維持輸液量、補充輸液量、安全係数の3つを考える。

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輸液量は3つの要因で決まる。

患者さんによって、輸液が1本だけだったり、あるいは4本だったりというのを見たことがあると思います。

 

輸液の投与量はどのようにして決められているのでしょうか?書籍によって少し異なりますが、輸液の投与量は以下の式で求められます。

 

輸液量=@維持輸液量+A補充輸液量×B安全係数

 

 

式を覚えるのではなく、式の意味を考えながら覚えていけば難しくないです。それぞれを見ていきます。

 

@維持輸液量

維持輸液量は生命を維持するために必要な輸液量です。維持輸液量を理解するためには、またさらに式を把握する必要があります。

 

維持輸液量=尿量+不感蒸泄ー代謝水

 

 

難しく考えなくてよいです。要するに体からでる水分のバランスを式にしただけです。

 

尿量は文字通りなので大丈夫だと思います。

 

不感蒸泄は、呼吸や皮膚などから蒸発する水分のことです。ヒトは、なにげなく生活していますが、それだけでも水分を放出しています。

 

不感蒸泄は15ml/kg/日と求められますが、体温や外の気温などによって変動を受けます。当たり前ですが、冬と夏じゃ暑さが違いますよね。体温が1℃あがるごとに15%、外気温が30℃から1℃あがるごとに15%〜20%あがると言われています。

 

代謝水とは、栄養素などの物質が代謝されたときに出てくる水分のことです。例えば、ご飯などを食べて代謝されたときにカロリーに目が行きがちですが、水分も少しは出てきます。そういった水分のことを指します。代謝水は200〜300mlくらいで考えられます。

 

例えば、体重60kg、代謝水を300mlとして考え、先ほどの式に当てはめると、

 

維持輸液量=尿量+15×60ー300=尿量+600

 

と計算できます。

 

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A補充輸液量

患者さんは、嘔吐、下痢、発汗、出血、ドレーンからの廃液、痰の吸引などによって、水分を失います。その失ったものを補充するのが、補充輸液になります。

 

失った体液によって、含まれる電解質が異なり、おおよそですが、以下のようになっています。(単位はmEq/L)

 

  • 血漿;Na+142、K+4、Cl-102、HCO3-24
  • 唾液;Na+33、K+20、Cl-34
  • 胃液;Na+60、K+9、Cl-84
  • 胆汁;Na+149、K+5、Cl-101、HCO3-45
  • 膵液;Na+141、K+4.6、Cl-77、HCO3-92
  • 小腸液;Na+105、K+5、Cl-99、HCO3-50
  • 大腸液;Na+130、K+11.2、Cl-116、HCO3-29
  • 汗;Na+45、K+4.5、Cl-58

 

よって失った体液に近い組成の輸液を、失った分だけ投与するのが基本となります。

 

B安全係数

1日で急速に輸液で補正をかけると、体内のバランスを崩す危険性があるため、2日〜3日かけて補正するという意味合いで安全係数が使われます。

 

2日〜3日かけて補正することを狙う係数となりますので、安全係数は1/2〜1/3が使われます。

 

 

このように、維持輸液量、補充輸液量、安全係数を考慮して1日の輸液量が決められます。ここまでやっておいてあれですが、水分量決定だけに関してですが

 

  • 30mL×体重kg
  • 1mL×kcal
  • 1500mL×体表面積u

 

といった方法があります。簡易的な30mL×体重kgが一番覚えやすいですね。

 

 

まとめ

輸液量=@維持輸液量+A補充輸液量×B安全係数

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輸液が必要な患者とは
薬剤師や新人や実習生の人は注射や輸液のことをあまりわかっていないです。輸液はなんらかの理由で経口不可の状態のために行い、不足している水や電解質、栄養を補充します。
輸液を投与する経路
輸液の投与経路は、末梢静脈、中心静脈があります。末梢静脈であれば第一選択として腕で、次に脚が選ばれることが多いです。中心静脈は、高カロリー輸液をいく場合などに選ばれます。
輸液で使われる器材を知る。
輸液ポンプ、シリンジポンプ、中心静脈カテーテル、フィルターなど様々な器材が、患者の病態や状況によって組み合わあされて薬液が投与されます。薬剤師でも最低限のことは知る必要があります。
輸液は何の目的でするのか
輸液は、生命を維持したり、不足しているものを補うために行います。生命を維持するには、維持液がよく使われます。不足しているものを補うには、末梢静脈栄養と中心静脈栄養があります。末梢静脈栄養は手技がやさしく、感染のリスクが少ないのがメリットです。しかし高いカロリーが投与できません。中心静脈栄養は高カロリーが投与できます。
ヒトの水分を学ぶ。脱水、溢水をメインに。
ヒトの60%は水分でできています。その60%のうち、20%が細胞外液で40%が細胞内液となっています。脱水は主に水分欠乏性脱水とナトリウム欠乏性脱水にわけられ、水分欠乏性脱水では5%ブドウ糖液が、ナトリウム欠乏性脱水では生理食塩水やリンゲル液が使われます。溢水はむくんでいる状態で、特に下腿にむくみがでてきます。
ナトリウムと水分の関係。
ナトリウムは135〜145mEq/Lが基準値となります。この基準からずれたときは、ナトリウムを考えるだけでなく、水分も考える必要があり、補正する場合も橋中心髄鞘崩壊症が起こる可能性があるため、急に補正をかけてはいけません。
カリウムは数値だけでなく、心電図も見よう。
カリウムは細胞内に多く存在し、神経や筋肉が働くのに必要な電解質です。基準値は3.5〜5mEq/Lで、基準値以外にも、心電図でモニタリングすることが重要です。
輸液製剤は5つの分類わけから始めよう
実習生や新人が輸液製剤を考える上では、カリウム、ナトリウム、糖の有無をまず考えます。そして輸液製剤は、電解質輸液、5%ブドウ糖液、高カロリー輸液、電解質補正液、血漿増量剤の5つの分類にわけられます。
病態別の経静脈栄養の考え方
患者が健康だった場合の水分量、栄養量、アミノ酸量などを計算します。そこから病態に応じて増減して、病態別の経静脈栄養を考えていきます。
輸液の速度と滴数の計算
輸液の量を決めたら、速度を決めます。速度は2のべき乗の法則をもとに、病態、年齢、体重をもとに医師から指示が入ります。次に、滴数を決めます。これには輸液セットが関わり、現在は20と60があります。
手術における輸液、サードスペースとは?
手術をする前には、禁飲食となるので、脱水を予防するために、術前や術中に輸液が必要となります。輸液する量は、術式や手術時間、出血量、サードスペースへの移行などをもとに決められます。
配合変化、薬剤師と看護師で協力する
配合変化は薬剤師と看護師で協力しあって防ぐことが重要となります。薬剤師側はデータや理論上の問題を、看護師は調製や実際の投与における問題をみることが重要となります。お互いが協力しあうことで配合変化を防げます。
酸・塩基。アシドーシス、アルカローシス。
血液のpHは7.35〜7.45に保たれています。アシデミアやアルカレミアはこの基準値からずれている状態です。これを主に調節しているのは、腎臓と肺です。アシドーシス、アルカローシスは傾向と捉えてもらえればよいです。
アシドーシス、アルカローシスを読み取る
読み取るには、まずアシデミアかアルカレミアを判断します。それをもとにアシドーシスなのかアルカローシスなのかを考えます。また代謝性なのか呼吸性なのかを考えましょう。逆の反応が代償性反応としておこります。
アシドーシス、アルカローシスの原因、症状、治療
アシドーシスやアルカローシスは、呼吸性であれば 、呼吸に原因が、代謝性であれば代謝に原因があります。治療は、原疾患の治療がベースとなります。
アニオンギャップ(AG)と代謝性アシドーシス
代謝性アシドーシスを鑑別する方法の1つとして、アニオンギャップ(AG)がある。アニオンギャップとは細胞外液における未知の陰イオンのことで、基準値の範囲内である正常型と、外れた増加型の2つにわけられる。
静脈炎の原因と対策
静脈炎の原因には、化学的静脈炎、機械的静脈炎、細菌性静脈炎がある。化学的静脈炎にはpHや浸透圧が関わる。機械的静脈炎はカテーテル先端によるものや不溶性異物がある。細菌性静脈炎は細菌や真菌が原因となる。原因に応じた対策をとることでリスクを下げることができる。
血管外漏出の原因と対策、抗がん剤とともに
血管外漏出は通常の点滴で起こり、特に抗がん剤で大きな問題となります。症状は炎症から始まり、時には壊死を起こす可能性もあります。血管外漏出の原因や対策を把握して、防ぐことが重要になります。
緊急時の昇圧剤の違い、イノバン、ドブトレックス、ノルアドレナリン、アドレナリン
緊急時の昇圧剤には、イノバン(ドパミン)、ドブトレックス(ドブタミン)、ノルアドレナリン、ボスミン(アドレナリン)などがあります。これらは血圧を上げるイメージがありますが、それぞれ微妙に作用に違いがあります。
緊急時の降圧薬の違い、ペルジピン、ミリスロール
緊急時などで血圧が高い時には降圧薬が注射で投与されます。ペルジピン(ニカルジピン)は主に高血圧緊急症で使われます。ミリスロールは不安定狭心症や急性心不全などに主に使われ、作用が違います。
徐脈に使われる注射薬、アトロピン
アトロピンは抗コリン作用をもち、心臓におけるムスカリンM2受容体を遮断するため、徐脈性不整脈などに使わる注射薬です。そのほかにも迷走神経反射などにアトロピンは使われます。
頻脈に使われる注射薬の違い、抗不整脈薬、アデホス-Lコーワ、ジゴシン
頻脈や不整脈には、リスモダンP、キシロカイン、サンリズム、オノアクト、アンカロン、ワソラン、アデホス-Lコーワ、ジゴシンといった薬が使われます。これらは病態や適応(上室性か心室性か)、腎機能や肝機能によって使い分けられます。
アレルギーやアナフィラキシーで使われる注射薬、エピペン、サクシゾン、ポララミン、ネオフィリン、イノバン
アレルギーやアナフィラキシーを起こした時の注射薬には、エピペン、サクシゾン、ポララミン、ネオフィリン、イノバンといった薬があります。これらの薬を医師がアレルギーやアナフィラキシーの状況に応じて使い分けていきます。
抗がん剤調製の基本。安全な作業準備を行う。
実習先で、抗がん剤の調製をさせてくれる施設もあります。抗がん剤は高額なものも多く、毒性は強いものが多いです。そのため、安全かつ確実に行う必要があり、適切な作業準備が必要です。
抗がん剤調製の基本。バイアル、輸液バックへの針刺し
抗がん剤を安全キャビネットに入れる前に消毒して入れましたが、調製の直前にも再度消毒が必要です。薬剤が漏れ出ないように、かつコアリングなどしないように適切に、バイアルや輸液バックに針刺しをすることが大事です。
抗がん剤調製の基本。バイアルに、針を刺したら、押すな引け。
抗がん剤のバイアルが粉だったら、溶解液で溶かす必要があります。バイアル内の粉を溶解して、採取するまでの基本的なシリンジ操作や針刺し事故防止などを学んでいきます。
抗がん剤調製の基本。薬液量の確認と希釈
抗がん剤の薬液量の確認は、まずエアーを抜いて、シリンジ内に満たします。その上で目盛を確認します。この際、どこまで抗がん剤を満たすかによって、希釈時の作業が変わるため注意が必要です。
抗がん剤調製の基本。払い出しと後片付け
抗がん剤調製で、希釈をしたら、いよいよ払い出しです。払い出し直前に、間違っていないか最終確認して払い出ししましょう。後片付けはしっかり行わないと、自分だけでなく、次に使う人が被ばくしてしまいます。
経腸栄養と経静脈栄養の違い
経腸栄養剤は輸液製剤を比べると栄養学的な観点から優れています。経腸栄養と経静脈栄養では投与速度を調整する理由が違います。

 
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