薬剤師はデータや理論上の問題を防ぐ

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配合変化、薬剤師と看護師で協力する

配合変化を起こすと、薬の効果が低下したり、結晶で血栓が作られてしまったりと様々な悪影響をもたらします。病棟の看護師さんから問い合わせがくることが多く、薬剤師が関われる内容の1つです。

 

 

しかし、配合変化は薬ごとによって気をつける内容が膨大にありますので、実際に細かく覚えている人は少ないのではないでしょうか?

 

よって、処方が出て自信がなければ調べるというスタンスで徐々に慣れていくしかないと思っています。調べるにあたって、添付文書やインタビューフォームが役に立ち、「注射薬調剤マニュアル」という本も参考になります。

 

ここでは配合変化の基本的なことについてみていきます。まず、以下のような原因があります。

 

  • pH変化による溶解度の減少
  • キレートの生成
  • 光の影響
  • 温度変化の影響
  • 容器への吸着、容器の溶出

 

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pH変化による溶解度の減少

医薬品は溶解度や安定性を高めるために、その医薬品にとって最適なpHとなるように調整されています。薬が複数種類混ざり、最適なpHからずれてしまうことによって、混濁や沈殿が生じます。

 

例えば以下のようなものがあります。

 

酸性薬剤と配合変化しやすいもの

  • ゾビラックス(アシクロビル);薬剤pH10.4
  • ソルダクトン(カンレノ酸カリウム);薬剤pH9〜10
  • ネオフィリン(アミノフィリン);薬剤pH8〜10
  • ラシックス(フロセミド);薬剤pH8.6〜9.6
  • ソル・メドロール(コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム);薬剤pH7〜8
  • 強力ネオミノファーゲンシー(グリチルリチン・グリシン・システイン配合剤注射液);薬剤pH6〜7
  • アレビアチン(フェニトイン);薬剤pH12
  • メイロン(炭酸水素ナトリウム);薬剤pH7.0〜8.5

 

 

塩基性薬剤と配合変化しやすいもの

  • キシロカイン1〜2%(塩酸リドカイン);薬剤pH5〜7
  • エフォーワイ(メシル酸ガベキサート);薬剤pH4.5〜6.5
  • アタラックスP(ヒドロキシジン);薬剤pH3〜5
  • イノバン(ドパミン塩酸塩);薬剤pH3〜5
  • セレネース(ハロペリドール);薬剤pH3.5〜4.2
  • ドルミカム(ミタゾラム);薬剤pH2.8〜3.8
  • ドブトレックス(塩酸ドブタミン);薬剤pH2.7〜3.3
  • ビソルボン(塩酸ブロムヘキシン);薬剤pH2.2〜3.2
  • ボスミン(アドレナリン);薬剤pH2.3〜5.0
  • バンコマイシン;薬剤pH2.5~4.5
  • プリンペラン(メトクロプラミド);薬剤pH2.5〜4.5
  • 塩酸モルヒネ;薬剤pH2.5〜5.0
  • ミリスロール(ニトログリセリン);薬剤pH3.5〜6.0
  • パシル(メシル酸パズフロキサシン);薬剤pH3.2〜3.7
  • シプロキサン(シプロフロキサシン);薬剤pH3.9〜4.5

 

対策
  • 輸液ルートを別にする。
  • pHの近いものから配合する。
  • 単独投与する。

 

キレートの生成

化学式の関係上、金属とキレートをつくり沈殿を生じたりします。

 

有名な例だと、メイロン(炭酸水素ナトリウム)はカルシウムを含む輸液と混合すると、キレートを作るケースがあります。

 

対策
  • 輸液ルートを別にする。
  • 単独投与する。

 

光の影響

注射剤に限った話ではありませんが、薬の成分は光による影響を受けるものがあります。

 

光に影響を受けやすいものは、バイアルやアンプル、包装の袋が褐色であることが多いので、わかりやすいと思います。遮光袋を使ったりして、ある程度防ぐことができますが、開封後時間をかけずに投与できるものであれば、影響は誤差の範囲内なので、遮光袋なしで投与しても問題ないです。その薬が遮光なしで、どれくらいの時間安定なのかを調べましょう。

 

有名なものだと、ネオラミンマルチ、ブリプラチン(シスプラチン)などがあります。

 

対策
  • 開封後速やかに使う。
  • 遮光袋の使用。

 

温度変化の影響

温度が低下することによって、結晶ができる薬があります。

 

例として、マンニットールS(D-マンニトール)があり、室温5℃以下では結晶が出来てきます。しかしこの結晶は品質には影響がなく、40℃以上で5分間振とうすれば、溶解するようです。

 

対策
  • 温度管理を徹底する。

 

容器への吸着、容器の溶出

輸液セットなどの素材に、塩化ビニル(PVC)、塩化ビニル可塑剤(DEHP)といったものが使われています。薬によっては、PVCに収着、吸着したり、DEHPが溶出したりします。

 

溶出は文字の通り、「溶け出る」ということでわかると思いますが、「収着と吸着って何が違うんだろう?」となりませんでしたか?私の大学の卒業試験の問題に、この違いで引っかけるというクソ問題があったことを覚えています。問題自体は忘れましたが、吸着ではなく収着で×という問題だった記憶があります。当時「収着なんて言葉、まず知らねーよ!」ってなりました(笑)

 

吸着はイメージ通り、薬の成分が、容器や輸液セットの壁の表面上にくっついている状態です。

 

収着は、薬の成分が容器や輸液セットの壁の表面だけでなく、中まで食い込んでいるイメージになります。

 

正直、違いなんてどうでもいいと思うのですが、いかがでしょうか?

 

 

例として以下のようなものがあります。

 

ポリ塩化ビニル(PVC)への吸着

  • フロリード(ミコナゾール)
  • ニトロール(硝酸イソソルビド)
  • ミリスロール(ニトログリセリン)
  • プログラフ(タクロリムス)
  • サンディミュン(シクロスポリン)

 

ポリ塩化ビニル可塑剤(DEHP)の溶出

  • ディプリバン(プロポフォール)
  • イントラリピッド
  • ビタジェクト
  • タキソール(タキソテール)
  • プログラフ(タクロリムス)

 

対策

  • PVCやDEHP不使用のものを使う。

 

薬剤師と看護師の協力で配合変化を防ぐ

薬剤師側では、データや理論上の問題を未然に防ぐのが重要となります。もし病室を訪れる時があったら、点滴がどうなっているかもチェックできるといいですね。

 

看護師さん側は調製や実際の投与中の問題を防ぐことが重要となります。

 

 

お互いが協力しあうことで配合変化を防ぐことができるのです。

 

まとめ

  • 添付文書、インタビューフォーム、注射薬調剤マニュアルを使って調べる。
  • 原因として、pH変化による溶解度の減少、キレートの生成、光の影響、温度変化の影響、容器への吸着、容器の溶出などがある。
  • 薬剤師と看護師が協力することで配合変化を防げる。

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輸液が必要な患者とは
薬剤師や新人や実習生の人は注射や輸液のことをあまりわかっていないです。輸液はなんらかの理由で経口不可の状態のために行い、不足している水や電解質、栄養を補充します。
輸液を投与する経路
輸液の投与経路は、末梢静脈、中心静脈があります。末梢静脈であれば第一選択として腕で、次に脚が選ばれることが多いです。中心静脈は、高カロリー輸液をいく場合などに選ばれます。
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輸液ポンプ、シリンジポンプ、中心静脈カテーテル、フィルターなど様々な器材が、患者の病態や状況によって組み合わあされて薬液が投与されます。薬剤師でも最低限のことは知る必要があります。
輸液は何の目的でするのか
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