実習生や新人は、輸液製剤を5つにわけよう。

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輸液製剤は5つの分類わけから始めよう

病院実習、3つの特徴でお話ししたように、私は学校でも輸液製剤の勉強をほとんどせず、実習先でも教えられることもなく、独学するしかありませんでした。今回はいよいよ輸液製剤についてお話をします。

 

 

輸液製剤にはさまざまな電解質が入っています。特にナトリウムやカリウムは電解質異常を考える上でベースとなることは、ナトリウムと水分の関係カリウムは数値だけでなく、心電図も見ようでお話ししました。

 

ですので、輸液製剤を見るにあたり、はじめのうちはナトリウム、カリウム、糖の有無について着目していくことが重要です。

 

輸液製剤は院内の採用によりますが、おおまかに5つにわけられます。

 

  1. 電解質輸液
  2. 5%ブドウ糖液
  3. 高カロリー輸液
  4. 電解質補正液
  5. 血漿増量剤

 

 

それぞれについてみていきます。

 

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@電解質輸液

種類

生理食塩液、リンゲル液(ラクテック、ソルラクトなど)、1号〜4号液(ソリタ、ソルデムなど)など

 

目的

水、電解質の投与

 

まず輸液の歴史をみていきます。

 

5%生理食塩水は、その名の通り、水に塩(NaCl)しか溶けていない状態で、電解質はナトリウムとクロールしか入っていません。シンプルな組成であるために、薬の希釈や溶解などに使われたりもします。

 

また等張性輸液であるため、細胞に刺激を与えにくいため、手術の洗浄などにも使われます。その他嘔吐における塩素イオンの補給などにも使われます(胃酸HClのため、嘔吐すると塩素イオンが失われる)。

 

次はリンゲル液です。リンゲル液は、リンガーさんが発見したことに由来しています。リンガーさんは、カエルの心臓が働くには生理食塩水では不十分で、カリウムやカルシウムが必要であることがわかり、リンゲル液にはナトリウムとクロールに加えて、カリウムやカルシウムが入っています。

 

さらにその後、ハルトマンさんが代謝性アシドーシスの治療のために、リンゲル液に乳酸を加えた輸液を考えました。これが乳酸リンゲル液となります。乳酸リンゲル液は血漿の電解質組成に近く、あらゆる場面で使われます。乳酸のほかにも酢酸や重炭酸を加えた輸液も出ています。

 

次に1号〜4号液についてですが、1号液が一番ナトリウムを含み、4号液に進むにつれてナトリウムが少なくなります。

 

1号液は5%生理食塩水と5%ブドウ糖液を混ぜたものになります。1号液はカリウムが入っていないことが特徴です。腎機能障害がありカリウムを投与したくない時に使われることが多いです。

 

2号液はナトリウムが1号液よりも少なくなり、カリウムが入っているのが大きな違いです。現在は3号液が使われることも多く、2号液を使っている施設は少ないと聞きます。

 

3号液はナトリウムが2号液よりも少なくなり、カリウムが入っています。別名、「維持液」とも呼ばれ、名前の通りこれを2000ml前後投与することで、生命維持に必要な水分、ナトリウム、カリウムが投与できます。

 

4号液はナトリウムが3号液よりも少なくなり、基本的にカリウムは入っていません。カリウムが基本的には入っていないので、4号液も腎機能障害があると使われる可能性があります。

 

まとめると、

 

  • カリウムを含む;リンゲル液(Na 約130mEq/L)→2号液(約 85)→3号液(約 35)
  • カリウムを含まない;生理食塩液(Na 約155mEq/L)→1号液(約 90)→4号液(約 30)

 

 

A5%ブドウ糖液

種類

5%ブドウ糖液

 

目的

水分の投与

 

ブドウ糖の代謝はC6H12O6+6O2→6CO2+6H2Oという、化学反応式が示すように、投与しても水が発生します。よって5%ブドウ糖液を投与することは水分を投与することを意味します。

 

B高カロリー輸液

種類

10%以上のブドウ糖液、高カロリー輸液(ハイカリック、フルカリック、エルネオパなど)、脂肪製剤(イントラリピッド、イントラリポスなど)など

 

目的

主にカロリーの投与

 

かれこれ別ページで何度も登場している高カロリー輸液です。基本的には栄養不良の患者が多いため、アミノ酸製剤、ビタミン、微量元素などを加えて投与します。しかし現在はこれらが混ぜられたキット製剤が存在します。

 

薬剤師は高カロリーが来た時には、少なくとも警戒する必要があります。例えば、腎不全の患者に普通の高カロリー輸液がいっていないか、ビタミンB1は入っているか(食事はとっているのか)、ビタミンB1は高カロリー輸液用のものか、電解質やカロリー自体が多すぎないか、など色々と気を付けることがあります。キット製剤は何の成分がどこまで入っているのかに注意しましょう。

 

脂肪は、1gで9kcal投与することができます。有名な(糖:タンパク:脂肪=4:4:9)というやつですね。カロリーの補充以外にも必須脂肪酸の投与にもなります。また脂肪製剤は、高カロリー輸液とは異なり、末梢静脈からも投与することができる製剤です。

 

C電解質補正液

種類

塩化ナトリウム注、KCL、カルチコールなど

 

目的

電解質の補正

 

輸液製剤だけで、必要な電解質が補充できない場合や、もっと補正をしたいときに使われます。基本的には輸液製剤に混ぜて使います。これらが単独で出たときは必ず添付文書などで静脈注射可能かを調べる癖をつけましょう。特にカリウムは静注は禁忌です。

 

D血漿増量剤

種類

デキストラン製剤(デキストランL)、ヒドロキシエチルデンプン(ボルベン、サリンヘスなど)など

 

目的

循環血漿量の増加

 

細胞外補充液を投与しても、全てが血管に留まらず、一部は細胞内に移行してしまいます。血管内に留まらせたいときに使われ、手術やショックの時などに使われることが多いです。

 

実習生や新人は、調剤や監査をする上で、これら5つを意識しましょう。これらを十分マスターできたら、一つ一つの製剤の違いを見ていくことで輸液製剤の知識がついていきます。

 

まとめ

まずはナトリウム、カリウム、糖の有無を各輸液でチェックする。その上で慣れてきたら、他の電解質や特徴などを学んでいく。

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輸液が必要な患者とは
薬剤師や新人や実習生の人は注射や輸液のことをあまりわかっていないです。輸液はなんらかの理由で経口不可の状態のために行い、不足している水や電解質、栄養を補充します。
輸液を投与する経路
輸液の投与経路は、末梢静脈、中心静脈があります。末梢静脈であれば第一選択として腕で、次に脚が選ばれることが多いです。中心静脈は、高カロリー輸液をいく場合などに選ばれます。
輸液で使われる器材を知る。
輸液ポンプ、シリンジポンプ、中心静脈カテーテル、フィルターなど様々な器材が、患者の病態や状況によって組み合わあされて薬液が投与されます。薬剤師でも最低限のことは知る必要があります。
輸液は何の目的でするのか
輸液は、生命を維持したり、不足しているものを補うために行います。生命を維持するには、維持液がよく使われます。不足しているものを補うには、末梢静脈栄養と中心静脈栄養があります。末梢静脈栄養は手技がやさしく、感染のリスクが少ないのがメリットです。しかし高いカロリーが投与できません。中心静脈栄養は高カロリーが投与できます。
ヒトの水分を学ぶ。脱水、溢水をメインに。
ヒトの60%は水分でできています。その60%のうち、20%が細胞外液で40%が細胞内液となっています。脱水は主に水分欠乏性脱水とナトリウム欠乏性脱水にわけられ、水分欠乏性脱水では5%ブドウ糖液が、ナトリウム欠乏性脱水では生理食塩水やリンゲル液が使われます。溢水はむくんでいる状態で、特に下腿にむくみがでてきます。
ナトリウムと水分の関係。
ナトリウムは135〜145mEq/Lが基準値となります。この基準からずれたときは、ナトリウムを考えるだけでなく、水分も考える必要があり、補正する場合も橋中心髄鞘崩壊症が起こる可能性があるため、急に補正をかけてはいけません。
カリウムは数値だけでなく、心電図も見よう。
カリウムは細胞内に多く存在し、神経や筋肉が働くのに必要な電解質です。基準値は3.5〜5mEq/Lで、基準値以外にも、心電図でモニタリングすることが重要です。
輸液量は3つの要因で決まる。
輸液量は、3つの要因で成り立つ式で決まる。維持輸液量は生命を維持するのに必要な水分量で、水分のバランスである。補充輸液量は失った体液に近い組成のものを投与する。安全係数は2日〜3日かけて投与することを意味する。
輸液の速度と滴数の計算
輸液の量を決めたら、速度を決めます。速度は2のべき乗の法則をもとに、病態、年齢、体重をもとに医師から指示が入ります。次に、滴数を決めます。これには輸液セットが関わり、現在は20と60があります。
手術における輸液、サードスペースとは?
手術をする前には、禁飲食となるので、脱水を予防するために、術前や術中に輸液が必要となります。輸液する量は、術式や手術時間、出血量、サードスペースへの移行などをもとに決められます。
配合変化、薬剤師と看護師で協力する
配合変化は薬剤師と看護師で協力しあって防ぐことが重要となります。薬剤師側はデータや理論上の問題を、看護師は調製や実際の投与における問題をみることが重要となります。お互いが協力しあうことで配合変化を防げます。
酸・塩基。アシドーシス、アルカローシス。
血液のpHは7.35〜7.45に保たれています。アシデミアやアルカレミアはこの基準値からずれている状態です。これを主に調節しているのは、腎臓と肺です。アシドーシス、アルカローシスは傾向と捉えてもらえればよいです。
アシドーシス、アルカローシスを読み取る
読み取るには、まずアシデミアかアルカレミアを判断します。それをもとにアシドーシスなのかアルカローシスなのかを考えます。また代謝性なのか呼吸性なのかを考えましょう。逆の反応が代償性反応としておこります。
アシドーシス、アルカローシスの原因、症状、治療
アシドーシスやアルカローシスは、呼吸性であれば 、呼吸に原因が、代謝性であれば代謝に原因があります。治療は、原疾患の治療がベースとなります。
アニオンギャップ(AG)と代謝性アシドーシス
代謝性アシドーシスを鑑別する方法の1つとして、アニオンギャップ(AG)がある。アニオンギャップとは細胞外液における未知の陰イオンのことで、基準値の範囲内である正常型と、外れた増加型の2つにわけられる。
静脈炎の原因と対策
静脈炎の原因には、化学的静脈炎、機械的静脈炎、細菌性静脈炎がある。化学的静脈炎にはpHや浸透圧が関わる。機械的静脈炎はカテーテル先端によるものや不溶性異物がある。細菌性静脈炎は細菌や真菌が原因となる。原因に応じた対策をとることでリスクを下げることができる。
血管外漏出の原因と対策、抗がん剤とともに
血管外漏出は通常の点滴で起こり、特に抗がん剤で大きな問題となります。症状は炎症から始まり、時には壊死を起こす可能性もあります。血管外漏出の原因や対策を把握して、防ぐことが重要になります。
緊急時の昇圧剤の違い、イノバン、ドブトレックス、ノルアドレナリン、アドレナリン
緊急時の昇圧剤には、イノバン(ドパミン)、ドブトレックス(ドブタミン)、ノルアドレナリン、ボスミン(アドレナリン)などがあります。これらは血圧を上げるイメージがありますが、それぞれ微妙に作用に違いがあります。
緊急時の降圧薬の違い、ペルジピン、ミリスロール
緊急時などで血圧が高い時には降圧薬が注射で投与されます。ペルジピン(ニカルジピン)は主に高血圧緊急症で使われます。ミリスロールは不安定狭心症や急性心不全などに主に使われ、作用が違います。
徐脈に使われる注射薬、アトロピン
アトロピンは抗コリン作用をもち、心臓におけるムスカリンM2受容体を遮断するため、徐脈性不整脈などに使わる注射薬です。そのほかにも迷走神経反射などにアトロピンは使われます。
頻脈に使われる注射薬の違い、抗不整脈薬、アデホス-Lコーワ、ジゴシン
頻脈や不整脈には、リスモダンP、キシロカイン、サンリズム、オノアクト、アンカロン、ワソラン、アデホス-Lコーワ、ジゴシンといった薬が使われます。これらは病態や適応(上室性か心室性か)、腎機能や肝機能によって使い分けられます。
アレルギーやアナフィラキシーで使われる注射薬、エピペン、サクシゾン、ポララミン、ネオフィリン、イノバン
アレルギーやアナフィラキシーを起こした時の注射薬には、エピペン、サクシゾン、ポララミン、ネオフィリン、イノバンといった薬があります。これらの薬を医師がアレルギーやアナフィラキシーの状況に応じて使い分けていきます。
抗がん剤調製の基本。安全な作業準備を行う。
実習先で、抗がん剤の調製をさせてくれる施設もあります。抗がん剤は高額なものも多く、毒性は強いものが多いです。そのため、安全かつ確実に行う必要があり、適切な作業準備が必要です。
抗がん剤調製の基本。バイアル、輸液バックへの針刺し
抗がん剤を安全キャビネットに入れる前に消毒して入れましたが、調製の直前にも再度消毒が必要です。薬剤が漏れ出ないように、かつコアリングなどしないように適切に、バイアルや輸液バックに針刺しをすることが大事です。
抗がん剤調製の基本。バイアルに、針を刺したら、押すな引け。
抗がん剤のバイアルが粉だったら、溶解液で溶かす必要があります。バイアル内の粉を溶解して、採取するまでの基本的なシリンジ操作や針刺し事故防止などを学んでいきます。
抗がん剤調製の基本。薬液量の確認と希釈
抗がん剤の薬液量の確認は、まずエアーを抜いて、シリンジ内に満たします。その上で目盛を確認します。この際、どこまで抗がん剤を満たすかによって、希釈時の作業が変わるため注意が必要です。
抗がん剤調製の基本。払い出しと後片付け
抗がん剤調製で、希釈をしたら、いよいよ払い出しです。払い出し直前に、間違っていないか最終確認して払い出ししましょう。後片付けはしっかり行わないと、自分だけでなく、次に使う人が被ばくしてしまいます。

 
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