Sponsored Link
輸液の速度と滴数の計算
前回の、輸液量は3つの要因により決まる。では輸液量が決まりました。今回は決まった輸液量をどれくらいの速度で投与するかというお話です。主に看護師さんの領域になりますが、知っておいて損はないお話だと思います。
私は実習生の時に、どれくらいの速度まで投与できるのだろうと疑問に感じて、実習先の薬剤師の先生に聞いたところ、答えをにごされた記憶があります。
今思えば酷な質問だったと思いますが、私のような実習生が、あなたの前に現れるかもしれません(笑)おおまかにでも回答できるとかっこいいですね。
輸液の速度を決めるには基本的に2つのステップがあります。
- 輸液速度を決める。
- 速度をもとに滴下量を決める。
Sponsored Link
Sponsored Link
@輸液速度を決める。
輸液速度の決め方は、2のべき乗の法則があります。
これは一分間あたりに投与するml数は、2のべき乗ずつ増えていくというものになりますが、病態や年齢、体重などにより適宜調整され医師から指示が入ります。
この法則を20滴/mlの輸液セットを使った場合、以下のようになります。
- 第0度(very slow);1ml/分=20滴/分→小児や高張液のとき
- 第1度(slow);2ml/分=40滴/分→維持輸液のとき
- 第2度(moderate);4ml/分=80滴/分→維持輸液と補充輸液のとき
- 第3度(rapid);8ml/分=160滴/分→補充輸液のとき
- 第4度(very rapid);16ml/分=320滴/分→緊急輸液のとき
- 第5度(extremely rapid);32ml/分=640滴/分→緊急輸液のとき
A速度をもとに滴下量を決める。
速度を決めたら、輸液を落としたいところですが、次にその速度となるように滴数を調整して決めなければなりません。
滴数を決めるには、輸液セットの点滴筒部分で、クレンメを操作して調節します。
点滴筒とは、輸液セットの一部分で、ドラマとかに出てくる輸液からポタポタ垂れているのが、溜まっている部分です。点滴筒で、一分間に何滴落ちるのかを見ながら看護師さんたちは考えています。
現在では輸液セットは安全面などの関係上、20滴/mlと60滴/mlの2種類があります。
20滴/mlが一般的に使われ、60滴/mlの方は小児などより細かく調整する必要があるときに使われるようです。単位を考えると、1mlのうちに20滴か、60滴なのかということですから、60滴の方が、いっぱい小さい粒が入っているから調節しやすいということをイメージしましょう。
滴数を求める公式がありますが、使う必要ありません。実際の問題で考えてみましょう。
例題
医師から500mlを2時間で点滴の指示が出た。20滴の輸液セットを使った場合、1分間に何滴落とせばよいか?
求めたいものをY(滴/分)とする。
時間が2時間のため、分に直すと2×60分=120分である。
一分間にY滴落ちるわけだから、それに先ほどの時間をかけると、全体の滴数が出てくる。
Y(滴/分)×120(分)=120Y(滴)・・・★
ここで、輸液セットは20滴のものを使うため、1mlあたりに、20滴のしずくが入っている。
今回輸液は500mlとなっているため、掛け合わせることでこちらも全体の滴数が出てくる。
20(滴/ml)×500(ml)=10000(滴)・・・*
前式★と*が一致するわけだから、
120Y=10000
Y=83.3333・・・・(滴/分)
と求められる。実際はキリが悪いため80滴などで、この場合は落とすと思います。
看護師さんと仲良くなってお話を聞かせてもらうと、いろいろな発見があると思います。
まとめ
- 輸液速度を決めて、滴数を決める。
- 輸液速度は、基本的には2のべき乗の法則にしたがう。
- 輸液セットは、20滴/mlと60滴/mlがある。
輸液の速度と滴数の計算 関連ページ
- 輸液が必要な患者とは
- 薬剤師や新人や実習生の人は注射や輸液のことをあまりわかっていないです。輸液はなんらかの理由で経口不可の状態のために行い、不足している水や電解質、栄養を補充します。
- 輸液を投与する経路
- 輸液の投与経路は、末梢静脈、中心静脈があります。末梢静脈であれば第一選択として腕で、次に脚が選ばれることが多いです。中心静脈は、高カロリー輸液をいく場合などに選ばれます。
- 輸液で使われる器材を知る。
- 輸液ポンプ、シリンジポンプ、中心静脈カテーテル、フィルターなど様々な器材が、患者の病態や状況によって組み合わあされて薬液が投与されます。薬剤師でも最低限のことは知る必要があります。
- 輸液は何の目的でするのか
- 輸液は、生命を維持したり、不足しているものを補うために行います。生命を維持するには、維持液がよく使われます。不足しているものを補うには、末梢静脈栄養と中心静脈栄養があります。末梢静脈栄養は手技がやさしく、感染のリスクが少ないのがメリットです。しかし高いカロリーが投与できません。中心静脈栄養は高カロリーが投与できます。
- ヒトの水分を学ぶ。脱水、溢水をメインに。
- ヒトの60%は水分でできています。その60%のうち、20%が細胞外液で40%が細胞内液となっています。脱水は主に水分欠乏性脱水とナトリウム欠乏性脱水にわけられ、水分欠乏性脱水では5%ブドウ糖液が、ナトリウム欠乏性脱水では生理食塩水やリンゲル液が使われます。溢水はむくんでいる状態で、特に下腿にむくみがでてきます。
- ナトリウムと水分の関係。
- ナトリウムは135〜145mEq/Lが基準値となります。この基準からずれたときは、ナトリウムを考えるだけでなく、水分も考える必要があり、補正する場合も橋中心髄鞘崩壊症が起こる可能性があるため、急に補正をかけてはいけません。
- カリウムは数値だけでなく、心電図も見よう。
- カリウムは細胞内に多く存在し、神経や筋肉が働くのに必要な電解質です。基準値は3.5〜5mEq/Lで、基準値以外にも、心電図でモニタリングすることが重要です。
- 輸液製剤は5つの分類わけから始めよう
- 実習生や新人が輸液製剤を考える上では、カリウム、ナトリウム、糖の有無をまず考えます。そして輸液製剤は、電解質輸液、5%ブドウ糖液、高カロリー輸液、電解質補正液、血漿増量剤の5つの分類にわけられます。
- 輸液量は3つの要因で決まる。
- 輸液量は、3つの要因で成り立つ式で決まる。維持輸液量は生命を維持するのに必要な水分量で、水分のバランスである。補充輸液量は失った体液に近い組成のものを投与する。安全係数は2日〜3日かけて投与することを意味する。
- 手術における輸液、サードスペースとは?
- 手術をする前には、禁飲食となるので、脱水を予防するために、術前や術中に輸液が必要となります。輸液する量は、術式や手術時間、出血量、サードスペースへの移行などをもとに決められます。
- 配合変化、薬剤師と看護師で協力する
- 配合変化は薬剤師と看護師で協力しあって防ぐことが重要となります。薬剤師側はデータや理論上の問題を、看護師は調製や実際の投与における問題をみることが重要となります。お互いが協力しあうことで配合変化を防げます。
- 酸・塩基。アシドーシス、アルカローシス。
- 血液のpHは7.35〜7.45に保たれています。アシデミアやアルカレミアはこの基準値からずれている状態です。これを主に調節しているのは、腎臓と肺です。アシドーシス、アルカローシスは傾向と捉えてもらえればよいです。
- アシドーシス、アルカローシスを読み取る
- 読み取るには、まずアシデミアかアルカレミアを判断します。それをもとにアシドーシスなのかアルカローシスなのかを考えます。また代謝性なのか呼吸性なのかを考えましょう。逆の反応が代償性反応としておこります。
- アシドーシス、アルカローシスの原因、症状、治療
- アシドーシスやアルカローシスは、呼吸性であれば 、呼吸に原因が、代謝性であれば代謝に原因があります。治療は、原疾患の治療がベースとなります。
- アニオンギャップ(AG)と代謝性アシドーシス
- 代謝性アシドーシスを鑑別する方法の1つとして、アニオンギャップ(AG)がある。アニオンギャップとは細胞外液における未知の陰イオンのことで、基準値の範囲内である正常型と、外れた増加型の2つにわけられる。
- 静脈炎の原因と対策
- 静脈炎の原因には、化学的静脈炎、機械的静脈炎、細菌性静脈炎がある。化学的静脈炎にはpHや浸透圧が関わる。機械的静脈炎はカテーテル先端によるものや不溶性異物がある。細菌性静脈炎は細菌や真菌が原因となる。原因に応じた対策をとることでリスクを下げることができる。
- 血管外漏出の原因と対策、抗がん剤とともに
- 血管外漏出は通常の点滴で起こり、特に抗がん剤で大きな問題となります。症状は炎症から始まり、時には壊死を起こす可能性もあります。血管外漏出の原因や対策を把握して、防ぐことが重要になります。
- 緊急時の昇圧剤の違い、イノバン、ドブトレックス、ノルアドレナリン、アドレナリン
- 緊急時の昇圧剤には、イノバン(ドパミン)、ドブトレックス(ドブタミン)、ノルアドレナリン、ボスミン(アドレナリン)などがあります。これらは血圧を上げるイメージがありますが、それぞれ微妙に作用に違いがあります。
- 緊急時の降圧薬の違い、ペルジピン、ミリスロール
- 緊急時などで血圧が高い時には降圧薬が注射で投与されます。ペルジピン(ニカルジピン)は主に高血圧緊急症で使われます。ミリスロールは不安定狭心症や急性心不全などに主に使われ、作用が違います。
- 徐脈に使われる注射薬、アトロピン
- アトロピンは抗コリン作用をもち、心臓におけるムスカリンM2受容体を遮断するため、徐脈性不整脈などに使わる注射薬です。そのほかにも迷走神経反射などにアトロピンは使われます。
- 頻脈に使われる注射薬の違い、抗不整脈薬、アデホス-Lコーワ、ジゴシン
- 頻脈や不整脈には、リスモダンP、キシロカイン、サンリズム、オノアクト、アンカロン、ワソラン、アデホス-Lコーワ、ジゴシンといった薬が使われます。これらは病態や適応(上室性か心室性か)、腎機能や肝機能によって使い分けられます。
- アレルギーやアナフィラキシーで使われる注射薬、エピペン、サクシゾン、ポララミン、ネオフィリン、イノバン
- アレルギーやアナフィラキシーを起こした時の注射薬には、エピペン、サクシゾン、ポララミン、ネオフィリン、イノバンといった薬があります。これらの薬を医師がアレルギーやアナフィラキシーの状況に応じて使い分けていきます。
- 抗がん剤調製の基本。安全な作業準備を行う。
- 実習先で、抗がん剤の調製をさせてくれる施設もあります。抗がん剤は高額なものも多く、毒性は強いものが多いです。そのため、安全かつ確実に行う必要があり、適切な作業準備が必要です。
- 抗がん剤調製の基本。バイアル、輸液バックへの針刺し
- 抗がん剤を安全キャビネットに入れる前に消毒して入れましたが、調製の直前にも再度消毒が必要です。薬剤が漏れ出ないように、かつコアリングなどしないように適切に、バイアルや輸液バックに針刺しをすることが大事です。
- 抗がん剤調製の基本。バイアルに、針を刺したら、押すな引け。
- 抗がん剤のバイアルが粉だったら、溶解液で溶かす必要があります。バイアル内の粉を溶解して、採取するまでの基本的なシリンジ操作や針刺し事故防止などを学んでいきます。
- 抗がん剤調製の基本。薬液量の確認と希釈
- 抗がん剤の薬液量の確認は、まずエアーを抜いて、シリンジ内に満たします。その上で目盛を確認します。この際、どこまで抗がん剤を満たすかによって、希釈時の作業が変わるため注意が必要です。
- 抗がん剤調製の基本。払い出しと後片付け
- 抗がん剤調製で、希釈をしたら、いよいよ払い出しです。払い出し直前に、間違っていないか最終確認して払い出ししましょう。後片付けはしっかり行わないと、自分だけでなく、次に使う人が被ばくしてしまいます。