高齢化も進み、在宅も増えつつあります。在宅が増えると、自然と在宅で緩和ケアをする機会も増えてきます。
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まず在宅緩和ケアというと看取りのイメージが強いですが、そうではなく、家族と楽しく生きるための支える医療だと私は思います。よって介入するにあたって、本人や家族(キーパーソン)の意見をよく聞いておく必要があります。
病院と在宅における緩和ケアのメリット、デメリット
病院と在宅での緩和ケアのメリット、デメリットを考えるのにあたって大きくかかわってくるのが、急変時の対応と日常生活です。
病院のメリット
- 急変時に対応しやすい
- 家族負担の軽減
- 病態把握がしやすい
病院のデメリット
- 自然な形での日常生活がしにくい
- 面会時間に制限がある
在宅のメリット
在宅のデメリット
- 急変時の対応が遅れる
- 家族負担の増加
- 病態把握がしにくい
病院でのメリットが在宅でのデメリットとなり、在宅でのメリットが病院でのデメリットとなります。そのため、在宅のデメリットを減らし、入院のメリットのような形に近づけることで、在宅における緩和ケアが可能となってきます。
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在宅のデメリットを減らし、入院のメリットのような形に近づけるためには、以下のものをしっかりと管理、対応することが必要となります。
- 疼痛管理
- 栄養管理
- 医療処置
- 心的ケア、家族ケア
- 緊急対応
では、薬剤師が良くかかわる疼痛管理をみていきます。
身体的な痛み
身体的な痛みの種類には以下のようなものがあります。
体性痛
- 障害部位;皮膚、骨、筋肉、胸膜、腹膜
- 痛みを起こす刺激;機械的刺激(切る、刺す)
- 特徴;持続の鈍痛、場所が明らか、体動時増強
- 有効薬剤;通常の鎮痛薬
- 例;骨転移痛
内臓痛
- 障害部位;内臓、消化管
- 痛みを起こす刺激;臓器皮膜の伸展、管腔の拡張や牽引
- 特徴;漠然とした鈍痛、腹部正中関連痛
- 有効薬剤;通常の鎮痛薬
- 例;内臓腫瘍増大による周囲への圧迫
神経障害性疼痛
- 障害部位;神経、脊髄
- 痛みを起こす刺激;触れるなど通常痛みを起こさない刺激
- 特徴;しびれを伴う痛み、知覚運動障害あり
- 有効薬剤;抗うつ薬、抗けいれん薬
- 例;神経へのがん浸潤、ヘルペス後神経痛
全人的な痛み
緩和ケアでは、先ほどの身体的な痛みに加えて以下の痛みが関わってきます。
- 精神的な痛み;不安、孤独感、いら立ち、恐れ、うつ、怒り
- 霊的な痛み(スピリチュアルペイン);死への恐怖、人生の意味への問い、価値体系の変化、髪の存在への追及、苦しみの意味
- 社会的な痛み;仕事上の問題、経済的な問題、家族内の問題、人間関係
これらの痛みを加えた全人的な痛み(total pain)で考えることが緩和ケアでは重要となってきます。また麻薬に対して薬物乱用のイメージがあり不安に感じている患者さんもいます。そのような不安を和らげるのも大事なことです。
精神科医のキューブラー・ロスは末期がん患者が疾患の告知を受けてから死を受容していくまでの心理的変化の段階を端的に示し、それを死の受容の5段階と呼びます。
- 現実の否認と孤立;第一段階。私がそんな病気にかかるわけがない
- 怒り;第二段階。なぜ私だけがこんな目にあわないといけないの
- 取引;第三段階。もしこの病気が治るなら、なんだってやる
- 抑うつ;第四段階。もうこの病気はどうにもできないんだ
- 受容;第五段階。この病気を受け入れて残りの人生を前向きに生きよう
薬剤師はどうしても身体的な痛みに注目しがちですが、痛みを全人的な痛みととらえて、少しでも和らげて残された時間を有効に使えるように支えていくのが緩和ケアでは必要となってきます。
薬剤師の視点
緩和ケアをしていくにあたって、以下の手順で考えていくとやりやすいです。
- 痛みの原因は何か(いつ、どこが、どのように痛いのか)
- 薬剤以外の選択肢はないか、どの薬剤が最適か
- 使用して評価する
- 痛みが取りきれなければ、再度原因を考える。(身体的な痛み以外の痛みはないか)
あとはこれを繰り返し、ベストな方法を探します。
がんに関連して使われる薬
がんには痛みだけでなく、様々な症状が出てきます。それらの症状に対して使われる例をあげます。
痛み
全身倦怠感
食欲不振
胸水、浮腫
腸閉塞
吐き気
呼吸困難
発熱
不眠
不穏、せん妄
これだけの症状を薬によって抑えられる可能性があるのです。次回は痛みに関する内容をまとめていこうと思います。
まとめ
- 病院と在宅における緩和ケアを考える際に、急変時の対応と日常生活がメリットとデメリットになりうる。
- 薬局の在宅緩和ケアは、身体的な痛みだけでなく、全人的な痛みで考える。
- がんに関わる症状の一部は薬で抑えることができる。