ナトリウムが高いか低いかだけで考えず水分も考える。

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ナトリウムと水分の関係

前項、輸液は何の目的でするのかで水分中に含まれる電解質で特にナトリウムとカリウムが輸液には重要になってくるとお話をしました。
今回はナトリウムについてみていこうと思います。

 

 

ナトリウムは細胞外液に多く存在し、さまざまな電解質を含む細胞外液のなかでも一番多く含まれている電解質になります。よってナトリウムは細胞外液の浸透圧に関与してきます。
ここでは、浸透圧に関与するということで、ナトリウムと水はセットで動くということを覚えてもらえたらと思います。

 

 

そんな細胞外液に多く含まれているナトリウムですが、検査値の基準は書籍によって異なりますが、だいたい135〜145mEq/Lの間になると思います。
135より低ければ、低ナトリウム血症、145より多ければ高ナトリウム血症と呼ばれます。

 

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低ナトリウム血症

低ナトリウム血症という言葉を聞くと、普通はナトリウムが体内から減っているんだなというイメージをすると思います。しかし必ずしもそうとは限りません。

 

単位を見てみると、mEq/Lです。分子のmEqが減ることは今のイメージと同じです。
では逆に分母が増えたらどうでしょう?mEq/Lとしては減ると思います。
極端なお話をしましたが、ナトリウムと水分両方を考える必要があります。主に以下の3つがあげられます。

 

  1. 体内の水分量は正常、ナトリウム量が不足
  2. 体内の水分量とナトリウム量が過剰
  3. 体内の水分量とナトリウム量が不足

 

低ナトリウム血症の症状としては主に脳神経症状です。血液のナトリウム濃度が低くなり、細胞外液の濃度は低くなります。相対的に細胞内の方が濃度が高くなることになります。その結果細胞外から細胞内へ水分が移動し細胞がむくみます。脳の細胞がむくんだ結果、神経などが圧迫されて脳神経症状が出てくるのです。前兆のサインとしては、頭痛、悪心、嘔吐、傾眠などがあり、120を切ってくると痙攣や昏睡状態となる可能性があります。

 

 

では、@〜Bの状態を細かく見ていきます。

 

@体内の水分量は正常、ナトリウム量が不足

 

 

原因
  • SIADH(Syndrome of Inapproriate secretion of AntiDiuretic Hormone);抗利尿ホルモン不適合分泌症候群など。

 

下垂体からは抗利尿ホルモン(バソプレシン)が出て尿量を調節しています。抗利尿ホルモンということなので、オシッコが出ない状態となります。オシッコが出ない状態ということは、体内の水分がたまる状態になり、ナトリウムが水分で薄まるのがイメージできるかと思います。少し@の言葉とは違いますが、ナトリウムが薄まっているという点では同じです。

 

治療法
  • 水分制限
  • 等張性〜高張性輸液によるナトリウム投与
  • 利尿薬

 

これ以上ナトリウムが薄まらないようにする治療です。
ここで注意すべき点は、焦って急速に補充しないことです。急速にナトリウムを補正すると、「橋中心髄鞘崩壊症」という合併症が起こる可能性があります。

 

細胞内より濃度の高い高張性輸液を投与すると、細胞内の水分が細胞外にもっていかれ、細胞内脱水が起こります。それによって橋を中心とした脱髄が起こってしまいます。

 

そのため、0.5mEq/L/hを超えず、かつはじめの24時間の上昇が10mEq/L/日を超えないようにすることが重要です。よって投与中はナトリウムのモニタリングがかなり重要となってきます。病態などによって異なりますが、以下のA〜Bも含めて、積極的にナトリウムを補充するのはこの@のケースと覚えておくとよいでしょう。

 

 

A体内の水分量とナトリウム量が過剰

 

 

原因
  • 心不全、肝硬変、腎不全など

 

循環や排泄がうまくいかず、水分とナトリウムが高くなっているのをイメージしてもらえたらと思います。ナトリウムが過剰でもそれを水分がさら上回って、薄まっている状態です。

 

治療法
  • ナトリウムの制限
  • 利尿薬

 

ナトリウムはすでに過剰な状態なので、ナトリウムの投与は行いません。また水分も過剰な状態なので、利尿薬で水分を排泄させます。

 

 

B体内の水分量とナトリウム量が不足

 

 

原因
  • 脱水、アジソン病など

 

ここではアジソン病の捕捉を。アジソン病は、副腎皮質の機能が低下している病態です。副腎皮質では、アルドステロン、コルチゾール、アンドロゲンなどのホルモンを作っています。
そのうちアルドステロンは鉱質コルチコイドとも呼ばれ、主にナトリウムを体内にため、カリウムを排泄する作用を持ちます。
よってアジソン病でアルドステロンが減ると、ナトリウムとともに水分も出て行ってしまうことになります。

 

治療
  • 等張液の輸液投与

 

脱水の状態であるため、生理食塩水などの細胞外補充液を投与します。

 

次は高ナトリウム血症をみていきます。

 

高ナトリウム血症

ナトリウムが145mEq/Lを超えていると状態になります。

 

高ナトリウム血症の症状も脳神経症状になります。高ナトリウム血症の場合は、細胞外の方が濃度が高く、細胞内は濃度が低い状態となるので、細胞内から細胞外へ水分が移動し、細胞が小さく萎縮してしまうことによります。

 

 

高ナトリウム血症の場合は以下の2つのケースが多いです。

 

  • A、ナトリウムが過剰
  • B、水分が不足

 

A,ナトリウムが過剰

 

 

原因
  • ナトリウムの過剰摂取
  • アルドステロン症など

 

アルドステロン症は先ほどの低ナトリウム時のアジソン病とは逆に、アルドステロンが多く出てしまい、ナトリウムや水分がたまりやすい状態になります。

 

治療
  • 原因疾患の治療をします。

 

B、水分が不足

 

 

原因
  • 不感蒸泄の増加
  • 尿崩症

 

汗によって水分が失われると、相対的にナトリウムが高くなる可能性があります。
尿崩症は先ほどのSIADHとは逆に、抗利尿ホルモン(バソプレシン)が少なくなってしまい、オシッコが出続ける病気ととらえてください。

 

治療
  • 経口可能であれば、経口から水分を摂取をします。もし無理ならば5%ブドウ糖液や低張性の輸液を投与します。

 

 

このように低ナトリウム血症にしろ、高ナトリウム血症にしろ、ナトリウムだけでなく、水分も考えることが重要となります。またどちらも急速に補正せずゆっくりと補正することが大事です。

 

まとめ

  • ナトリウムは水とセットに動く。
  • 低ナトリウム血症も高ナトリウム血症も脳神経障害が主な症状。
  • 低ナトリウム血症も高ナトリウム血症もナトリウムだけでなく、水分がどうなっているのかを考える。

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輸液が必要な患者とは
薬剤師や新人や実習生の人は注射や輸液のことをあまりわかっていないです。輸液はなんらかの理由で経口不可の状態のために行い、不足している水や電解質、栄養を補充します。
輸液を投与する経路
輸液の投与経路は、末梢静脈、中心静脈があります。末梢静脈であれば第一選択として腕で、次に脚が選ばれることが多いです。中心静脈は、高カロリー輸液をいく場合などに選ばれます。
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輸液ポンプ、シリンジポンプ、中心静脈カテーテル、フィルターなど様々な器材が、患者の病態や状況によって組み合わあされて薬液が投与されます。薬剤師でも最低限のことは知る必要があります。
輸液は何の目的でするのか
輸液は、生命を維持したり、不足しているものを補うために行います。生命を維持するには、維持液がよく使われます。不足しているものを補うには、末梢静脈栄養と中心静脈栄養があります。末梢静脈栄養は手技がやさしく、感染のリスクが少ないのがメリットです。しかし高いカロリーが投与できません。中心静脈栄養は高カロリーが投与できます。
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ヒトの60%は水分でできています。その60%のうち、20%が細胞外液で40%が細胞内液となっています。脱水は主に水分欠乏性脱水とナトリウム欠乏性脱水にわけられ、水分欠乏性脱水では5%ブドウ糖液が、ナトリウム欠乏性脱水では生理食塩水やリンゲル液が使われます。溢水はむくんでいる状態で、特に下腿にむくみがでてきます。
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輸液製剤は5つの分類わけから始めよう
実習生や新人が輸液製剤を考える上では、カリウム、ナトリウム、糖の有無をまず考えます。そして輸液製剤は、電解質輸液、5%ブドウ糖液、高カロリー輸液、電解質補正液、血漿増量剤の5つの分類にわけられます。
輸液量は3つの要因で決まる。
輸液量は、3つの要因で成り立つ式で決まる。維持輸液量は生命を維持するのに必要な水分量で、水分のバランスである。補充輸液量は失った体液に近い組成のものを投与する。安全係数は2日〜3日かけて投与することを意味する。
輸液の速度と滴数の計算
輸液の量を決めたら、速度を決めます。速度は2のべき乗の法則をもとに、病態、年齢、体重をもとに医師から指示が入ります。次に、滴数を決めます。これには輸液セットが関わり、現在は20と60があります。
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手術をする前には、禁飲食となるので、脱水を予防するために、術前や術中に輸液が必要となります。輸液する量は、術式や手術時間、出血量、サードスペースへの移行などをもとに決められます。
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