原因は、化学的、機械的、細菌性の3つにわけられる。

Sponsored Link

静脈炎の原因と対策

高カロリー輸液などのお話の時に、浸透圧が高いため、末梢静脈から投与すると静脈炎を起こすというお話を何回かしました。今回は静脈炎について考えていきます。

 

 

静脈炎の症状

疼痛、圧痛、赤班、発赤、腫脹、浮腫、熱感、赤い索状、排膿などがあります。症状によって以下の4つのスケールがあります。

 

  • 1+;発赤あり(疼痛の有無は問わない)
  • 2+;発赤もしくは腫脹を伴う疼痛あり
  • 3+;発赤もしくは腫脹を伴う疼痛あり、赤い索状、赤い索状硬結が触知可能
  • 4+;発赤もしくは腫脹を伴う疼痛あり、赤い索状、長さ1インチ以上の索状硬結が触知可能

 

Sponsored Link

Sponsored Link


 

静脈炎の原因

静脈炎の原因は以下の3つにわけられます。

 

  • 化学的静脈炎
  • 機械的静脈炎
  • 細菌性静脈炎

 

化学的静脈炎

輸液製剤における化学的な特徴が原因の静脈炎になります。化学的静脈炎の原因は主に2つあります。

 

  • 製剤のpH
  • 製剤の浸透圧

 

製剤のpH

血液のpHは7.35〜7.45に調整されています。このpHの血液に対して、pH4以下の酸性や、pH8以上の塩基性のものを投与すると静脈炎が起こる可能性が高まります。

 

酸性や塩基性の主な薬剤として以下のものがあります。

 

<塩基性の薬剤>

 

  • ゾビラックス(アシクロビル);薬剤pH10.4
  • ソルダクトン(カンレノ酸カリウム);薬剤pH9〜10
  • ネオフィリン(アミノフィリン);薬剤pH8〜10
  • ラシックス(フロセミド);薬剤pH8.6〜9.6
  • ソル・メドロール(コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム);薬剤pH7〜8
  • 強力ネオミノファーゲンシー(グリチルリチン・グリシン・システイン配合剤注射液);薬剤pH6〜7
  • アレビアチン(フェニトイン);薬剤pH12
  • メイロン(炭酸水素ナトリウム);薬剤pH7.0〜8.5

 

<酸性の薬剤>

 

  • キシロカイン1〜2%(塩酸リドカイン);薬剤pH5〜7
  • エフォーワイ(メシル酸ガベキサート);薬剤pH4.5〜6.5
  • アタラックスP(ヒドロキシジン);薬剤pH3.0〜5.0
  • イノバン(ドパミン塩酸塩);薬剤pH3.0〜5.0
  • セレネース(ハロペリドール);薬剤pH3.5〜4.2
  • ドルミカム(ミタゾラム);薬剤pH2.8〜3.8
  • ドブトレックス(塩酸ドブタミン);薬剤pH2.7〜3.3
  • ビソルボン(塩酸ブロムヘキシン);薬剤pH2.2〜3.2
  • ボスミン(アドレナリン);薬剤pH2.3〜5.0
  • バンコマイシン;薬剤pH2.5~4.5
  • プリンペラン(メトクロプラミド);薬剤pH2.5〜4.5
  • 塩酸モルヒネ;薬剤pH2.5〜5.0
  • ミリスロール(ニトログリセリン);薬剤pH3.5〜6.0
  • パシル(メシル酸パズフロキサシン);薬剤pH3.2〜3.7
  • シプロキサン(シプロフロキサシン);薬剤pH3.9〜4.5

 

製剤の浸透圧

高張液が静脈内に入ると、浸透圧の差によって、水分は濃いものを薄める方向に移動します。

 

つまり血管内皮を覆っている、血管内皮細胞の水分が血管にある高張液に水分をとられる形になります。水分を取られた内皮細胞は収縮してしまうのに対して、内皮細胞を支持する結合組織は収縮しないため、内皮細胞が剥離して静脈炎が生じます。

 

 

浸透圧比を3以下に抑えると、静脈炎は起こりにくいとされています。

 

ちなみに浸透圧比とは、血液や生理食塩水などの浸透圧を基準(1)としたときに、その製剤がどれくらい浸透圧が高い(濃いのか)を示したものです。

 

例えば、高カロリー輸液であれば浸透圧比が4以上となるため、血液や生理食塩水より4倍浸透圧が高いことを示しています。

 

化学的静脈炎の対策
血液による希釈効果を最大限にする。

 

  • なるべく血流の多い太めの血管を選ぶ。
  • カテーテル先端を血管中央に留置するのが一番希釈効果が高い。

 

投与する輸液の濃度を薄める。

 

  • 溶媒の量を増やす。

 

急速投与とならないように速度を調節する。

 

 

機械的静脈炎

物理的な要因による静脈炎です。主な原因は2つあります。

 

  • 血管内のカテーテルの移動
  • 不溶性異物の混入

 

血管内のカテーテルの移動

カテーテルの先端が、血管内皮を傷つけることが原因です。翼状針は先端が金属であり、血管内のわずかな動きでも傷をつけてしまうおそれがあります。

 

不溶性遺物の混入

アンプルのガラス片、バイアルのゴム片、配合変化による結晶、空気などが原因となります。

 

機械的静脈炎の対策
  • 専用の固定器具で確実な固定をする。
  • 輸液ラインにフィルターをつける。

 

不溶性異物は0.5μm以上のことが多いのに対して、フィルターは0.2μmの孔径であるため、キャッチしてくれます。

 

 

細菌性静脈炎

刺入部に細菌や真菌が入ることによる静脈炎です。主に以下の原因があります。

 

  • 不十分な手洗い
  • 不適切な消毒方法
  • 不適切な挿入操作方法

 

細菌性静脈炎の対策
  • 原因に気を付けて、正しい操作を行う。
  • カテーテルを3〜4日ごとに交換する。

 

末梢静脈のカテーテルの留置時間が3日を超えると細菌性静脈炎の発生が増加するため、3日〜4日で交換するのが一般的です。

 

まとめ

  • 静脈炎の原因は化学的、機械的、細菌性がある。
  • 原因に応じた対策をとることでリスクが減らせる。

就職や転職でお悩みの方はコチラ!私はここで年収120万円上がりました

Sponsored Link

静脈炎の原因と対策 関連ページ

輸液が必要な患者とは
薬剤師や新人や実習生の人は注射や輸液のことをあまりわかっていないです。輸液はなんらかの理由で経口不可の状態のために行い、不足している水や電解質、栄養を補充します。
輸液を投与する経路
輸液の投与経路は、末梢静脈、中心静脈があります。末梢静脈であれば第一選択として腕で、次に脚が選ばれることが多いです。中心静脈は、高カロリー輸液をいく場合などに選ばれます。
輸液で使われる器材を知る。
輸液ポンプ、シリンジポンプ、中心静脈カテーテル、フィルターなど様々な器材が、患者の病態や状況によって組み合わあされて薬液が投与されます。薬剤師でも最低限のことは知る必要があります。
輸液は何の目的でするのか
輸液は、生命を維持したり、不足しているものを補うために行います。生命を維持するには、維持液がよく使われます。不足しているものを補うには、末梢静脈栄養と中心静脈栄養があります。末梢静脈栄養は手技がやさしく、感染のリスクが少ないのがメリットです。しかし高いカロリーが投与できません。中心静脈栄養は高カロリーが投与できます。
ヒトの水分を学ぶ。脱水、溢水をメインに。
ヒトの60%は水分でできています。その60%のうち、20%が細胞外液で40%が細胞内液となっています。脱水は主に水分欠乏性脱水とナトリウム欠乏性脱水にわけられ、水分欠乏性脱水では5%ブドウ糖液が、ナトリウム欠乏性脱水では生理食塩水やリンゲル液が使われます。溢水はむくんでいる状態で、特に下腿にむくみがでてきます。
ナトリウムと水分の関係。
ナトリウムは135〜145mEq/Lが基準値となります。この基準からずれたときは、ナトリウムを考えるだけでなく、水分も考える必要があり、補正する場合も橋中心髄鞘崩壊症が起こる可能性があるため、急に補正をかけてはいけません。
カリウムは数値だけでなく、心電図も見よう。
カリウムは細胞内に多く存在し、神経や筋肉が働くのに必要な電解質です。基準値は3.5〜5mEq/Lで、基準値以外にも、心電図でモニタリングすることが重要です。
輸液製剤は5つの分類わけから始めよう
実習生や新人が輸液製剤を考える上では、カリウム、ナトリウム、糖の有無をまず考えます。そして輸液製剤は、電解質輸液、5%ブドウ糖液、高カロリー輸液、電解質補正液、血漿増量剤の5つの分類にわけられます。
輸液量は3つの要因で決まる。
輸液量は、3つの要因で成り立つ式で決まる。維持輸液量は生命を維持するのに必要な水分量で、水分のバランスである。補充輸液量は失った体液に近い組成のものを投与する。安全係数は2日〜3日かけて投与することを意味する。
輸液の速度と滴数の計算
輸液の量を決めたら、速度を決めます。速度は2のべき乗の法則をもとに、病態、年齢、体重をもとに医師から指示が入ります。次に、滴数を決めます。これには輸液セットが関わり、現在は20と60があります。
手術における輸液、サードスペースとは?
手術をする前には、禁飲食となるので、脱水を予防するために、術前や術中に輸液が必要となります。輸液する量は、術式や手術時間、出血量、サードスペースへの移行などをもとに決められます。
配合変化、薬剤師と看護師で協力する
配合変化は薬剤師と看護師で協力しあって防ぐことが重要となります。薬剤師側はデータや理論上の問題を、看護師は調製や実際の投与における問題をみることが重要となります。お互いが協力しあうことで配合変化を防げます。
酸・塩基。アシドーシス、アルカローシス。
血液のpHは7.35〜7.45に保たれています。アシデミアやアルカレミアはこの基準値からずれている状態です。これを主に調節しているのは、腎臓と肺です。アシドーシス、アルカローシスは傾向と捉えてもらえればよいです。
アシドーシス、アルカローシスを読み取る
読み取るには、まずアシデミアかアルカレミアを判断します。それをもとにアシドーシスなのかアルカローシスなのかを考えます。また代謝性なのか呼吸性なのかを考えましょう。逆の反応が代償性反応としておこります。
アシドーシス、アルカローシスの原因、症状、治療
アシドーシスやアルカローシスは、呼吸性であれば 、呼吸に原因が、代謝性であれば代謝に原因があります。治療は、原疾患の治療がベースとなります。
アニオンギャップ(AG)と代謝性アシドーシス
代謝性アシドーシスを鑑別する方法の1つとして、アニオンギャップ(AG)がある。アニオンギャップとは細胞外液における未知の陰イオンのことで、基準値の範囲内である正常型と、外れた増加型の2つにわけられる。
血管外漏出の原因と対策、抗がん剤とともに
血管外漏出は通常の点滴で起こり、特に抗がん剤で大きな問題となります。症状は炎症から始まり、時には壊死を起こす可能性もあります。血管外漏出の原因や対策を把握して、防ぐことが重要になります。
緊急時の昇圧剤の違い、イノバン、ドブトレックス、ノルアドレナリン、アドレナリン
緊急時の昇圧剤には、イノバン(ドパミン)、ドブトレックス(ドブタミン)、ノルアドレナリン、ボスミン(アドレナリン)などがあります。これらは血圧を上げるイメージがありますが、それぞれ微妙に作用に違いがあります。
緊急時の降圧薬の違い、ペルジピン、ミリスロール
緊急時などで血圧が高い時には降圧薬が注射で投与されます。ペルジピン(ニカルジピン)は主に高血圧緊急症で使われます。ミリスロールは不安定狭心症や急性心不全などに主に使われ、作用が違います。
徐脈に使われる注射薬、アトロピン
アトロピンは抗コリン作用をもち、心臓におけるムスカリンM2受容体を遮断するため、徐脈性不整脈などに使わる注射薬です。そのほかにも迷走神経反射などにアトロピンは使われます。
頻脈に使われる注射薬の違い、抗不整脈薬、アデホス-Lコーワ、ジゴシン
頻脈や不整脈には、リスモダンP、キシロカイン、サンリズム、オノアクト、アンカロン、ワソラン、アデホス-Lコーワ、ジゴシンといった薬が使われます。これらは病態や適応(上室性か心室性か)、腎機能や肝機能によって使い分けられます。
アレルギーやアナフィラキシーで使われる注射薬、エピペン、サクシゾン、ポララミン、ネオフィリン、イノバン
アレルギーやアナフィラキシーを起こした時の注射薬には、エピペン、サクシゾン、ポララミン、ネオフィリン、イノバンといった薬があります。これらの薬を医師がアレルギーやアナフィラキシーの状況に応じて使い分けていきます。
抗がん剤調製の基本。安全な作業準備を行う。
実習先で、抗がん剤の調製をさせてくれる施設もあります。抗がん剤は高額なものも多く、毒性は強いものが多いです。そのため、安全かつ確実に行う必要があり、適切な作業準備が必要です。
抗がん剤調製の基本。バイアル、輸液バックへの針刺し
抗がん剤を安全キャビネットに入れる前に消毒して入れましたが、調製の直前にも再度消毒が必要です。薬剤が漏れ出ないように、かつコアリングなどしないように適切に、バイアルや輸液バックに針刺しをすることが大事です。
抗がん剤調製の基本。バイアルに、針を刺したら、押すな引け。
抗がん剤のバイアルが粉だったら、溶解液で溶かす必要があります。バイアル内の粉を溶解して、採取するまでの基本的なシリンジ操作や針刺し事故防止などを学んでいきます。
抗がん剤調製の基本。薬液量の確認と希釈
抗がん剤の薬液量の確認は、まずエアーを抜いて、シリンジ内に満たします。その上で目盛を確認します。この際、どこまで抗がん剤を満たすかによって、希釈時の作業が変わるため注意が必要です。
抗がん剤調製の基本。払い出しと後片付け
抗がん剤調製で、希釈をしたら、いよいよ払い出しです。払い出し直前に、間違っていないか最終確認して払い出ししましょう。後片付けはしっかり行わないと、自分だけでなく、次に使う人が被ばくしてしまいます。

 
HOME プロフィール お問い合わせ