輸液は生命を維持したり、不足しているものを補う。

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輸液は何の目的でするのか

前項、輸液が必要な患者とはで輸液はなんらかの原因により、患者が普段通り口から生命を維持するのに必要なものを摂取できないから輸液をするといいました。

 

ですので、輸液の目的は@生命を維持するA不足しているものを補うの2つに分けられます。

 

 

@生命を維持する

人は尿や汗などで水分が減っていきます。通常では1日に必要な水分量は1500〜2500mlと言われています。これらに後で説明するナトリウムカリウムを加えた輸液を投与することになります。これら2つは検査値などでも出てくる重要な電解質です。

 

ナトリウムはよく「塩分を1日6g以下に〜」とか聞くと思います。ここでは割愛しますが、これをmEqに換算すると、100mEq/日となります。

 

カリウムも同様に100mEq/日までと覚えておくと覚えやすいです。しかし実際に生命を維持するには40mEq/日くらいあれば大丈夫です。

 

ここで話を一つはさむと、カリウムは心臓に影響を与えたりしますので、特に注意が必要です。カリウムでの主な注意事項は以下のようになります。

 

  • カリウム単独での投与は禁忌(何かしらの輸液に溶かす)
  • 末梢静脈では40mEq/L以下、中心静脈では60mEq/L以下
  • 速度は20mEq/h以下
  • 100mEq/日まで

 

国家試験の時の知識ですが、語呂合わせで「ハニー脳死」と私は覚えています。

 

ラブラブなカップルで、愛するハニーが脳死になってしまうイメージですね。

 

  • ハ;速さ
  • ニー;20mEq/h
  • 脳;濃度
  • 死;40mEq/L

 

 

使わなくても覚えられると思いますが、参考程度に。

 

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さて話を戻すと、ナトリウム約100mEq/日、カリウム約40mEq/日、水分1500〜2500mlが生命維持には必要です。

 

これらを輸液を用いて作ってもいいですが、3号液とよばれる維持輸液が存在します。具体的には、KN3号、フルトラクト、ソリタT-3、ソルデム3A、リプラス3号、EL3号、アクチット、ヴィーン3Gなどがあります。

 

これら500mlの規格のものを3〜4本投与することで生命維持に必要な量が投与できます。

 

 

A不足しているものを補う

積極的に投与するイメージで、主に高カロリー輸液などがあります。投与経路により、以下の2つにわけられます。

 

  • PPN(Periferal Parenteral Nutrition);末梢静脈栄養
  • TPN(Total Parenteral Nutrition);中心静脈栄養

 

末梢静脈栄養は、前ページでお話ししたように、末梢静脈から点滴します。

 

中心静脈栄養に比べて、手技がやさしく、感染のリスクも低いですが、投与できるカロリーが限られています。なぜでしょうか?

 

そこには浸透圧が関わってきます。濃度が高い高カロリー輸液などを投与すると、浸透圧の差がありすぎて、静脈炎を起こしてしまいます。よって、末梢静脈からいける濃度としては10%くらいまでと言われています。

 

またカロリーの高い脂肪乳剤も投与できますが、これを使っても1500kcalが限度です。

 

よって、手技がやさしく、感染のリスクが少ないけど、カロリーが投与できないことをイメージしましょう。

 

 

中心静脈栄養は逆をイメージしてもらえればよいと思います。高カロリーを投与できます。

 

有名な注意点ですが、輸液にビタミンB1が入っているか注意しましょう。乳酸アシドーシスを起こしてしまう可能性があります。現在は高カロリー輸液に混ざっているキットも多いため、医師はビタミンB1を時々忘れていることがあります。もし抜けている場合は、食事をしているかも見て、絶食状態であれば確認したほうが良いでしょう。

 

高カロリー輸液をいっている人は基本的には栄養状態がよくないので、糖質、タンパク、脂質、ビタミン、微量元素がどうなっているかを病態に応じて考える必要があります。

 

まとめ

  • 生命を維持するには、3号液を1500ml〜2000ml投与する。
  • 末梢静脈栄養は手技が簡単で、感染のリスクも少ないが、投与できるカロリーが限られている。中心静脈栄養は逆をイメージする。

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輸液は何の目的でするのか 関連ページ

輸液が必要な患者とは
薬剤師や新人や実習生の人は注射や輸液のことをあまりわかっていないです。輸液はなんらかの理由で経口不可の状態のために行い、不足している水や電解質、栄養を補充します。
輸液を投与する経路
輸液の投与経路は、末梢静脈、中心静脈があります。末梢静脈であれば第一選択として腕で、次に脚が選ばれることが多いです。中心静脈は、高カロリー輸液をいく場合などに選ばれます。
輸液で使われる器材を知る。
輸液ポンプ、シリンジポンプ、中心静脈カテーテル、フィルターなど様々な器材が、患者の病態や状況によって組み合わあされて薬液が投与されます。薬剤師でも最低限のことは知る必要があります。
ヒトの水分を学ぶ。脱水、溢水をメインに。
ヒトの60%は水分でできています。その60%のうち、20%が細胞外液で40%が細胞内液となっています。脱水は主に水分欠乏性脱水とナトリウム欠乏性脱水にわけられ、水分欠乏性脱水では5%ブドウ糖液が、ナトリウム欠乏性脱水では生理食塩水やリンゲル液が使われます。溢水はむくんでいる状態で、特に下腿にむくみがでてきます。
ナトリウムと水分の関係。
ナトリウムは135〜145mEq/Lが基準値となります。この基準からずれたときは、ナトリウムを考えるだけでなく、水分も考える必要があり、補正する場合も橋中心髄鞘崩壊症が起こる可能性があるため、急に補正をかけてはいけません。
カリウムは数値だけでなく、心電図も見よう。
カリウムは細胞内に多く存在し、神経や筋肉が働くのに必要な電解質です。基準値は3.5〜5mEq/Lで、基準値以外にも、心電図でモニタリングすることが重要です。
輸液製剤は5つの分類わけから始めよう
実習生や新人が輸液製剤を考える上では、カリウム、ナトリウム、糖の有無をまず考えます。そして輸液製剤は、電解質輸液、5%ブドウ糖液、高カロリー輸液、電解質補正液、血漿増量剤の5つの分類にわけられます。
輸液量は3つの要因で決まる。
輸液量は、3つの要因で成り立つ式で決まる。維持輸液量は生命を維持するのに必要な水分量で、水分のバランスである。補充輸液量は失った体液に近い組成のものを投与する。安全係数は2日〜3日かけて投与することを意味する。
輸液の速度と滴数の計算
輸液の量を決めたら、速度を決めます。速度は2のべき乗の法則をもとに、病態、年齢、体重をもとに医師から指示が入ります。次に、滴数を決めます。これには輸液セットが関わり、現在は20と60があります。
手術における輸液、サードスペースとは?
手術をする前には、禁飲食となるので、脱水を予防するために、術前や術中に輸液が必要となります。輸液する量は、術式や手術時間、出血量、サードスペースへの移行などをもとに決められます。
配合変化、薬剤師と看護師で協力する
配合変化は薬剤師と看護師で協力しあって防ぐことが重要となります。薬剤師側はデータや理論上の問題を、看護師は調製や実際の投与における問題をみることが重要となります。お互いが協力しあうことで配合変化を防げます。
酸・塩基。アシドーシス、アルカローシス。
血液のpHは7.35〜7.45に保たれています。アシデミアやアルカレミアはこの基準値からずれている状態です。これを主に調節しているのは、腎臓と肺です。アシドーシス、アルカローシスは傾向と捉えてもらえればよいです。
アシドーシス、アルカローシスを読み取る
読み取るには、まずアシデミアかアルカレミアを判断します。それをもとにアシドーシスなのかアルカローシスなのかを考えます。また代謝性なのか呼吸性なのかを考えましょう。逆の反応が代償性反応としておこります。
アシドーシス、アルカローシスの原因、症状、治療
アシドーシスやアルカローシスは、呼吸性であれば 、呼吸に原因が、代謝性であれば代謝に原因があります。治療は、原疾患の治療がベースとなります。
アニオンギャップ(AG)と代謝性アシドーシス
代謝性アシドーシスを鑑別する方法の1つとして、アニオンギャップ(AG)がある。アニオンギャップとは細胞外液における未知の陰イオンのことで、基準値の範囲内である正常型と、外れた増加型の2つにわけられる。
静脈炎の原因と対策
静脈炎の原因には、化学的静脈炎、機械的静脈炎、細菌性静脈炎がある。化学的静脈炎にはpHや浸透圧が関わる。機械的静脈炎はカテーテル先端によるものや不溶性異物がある。細菌性静脈炎は細菌や真菌が原因となる。原因に応じた対策をとることでリスクを下げることができる。
血管外漏出の原因と対策、抗がん剤とともに
血管外漏出は通常の点滴で起こり、特に抗がん剤で大きな問題となります。症状は炎症から始まり、時には壊死を起こす可能性もあります。血管外漏出の原因や対策を把握して、防ぐことが重要になります。
緊急時の昇圧剤の違い、イノバン、ドブトレックス、ノルアドレナリン、アドレナリン
緊急時の昇圧剤には、イノバン(ドパミン)、ドブトレックス(ドブタミン)、ノルアドレナリン、ボスミン(アドレナリン)などがあります。これらは血圧を上げるイメージがありますが、それぞれ微妙に作用に違いがあります。
緊急時の降圧薬の違い、ペルジピン、ミリスロール
緊急時などで血圧が高い時には降圧薬が注射で投与されます。ペルジピン(ニカルジピン)は主に高血圧緊急症で使われます。ミリスロールは不安定狭心症や急性心不全などに主に使われ、作用が違います。
徐脈に使われる注射薬、アトロピン
アトロピンは抗コリン作用をもち、心臓におけるムスカリンM2受容体を遮断するため、徐脈性不整脈などに使わる注射薬です。そのほかにも迷走神経反射などにアトロピンは使われます。
頻脈に使われる注射薬の違い、抗不整脈薬、アデホス-Lコーワ、ジゴシン
頻脈や不整脈には、リスモダンP、キシロカイン、サンリズム、オノアクト、アンカロン、ワソラン、アデホス-Lコーワ、ジゴシンといった薬が使われます。これらは病態や適応(上室性か心室性か)、腎機能や肝機能によって使い分けられます。
アレルギーやアナフィラキシーで使われる注射薬、エピペン、サクシゾン、ポララミン、ネオフィリン、イノバン
アレルギーやアナフィラキシーを起こした時の注射薬には、エピペン、サクシゾン、ポララミン、ネオフィリン、イノバンといった薬があります。これらの薬を医師がアレルギーやアナフィラキシーの状況に応じて使い分けていきます。
抗がん剤調製の基本。安全な作業準備を行う。
実習先で、抗がん剤の調製をさせてくれる施設もあります。抗がん剤は高額なものも多く、毒性は強いものが多いです。そのため、安全かつ確実に行う必要があり、適切な作業準備が必要です。
抗がん剤調製の基本。バイアル、輸液バックへの針刺し
抗がん剤を安全キャビネットに入れる前に消毒して入れましたが、調製の直前にも再度消毒が必要です。薬剤が漏れ出ないように、かつコアリングなどしないように適切に、バイアルや輸液バックに針刺しをすることが大事です。
抗がん剤調製の基本。バイアルに、針を刺したら、押すな引け。
抗がん剤のバイアルが粉だったら、溶解液で溶かす必要があります。バイアル内の粉を溶解して、採取するまでの基本的なシリンジ操作や針刺し事故防止などを学んでいきます。
抗がん剤調製の基本。薬液量の確認と希釈
抗がん剤の薬液量の確認は、まずエアーを抜いて、シリンジ内に満たします。その上で目盛を確認します。この際、どこまで抗がん剤を満たすかによって、希釈時の作業が変わるため注意が必要です。
抗がん剤調製の基本。払い出しと後片付け
抗がん剤調製で、希釈をしたら、いよいよ払い出しです。払い出し直前に、間違っていないか最終確認して払い出ししましょう。後片付けはしっかり行わないと、自分だけでなく、次に使う人が被ばくしてしまいます。

 
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