〜10μg/kg/分で適宜調節。
アンカロン(アミオダロン)
アンカロン(アミオダロン)はVaughan Williams(ボーンウィリアムズ)分類のクラスVに属する薬です。主にカリウムイオンチャネルを遮断します。その他にもβ受容体遮断、ナトリウムチャネル遮断、カルシウムチャネル遮断作用も持っています。
特徴
- カリウムチャネル遮断作用があるため、活動電位持続時間と不応期の延長が起こる。
- 致死的不整脈患者で、難治性かつ緊急を要する場合にのみ使われる。
- 間質性肺炎、肝機能障害、甲状腺機能障害が特徴的な副作用
用法用量
★心室細動、血行動態不安定な心室頻拍で難治性かつ緊急性を要する場合;症状に応じて適宜増減あるいは追加投与を行うが、最大量として1日1250mgは超えない。投与速度は2.5mg/mlを超えない。
48時間まで
- 初期急速投与;125mgを5%ブドウ糖液100mlに加え、持続注入ポンプを用い、600ml/hの速度で10分間投与する。
- 負荷投与;750mgを5%ブドウ糖液に加え、持続注入ポンプを用い、33ml/hの速度で6時間投与する。
- 維持投与;17ml/hの速度で合計42時間投与する。(負荷投与の残液で18時間。無くなったら、750mgを5%ブドウ糖液500mlに加えて24時間。)
- 追加投与;必要な場合には追加投与できる。125mgを5%ブドウ糖液100mlに加え、持続注入ポンプを用い、600ml/hの速度で10分間投与。
3日以降
- 必要と判断されれば継続投与できる。750mgを5%ブドウ糖液500mlに加えて、17ml/hの速度で投与する。
★電気的除細動抵抗性の心室細動あるいは無脈性心室頻拍による心停止
300mg又は5mg/kgを5%ブドウ糖液20mlに加え、静脈内にボーラス投与する。心室性不整脈が持続する場合には150mg又は2.5mg/kgを5%ブドウ糖液10mlに加えて追加投与できる。
ワソラン(ベラパミル)
ワソラン(ベラパミル)はVaughan Williams(ボーンウィリアムズ)分類のクラスWに属する薬です。カルシウムチャネルを遮断します。
特徴
- 主に発作性上室性頻拍に有効
- カルシウムチャネルを遮断することで刺激伝導系を遅らせる。
- 腎障害患者に向いてる。
- 心機能抑制作用があるため、うっ血性心不全のある患者には使えない。
用法用量
- 5mgを必要に応じて生食又はブドウ糖液で希釈し5分以上かけて徐々に静脈内に注射する。適宜増減。
アデホス-Lコーワ(アデノシン三リン酸)
アデホス-Lコーワ(アデノシン三リン酸)は通常血管拡張作用により様々な疾患に使われます。しかし適応外使用で発作性上室性頻拍に使われているようです。
特徴
- 洞房結節、房室結節を抑制するため、発作性上室性頻拍の停止に適応外使用で使われる。
用法用量
- 10mgを急速静注で使われていることが多いようです。
ジゴシン(ジゴキシン)
ジゴシン(ジゴキシン)は心臓に様々な影響を与えますが、脈に関しては房室結節からヒス束への伝導速度を遅らせることにより作用します。
特徴
- 主に上室性頻拍に有効
- 低カリウムや高カルシウム血症で作用が増強するおそれがある。
用法用量
- 急速飽和療法;0.25〜0.5mgを2〜4時間ごとに静脈内注射し、効果が表れるまで続ける。
- 維持療法;1日0.25mgを静脈内注射する。
まとめ
- 病態や適応(上室性か心室性か)によって使い分けられる。
- 腎機能、肝機能によって使い分けられる。
頻脈に使われる注射薬の違い、抗不整脈薬、アデホス-Lコーワ、ジゴシン 関連ページ
- 輸液が必要な患者とは
- 薬剤師や新人や実習生の人は注射や輸液のことをあまりわかっていないです。輸液はなんらかの理由で経口不可の状態のために行い、不足している水や電解質、栄養を補充します。
- 輸液を投与する経路
- 輸液の投与経路は、末梢静脈、中心静脈があります。末梢静脈であれば第一選択として腕で、次に脚が選ばれることが多いです。中心静脈は、高カロリー輸液をいく場合などに選ばれます。
- 輸液で使われる器材を知る。
- 輸液ポンプ、シリンジポンプ、中心静脈カテーテル、フィルターなど様々な器材が、患者の病態や状況によって組み合わあされて薬液が投与されます。薬剤師でも最低限のことは知る必要があります。
- 輸液は何の目的でするのか
- 輸液は、生命を維持したり、不足しているものを補うために行います。生命を維持するには、維持液がよく使われます。不足しているものを補うには、末梢静脈栄養と中心静脈栄養があります。末梢静脈栄養は手技がやさしく、感染のリスクが少ないのがメリットです。しかし高いカロリーが投与できません。中心静脈栄養は高カロリーが投与できます。
- ヒトの水分を学ぶ。脱水、溢水をメインに。
- ヒトの60%は水分でできています。その60%のうち、20%が細胞外液で40%が細胞内液となっています。脱水は主に水分欠乏性脱水とナトリウム欠乏性脱水にわけられ、水分欠乏性脱水では5%ブドウ糖液が、ナトリウム欠乏性脱水では生理食塩水やリンゲル液が使われます。溢水はむくんでいる状態で、特に下腿にむくみがでてきます。
- ナトリウムと水分の関係。
- ナトリウムは135〜145mEq/Lが基準値となります。この基準からずれたときは、ナトリウムを考えるだけでなく、水分も考える必要があり、補正する場合も橋中心髄鞘崩壊症が起こる可能性があるため、急に補正をかけてはいけません。
- カリウムは数値だけでなく、心電図も見よう。
- カリウムは細胞内に多く存在し、神経や筋肉が働くのに必要な電解質です。基準値は3.5〜5mEq/Lで、基準値以外にも、心電図でモニタリングすることが重要です。
- 輸液製剤は5つの分類わけから始めよう
- 実習生や新人が輸液製剤を考える上では、カリウム、ナトリウム、糖の有無をまず考えます。そして輸液製剤は、電解質輸液、5%ブドウ糖液、高カロリー輸液、電解質補正液、血漿増量剤の5つの分類にわけられます。
- 輸液量は3つの要因で決まる。
- 輸液量は、3つの要因で成り立つ式で決まる。維持輸液量は生命を維持するのに必要な水分量で、水分のバランスである。補充輸液量は失った体液に近い組成のものを投与する。安全係数は2日〜3日かけて投与することを意味する。
- 輸液の速度と滴数の計算
- 輸液の量を決めたら、速度を決めます。速度は2のべき乗の法則をもとに、病態、年齢、体重をもとに医師から指示が入ります。次に、滴数を決めます。これには輸液セットが関わり、現在は20と60があります。
- 手術における輸液、サードスペースとは?
- 手術をする前には、禁飲食となるので、脱水を予防するために、術前や術中に輸液が必要となります。輸液する量は、術式や手術時間、出血量、サードスペースへの移行などをもとに決められます。
- 配合変化、薬剤師と看護師で協力する
- 配合変化は薬剤師と看護師で協力しあって防ぐことが重要となります。薬剤師側はデータや理論上の問題を、看護師は調製や実際の投与における問題をみることが重要となります。お互いが協力しあうことで配合変化を防げます。
- 酸・塩基。アシドーシス、アルカローシス。
- 血液のpHは7.35〜7.45に保たれています。アシデミアやアルカレミアはこの基準値からずれている状態です。これを主に調節しているのは、腎臓と肺です。アシドーシス、アルカローシスは傾向と捉えてもらえればよいです。
- アシドーシス、アルカローシスを読み取る
- 読み取るには、まずアシデミアかアルカレミアを判断します。それをもとにアシドーシスなのかアルカローシスなのかを考えます。また代謝性なのか呼吸性なのかを考えましょう。逆の反応が代償性反応としておこります。
- アシドーシス、アルカローシスの原因、症状、治療
- アシドーシスやアルカローシスは、呼吸性であれば 、呼吸に原因が、代謝性であれば代謝に原因があります。治療は、原疾患の治療がベースとなります。
- アニオンギャップ(AG)と代謝性アシドーシス
- 代謝性アシドーシスを鑑別する方法の1つとして、アニオンギャップ(AG)がある。アニオンギャップとは細胞外液における未知の陰イオンのことで、基準値の範囲内である正常型と、外れた増加型の2つにわけられる。
- 静脈炎の原因と対策
- 静脈炎の原因には、化学的静脈炎、機械的静脈炎、細菌性静脈炎がある。化学的静脈炎にはpHや浸透圧が関わる。機械的静脈炎はカテーテル先端によるものや不溶性異物がある。細菌性静脈炎は細菌や真菌が原因となる。原因に応じた対策をとることでリスクを下げることができる。
- 血管外漏出の原因と対策、抗がん剤とともに
- 血管外漏出は通常の点滴で起こり、特に抗がん剤で大きな問題となります。症状は炎症から始まり、時には壊死を起こす可能性もあります。血管外漏出の原因や対策を把握して、防ぐことが重要になります。
- 緊急時の昇圧剤の違い、イノバン、ドブトレックス、ノルアドレナリン、アドレナリン
- 緊急時の昇圧剤には、イノバン(ドパミン)、ドブトレックス(ドブタミン)、ノルアドレナリン、ボスミン(アドレナリン)などがあります。これらは血圧を上げるイメージがありますが、それぞれ微妙に作用に違いがあります。
- 緊急時の降圧薬の違い、ペルジピン、ミリスロール
- 緊急時などで血圧が高い時には降圧薬が注射で投与されます。ペルジピン(ニカルジピン)は主に高血圧緊急症で使われます。ミリスロールは不安定狭心症や急性心不全などに主に使われ、作用が違います。
- 徐脈に使われる注射薬、アトロピン
- アトロピンは抗コリン作用をもち、心臓におけるムスカリンM2受容体を遮断するため、徐脈性不整脈などに使わる注射薬です。そのほかにも迷走神経反射などにアトロピンは使われます。
- アレルギーやアナフィラキシーで使われる注射薬、エピペン、サクシゾン、ポララミン、ネオフィリン、イノバン
- アレルギーやアナフィラキシーを起こした時の注射薬には、エピペン、サクシゾン、ポララミン、ネオフィリン、イノバンといった薬があります。これらの薬を医師がアレルギーやアナフィラキシーの状況に応じて使い分けていきます。
- 抗がん剤調製の基本。安全な作業準備を行う。
- 実習先で、抗がん剤の調製をさせてくれる施設もあります。抗がん剤は高額なものも多く、毒性は強いものが多いです。そのため、安全かつ確実に行う必要があり、適切な作業準備が必要です。
- 抗がん剤調製の基本。バイアル、輸液バックへの針刺し
- 抗がん剤を安全キャビネットに入れる前に消毒して入れましたが、調製の直前にも再度消毒が必要です。薬剤が漏れ出ないように、かつコアリングなどしないように適切に、バイアルや輸液バックに針刺しをすることが大事です。
- 抗がん剤調製の基本。バイアルに、針を刺したら、押すな引け。
- 抗がん剤のバイアルが粉だったら、溶解液で溶かす必要があります。バイアル内の粉を溶解して、採取するまでの基本的なシリンジ操作や針刺し事故防止などを学んでいきます。
- 抗がん剤調製の基本。薬液量の確認と希釈
- 抗がん剤の薬液量の確認は、まずエアーを抜いて、シリンジ内に満たします。その上で目盛を確認します。この際、どこまで抗がん剤を満たすかによって、希釈時の作業が変わるため注意が必要です。
- 抗がん剤調製の基本。払い出しと後片付け
- 抗がん剤調製で、希釈をしたら、いよいよ払い出しです。払い出し直前に、間違っていないか最終確認して払い出ししましょう。後片付けはしっかり行わないと、自分だけでなく、次に使う人が被ばくしてしまいます。