緊急時の昇圧剤の違いを学ぶ。

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緊急時の昇圧剤の違い、イノバン、ドブトレックス、ノルアドレナリン、アドレナリン

血圧の基本、高血圧と低血圧のページでお話ししたように、ショックなどで血圧が下がると緊急事態となります。血圧が下がると生命の危機になってきますので、よほどのことがない限りは昇圧剤の使用が開始されます。

 

 

緊急時の昇圧剤には以下のような薬があります。

 

  • イノバン(ドパミン)
  • ドブトレックス(ドブタミン)
  • ノルアドレナリン
  • ボスミン(アドレナリン)

 

院内採用によって名前が違ったりしますが、これらを見ていきます。一部内容がかぶりますが、緊急時以外の昇圧薬は別ページ、低血圧治療薬、αとβが昇圧に関わる。でもまとめているので参考にしてください。

 

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イノバン(ドパミン)

イノバン(ドパミン)はノルアドレナリンの前駆物質であり、中枢神経の黒質-線条体系の神経伝達物質でもあります。よって主にα1、β1、D1、D2受容体の刺激作用があります。このことから、イノバン(ドパミン)は用量によって作用が変わってくる薬です。

 

特徴
  • 用量によって、作用が変わってきます。(以下参照)

 

用法用量
  • (希釈が必要なら希釈して)1〜5μg/kg/分を持続静脈投与。適宜増減だが、20μg/kg/分まで。

 

 

  • 1〜3μg/kg/分(低用量)では、腎血管のD1受容体に作用して、腎血管を拡張し腎血流量が増えます。(尿量の増加)
  • 3〜10μg/kg/分(中用量)では、心臓のβ1受容体に作用して、心筋収縮力を高め、心拍出量が増えます。(血圧の上昇、頻脈)
  • 10μg/kg/分(高容量)では、α1作用がD1作用やβ1作用より優位となり血管収縮が起こります。(さらに血圧上昇)

 

ドブトレックス(ドブタミン)

ドブトレックス(ドブタミン)は合成されたカテコールアミンであり、主に心臓のβ1に作用します。

 

 

特徴
  • イノバン(ドパミン)と比べて不整脈の頻度は少ないです。
  • 昇圧作用は高くなく、心筋収縮力が高まる。
  • イノバン(ドパミン)とドブトレックス(ドブタミン)を併用することで、利尿作用と強心作用が起こるため、心不全などにこの使い方がされることがあります。

 

用法用量
  • (希釈が必要なら希釈して)1〜5μg/kg/分を持続静注投与。適宜増減だが、20μg/kg/分まで。

 

ノルアドレナリン

ノルアドレナリンは主にα受容体に作用し、β受容体への作用は弱めです。そのため血管収縮作用が強く、急性の低血圧に使われます。

 

 

特徴
  • 心収縮力は少しありますが、メインは血管収縮による昇圧作用です。

 

用法用量
  • 1回1mgを250mlの生食や5%ブドウ糖液などに溶解し、点滴静注。0.5〜1ml/分が一般的だが、血圧を見ながら適宜増減。
  • 0.1〜1mgを皮下注射。適宜増減。

 

ボスミン(アドレナリン)

ボスミン(アドレナリン)は心臓のβ1を刺激して、心拍出量を高める作用があります。また血管のα1刺激作用もあり、血管収縮作用もあります。他にも気管支のβ2を刺激し、気管支拡張したり、肝臓のβ2刺激によるグリコーゲン分解による血糖値上昇作用などももっています。

 

 

特徴
  • 心停止や急性低血圧、気管支喘息などに用いられる。

 

用法用量
  • 適応により異なるが、上記緊急時には、1回0.2mg〜1mgを皮下注または筋注。適宜増減。
  • 蘇生などの緊急時には1回0.25mgを超えない量を生食などで希釈して、ゆっくりと静注。必要があれば5〜15分ごとに繰り返す。

 

まとめ

  • イノバン(ドパミン)は利尿作用も持つ昇圧剤
  • ドブトレックス(ドブタミン)は主に心筋収縮力を高める。
  • ノルアドレナリンは主に血管収縮力を高める。
  • ボスミン(アドレナリン)は血管収縮作用、気管支拡張、心拍数増加作用がある。

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輸液が必要な患者とは
薬剤師や新人や実習生の人は注射や輸液のことをあまりわかっていないです。輸液はなんらかの理由で経口不可の状態のために行い、不足している水や電解質、栄養を補充します。
輸液を投与する経路
輸液の投与経路は、末梢静脈、中心静脈があります。末梢静脈であれば第一選択として腕で、次に脚が選ばれることが多いです。中心静脈は、高カロリー輸液をいく場合などに選ばれます。
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輸液ポンプ、シリンジポンプ、中心静脈カテーテル、フィルターなど様々な器材が、患者の病態や状況によって組み合わあされて薬液が投与されます。薬剤師でも最低限のことは知る必要があります。
輸液は何の目的でするのか
輸液は、生命を維持したり、不足しているものを補うために行います。生命を維持するには、維持液がよく使われます。不足しているものを補うには、末梢静脈栄養と中心静脈栄養があります。末梢静脈栄養は手技がやさしく、感染のリスクが少ないのがメリットです。しかし高いカロリーが投与できません。中心静脈栄養は高カロリーが投与できます。
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ヒトの60%は水分でできています。その60%のうち、20%が細胞外液で40%が細胞内液となっています。脱水は主に水分欠乏性脱水とナトリウム欠乏性脱水にわけられ、水分欠乏性脱水では5%ブドウ糖液が、ナトリウム欠乏性脱水では生理食塩水やリンゲル液が使われます。溢水はむくんでいる状態で、特に下腿にむくみがでてきます。
ナトリウムと水分の関係。
ナトリウムは135〜145mEq/Lが基準値となります。この基準からずれたときは、ナトリウムを考えるだけでなく、水分も考える必要があり、補正する場合も橋中心髄鞘崩壊症が起こる可能性があるため、急に補正をかけてはいけません。
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カリウムは細胞内に多く存在し、神経や筋肉が働くのに必要な電解質です。基準値は3.5〜5mEq/Lで、基準値以外にも、心電図でモニタリングすることが重要です。
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実習生や新人が輸液製剤を考える上では、カリウム、ナトリウム、糖の有無をまず考えます。そして輸液製剤は、電解質輸液、5%ブドウ糖液、高カロリー輸液、電解質補正液、血漿増量剤の5つの分類にわけられます。
輸液量は3つの要因で決まる。
輸液量は、3つの要因で成り立つ式で決まる。維持輸液量は生命を維持するのに必要な水分量で、水分のバランスである。補充輸液量は失った体液に近い組成のものを投与する。安全係数は2日〜3日かけて投与することを意味する。
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輸液の量を決めたら、速度を決めます。速度は2のべき乗の法則をもとに、病態、年齢、体重をもとに医師から指示が入ります。次に、滴数を決めます。これには輸液セットが関わり、現在は20と60があります。
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手術をする前には、禁飲食となるので、脱水を予防するために、術前や術中に輸液が必要となります。輸液する量は、術式や手術時間、出血量、サードスペースへの移行などをもとに決められます。
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配合変化は薬剤師と看護師で協力しあって防ぐことが重要となります。薬剤師側はデータや理論上の問題を、看護師は調製や実際の投与における問題をみることが重要となります。お互いが協力しあうことで配合変化を防げます。
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