塩酸バンコマイシン点滴静注用(バンコマイシン塩酸塩)、抗MRSA薬の違い

塩酸バンコマイシン点滴静注用(バンコマイシン塩酸塩)、抗MRSA薬の違い

塩酸バンコマイシン点滴静注用(バンコマイシン塩酸塩)はグリコペプチド系で、細菌の細胞壁の合成を阻害します。また抗MRSA薬の1つです。抗MRSA薬は、適応症、TDM、各薬剤の特徴が違います。

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塩酸バンコマイシン点滴静注用(バンコマイシン塩酸塩)、抗MRSA薬の違い

由来

  • 一般名による

 

そのままなので覚えやすい。

 

特徴

  • 細菌の細胞壁合成阻害作用等により殺菌的に作用
  • メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に対し抗菌力を示す。
  • ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)及びメチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(MRCNS)に対し、抗菌力を示す。
  • 点滴静注で投与量に比例した血漿中濃度が得られ、健康成人における半減期は4〜6時間

 

塩酸バンコマイシン点滴静注用(バンコマイシン塩酸塩)は、グリコペプチド系に分類される。細菌の細胞壁の合成を阻害するのが主な作用機序である。

 

細菌の細胞壁はペプチドグリカンからなるが、ペプチドグリカンが作られるにもいくつか過程がある。

 

おおざっぱに言うと、N-アセチルムラミン酸とN-アセチルグルコサミンという成分が結合して1本の鎖のようなものを作っている。その1本の鎖どうしを、トランスペプチダーゼと呼ばれる酵素が、ペプチド鎖をくっつけることによって、より強固なつなぎをつくる。1本の鎖どうしを網の目にするようなイメージだ。これによってペプチドグリカンがつくられる。

 

 

塩酸バンコマイシン点滴静注用(バンコマイシン塩酸塩)はN-アセチルムラミン酸の末端であるD-Ala-D-Alaに結合することによって、細胞壁の合成を阻害する。

 

 

ちなみにこの末端のD-Alaが別のものになってしまい、塩酸バンコマイシン点滴静注用(バンコマイシン塩酸塩)が結合出来なくなってしまった状態が、耐性化である。

 

用法用量

成人
  • 1回0.5g6時間ごと又は、1回1g12時間ごとに分割して、60分以上かけて点滴静注する。適宜増減。

 

高齢者
  • 1回0.5g12時間ごと又は、1回1g24時間ごとに、60分以上かけて点滴静注する。適宜増減。

 

小児、乳児
  • 1日40 mg/kgを2〜4回に分割して、それぞれ60分以上かけて点滴静注。新生児には、1回投与量を10〜15mg/kgとし、生後1週までの新生児に対しては12 間ごと、生後1ヵ月までの新生児に対しては8時間ごとに、それぞれ 60分以上かけて点滴静注。

 

急速な静注を行うと、ヒスタミンが遊離によるレッドネック症候群が起こることがあるため、60分以上かけて点滴静注する。

 

TDMなどの目安
  • Area under the time-concentration curve (AUC) /小発育阻止濃度(MIC)≧400を目標に
  • 定常状態に達していると考えられる4〜5回投与直前(3日目)に採血する。
  • 初回の目標トラフ値は10〜15μg/mL。効果不良例や複雑性感染症では、TDM評価後に改めて15〜20μg/mLを目標。
  • 初日から高い血中濃度にしたり、より早く定常状態のトラフ値に近づけるために、腎機能正常(eGFR≧90)であれば25〜30mg/kgを目安に負荷投与(ローディングドーズ)する。
  • 透析患者は初回のみ20〜25mg/kg負荷投与(ローディングドーズ)し、透析後7.5〜10mg/kgを目安に投与。

 

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重大な副作用

  • アナフィラキシー、急性腎不全、間質性腎炎、汎血球減少、無顆粒球症、血小板減少、中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson 症候群)、剥脱性皮膚炎、薬剤性過敏症症候群、 第8脳神経障害、偽膜性大腸炎、肝機能障害、黄疸など

 

経験したこと

MRSA(methicillin-resistant Staphylococcus aureus);メチシリン耐性黄色ブドウ球菌の勉強会に参加した。内容をまとめておく。

 

MRSAは病院で仕事をしていれば、一度は耳にする耐性菌の1つである。出てくると、やっかいである。

 

MRSAに使える薬として、バンコマイシン、テイコプラニン、リネゾリド、アルベカシン、ダプトマイシンなどがあり、作用機序の違いももちろんあるが、主に以下のような違いもある。

 

  • 適応症
  • TDMの有無
  • 各薬剤の特徴

 

適応症

詳細は最新の添付文書などを参考して頂きたい。

 

アルベカシンの適応症は、敗血症・肺炎に限定されている。これは当時、MRSAの薬が少なく、医療現場から早急な承認を求められていたことによるそうだ。

 

またダプトマイシンは肺炎に適応はない。これは、肺では不活化してしまい効果が減弱してしまうことによるそうだ。

 

 

TDMの有無

バンコマイシン、テイコプラニン、アルベカシンはTDMが必要とされている。

 

各薬剤の特徴
  • バンコマイシン;適応症も広く、標準的。
  • テイコプラニン;腎障害が軽度。
  • アルベカシン;MRSAの中で唯一のアミノグリコシド系。作用は殺菌的。
  • リネゾリド;臓器移行性が良く、内服薬もある。
  • ダプトマイシン;グラム陽性菌にも効く。作用は殺菌的。

 

 

全然関係ないけど、TDMの依頼って忙しいときに限ってくる気がするのは、偶然なのでしょうか・・・

 

まとめ

  • 塩酸バンコマイシン点滴静注用(バンコマイシン塩酸塩)はグリコペプチド系で、細菌の細胞壁の合成を阻害する。
  • 塩酸バンコマイシン点滴静注用(バンコマイシン塩酸塩)は抗MRSA薬の1つで、適応症も広く、標準的な薬。
  • 抗MRSA薬は、適応症、TDMの有無、各薬剤の特徴などの違いがある。

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