バイアルに針を刺したら、必ずプランジャーを引く癖をつけましょう。

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抗がん剤調製の基本。バイアルに、針を刺したら、押すな引け。

前ページ、抗がん剤調製の基本。バイアル、輸液バックへの針刺しでは、針を刺すところまでを述べました。今回は針を刺してから、抜き取りまでのお話です。

 

 

全体の流れとしては、以下のようになります。

 

  1. 溶解液を入れる。
  2. 溶解液でしっかり溶かす。
  3. 溶解した液から必要量採取する。

 

バイアル製剤が、粉であれば、溶解液で溶かす必要がありますが、すでに溶かしてあるものであれば、3の方だけで大丈夫です。そのため、粉を溶かして採取することができれば、様々な抗がん剤を調整できるようになります。

 

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溶解液を入れる。

溶解液は、薬剤に添付されているものだったり、希釈する液を使うものなど、調製する抗がん剤によって異なります。まず溶解液を必要量シリンジに採取しましょう。

 

溶解液の入ったシリンジの針をバイアルに刺したら、プランジャーを引いて圧力差に任せて、溶解液を入れます。この時、プランジャーを押して溶解液を注入してはいけません。バイアル内が陽圧になって抗がん剤が噴き出る可能性があるからです。私の大学の先生が講義の時に「バイアルに、針を刺したら、押すな引け」と覚えやすい川柳で言ってくれたのを覚えています。

 

 

その他にも、溶解する際に泡立ててしまうと、分子標的薬などは失活してしまう可能性があるので、なるべく泡立てないようにします。また勢いよくいれて、泡立ててしまうと、採取するときに採取しにくくなる薬もあります。薬ごとに頭を切り替えて注入できる人はいいですが、焦っているときなど無意識にジャーっと注入してしまう時があるので、注意が必要です。

 

泡立ててはいけない抗がん剤の時には、針の角度を斜めにして、バイアルの内側の壁を伝わらせるように静かに入れましょう。

 

 

溶解液でしっかり溶かす。

溶解液をバイアル内に入れたら、粉が溶けるように混ぜます。混ぜる際にも、先ほどの泡立ててはいけない薬の時には、泡立てないように注意が必要です。溶解する場合には、以下の2パターンに分かれます。

 

  • バイアルから針を抜かないで混ぜる。
  • バイアルから針を抜いて混ぜる。

 

バイアルから針を抜かないで混ぜる。

すぐに溶ける薬や、全量を採取する薬の場合は、バイアルから針を抜いて混ぜる必要はありません。時間短縮や、針刺し回数も減り、薬液が漏れる可能性も低くなります。片手で、バイアル部分とシリンジ部分をしっかりと固定して、混ぜましょう。

 

バイアルから針を抜いて混ぜる。

バイアルから針を抜いて混ぜる場合は、バイアル内がやや陰圧になるように、プランジャーを少し引きながら、針をバイアルから出します。

 

リキャップ時の針刺し

バイアルから針を抜いたら、針にリキャップをする必要があります。防護メガネや安全キャビネットのガラス越しなどで、視界が悪くなったり、遠近感がおかしくなったりして、針刺し事故が起こりやすいので注意が必要です。

 

私は針刺しを1回やったことがあります。幸いにも抗がん剤を入れる前だったのでラッキーでしたが、予防接種の時の針と比べると太いので、さすと痛いです。そして、その後の作業が動揺したのを覚えています(笑)

 

キャップの口の方を持つと、戻す際に針を刺しやすくなるので、閉じてあるほう(先端部分)側を持つと針を刺しにくいです。また、置いてあるキャップをすくう方法は、自身の針刺し事故は防止できますが、すくう時にキャビネット内に抗がん剤を垂らしてしまう可能性があるので注意が必要です。

 

 

溶けたかの確認

エンドキサンなどは溶けにくく、全力で混ぜないと溶けません。そのため、抗がん剤を十分に混ぜたら、溶けきっていない粉が浮いていないかを確認します。

 

粉が沈殿している可能性もあるので、私は渦巻きを発生させた後、バイアル内を覗き込み、チェックしています(もちろん、渦巻きを発生させる際に泡立ち注意!)。溶けきっていなければ、渦の中でキラキラ光ったり、プカプカ浮いているのでわかります。その他にも、コアリングが発生していないかを確認します。

 

溶解した液から必要量採取する。

バイアルから薬液の抜き取りを行います。抜き取る量と同じ分だけ、もしくはそれよりやや少なめにエアーをシリンジにいれます。バイアルに針を刺したら、プランジャーを引いて、抜き取っていきます。ある程度抜きとったら、またプランジャーを元の位置に戻して、引き抜き、これを繰り返していきます。この時にも泡立ててはいけない薬剤の時は、泡立たないように、針先は液面から出しましょう。プールの息継ぎと同じで、薬液内で戻すと泡立ちます。

 

 

シリンジ内に気泡があると誤差になるので、シリンジをタップするなどして、気泡が残らないようにします。シリンジ内が、目標の量になっていることを確認したら、針先を液面から出し、エアーを少し入れて、固定したままバイアルから抜き取ります。

 

まとめ

  • 溶解液を入れて、溶かし、採取する。
  • バイアルに、針を刺したら、押すな引け

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輸液が必要な患者とは
薬剤師や新人や実習生の人は注射や輸液のことをあまりわかっていないです。輸液はなんらかの理由で経口不可の状態のために行い、不足している水や電解質、栄養を補充します。
輸液を投与する経路
輸液の投与経路は、末梢静脈、中心静脈があります。末梢静脈であれば第一選択として腕で、次に脚が選ばれることが多いです。中心静脈は、高カロリー輸液をいく場合などに選ばれます。
輸液で使われる器材を知る。
輸液ポンプ、シリンジポンプ、中心静脈カテーテル、フィルターなど様々な器材が、患者の病態や状況によって組み合わあされて薬液が投与されます。薬剤師でも最低限のことは知る必要があります。
輸液は何の目的でするのか
輸液は、生命を維持したり、不足しているものを補うために行います。生命を維持するには、維持液がよく使われます。不足しているものを補うには、末梢静脈栄養と中心静脈栄養があります。末梢静脈栄養は手技がやさしく、感染のリスクが少ないのがメリットです。しかし高いカロリーが投与できません。中心静脈栄養は高カロリーが投与できます。
ヒトの水分を学ぶ。脱水、溢水をメインに。
ヒトの60%は水分でできています。その60%のうち、20%が細胞外液で40%が細胞内液となっています。脱水は主に水分欠乏性脱水とナトリウム欠乏性脱水にわけられ、水分欠乏性脱水では5%ブドウ糖液が、ナトリウム欠乏性脱水では生理食塩水やリンゲル液が使われます。溢水はむくんでいる状態で、特に下腿にむくみがでてきます。
ナトリウムと水分の関係。
ナトリウムは135〜145mEq/Lが基準値となります。この基準からずれたときは、ナトリウムを考えるだけでなく、水分も考える必要があり、補正する場合も橋中心髄鞘崩壊症が起こる可能性があるため、急に補正をかけてはいけません。
カリウムは数値だけでなく、心電図も見よう。
カリウムは細胞内に多く存在し、神経や筋肉が働くのに必要な電解質です。基準値は3.5〜5mEq/Lで、基準値以外にも、心電図でモニタリングすることが重要です。
輸液製剤は5つの分類わけから始めよう
実習生や新人が輸液製剤を考える上では、カリウム、ナトリウム、糖の有無をまず考えます。そして輸液製剤は、電解質輸液、5%ブドウ糖液、高カロリー輸液、電解質補正液、血漿増量剤の5つの分類にわけられます。
輸液量は3つの要因で決まる。
輸液量は、3つの要因で成り立つ式で決まる。維持輸液量は生命を維持するのに必要な水分量で、水分のバランスである。補充輸液量は失った体液に近い組成のものを投与する。安全係数は2日〜3日かけて投与することを意味する。
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輸液の量を決めたら、速度を決めます。速度は2のべき乗の法則をもとに、病態、年齢、体重をもとに医師から指示が入ります。次に、滴数を決めます。これには輸液セットが関わり、現在は20と60があります。
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手術をする前には、禁飲食となるので、脱水を予防するために、術前や術中に輸液が必要となります。輸液する量は、術式や手術時間、出血量、サードスペースへの移行などをもとに決められます。
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