Sponsored Link
脈拍の基本、頻脈と徐脈
脈拍は、心臓が収縮することで発生した拍動を、体表面の動脈で触れるものです。測定される動脈は、基本的には橈骨動脈ですが、状態に応じて、頸動脈や上腕動脈、足背動脈などでも測定されます。
脈拍は1分間あたりの拍動が測定されます。脈が規則正しく拍動している場合には、時間短縮のため10秒測定して6倍、あるいは15秒測定して4倍などして1分あたりの値を求めることが多いと思います。しかし、不整脈などがある場合は、省略したりせずきちんと測定することが大事です。
脈拍は心臓の拍動がもととなるので、主に調節に関わるのは、心臓にある洞房結節になります。洞房結節は、心臓の司令塔のようなもので、「速く」と命令を出せば心臓はの拍動は速くなりますし、「遅く」と命令を出せば心臓の拍動は遅くなります。
頻脈
一般的に脈拍数が100回/分以上のときに頻脈と呼ばれます。しかし、カルテを見ていると脈拍数が100〜120回/分というのは、それなりに見かけます。頻脈はどれくらいが緊急事態なのでしょうか?それを考えるには血圧との関係を知る必要があります。
脈拍と血圧の関係
血圧はおおよそ以下の式が成り立ちます。
血圧=心拍出量×末梢血管抵抗
この式から、血圧は心拍出量と末梢血管抵抗に影響を受けるということがわかります。ここでは、さらに心拍出量について着目します。
心拍出量と心拍数の関係は、比例関係ではありません。わかりやすいように例を考えてみます。
今回は自転車で空気を入れる場面をイメージしてください。あなたはどのようにして自転車に空気を入れますか?おそらく凄くゆっくり入れたり、凄く速く入れたりしないと思います。一番いい速さでレバー部分を上下していると思います。
このイメージを持ちながら、もう一度考えてみましょう。空気入れから出る空気を心拍出量、空気を入れる動作を心拍数とします。心臓についても、心拍数が遅すぎてもダメだし、速すぎても多くの血液を送り出すことが出来ません。最適な速さのときに一番心拍出量が得られるのです。
心拍数は140回/分を超えると、心拍出量が下がります。心拍出量が下がるということは、先ほどの式だと血圧も下がることになります。よって、頻脈については140回/分以上というのがキーワードとなります。
頻脈の治療薬は、別ページ、頻脈に使われる注射薬の違い、抗不整脈薬、アデホス-Lコーワ、ジゴシンで簡単ではありますが、まとめています。
頻脈の原因
頻脈の原因は主に以下のものがあります。
- 出血・発熱・脱水、低酸素、血圧低下;交感神経が活性化することによる。
- 甲状腺機能亢進症;甲状腺ホルモン(トリヨードチロニン、チロキシン)が心筋のカテコラミンへの感受性を高める。
- 頻脈性不整脈;心房性期外収縮、発作性上室頻拍、心房粗動、心房細動、心室性期外収縮、心室頻拍、心室粗動、心室細動など
- 抗コリン薬、β刺激薬、プレタール(シロスタゾール)などの薬
Sponsored Link
Sponsored Link
徐脈
一般的に、脈拍数が60回/分以下のときに徐脈と呼ばれます。徐脈においても、頻脈と同じように50回/分前後の値をカルテを見かけます。徐脈はどれくらいが緊急事態なのでしょうか?徐脈に関してはペースメーカーの適応について知る必要があります。
ペースメーカーの適応
洞不全症候群や房室ブロックの治療法の1つにペースメーカーの埋め込みがあります。司令塔である洞結節からの指令がうまくいっていない状態で、洞結節の代わりに人工的な司令塔を埋め込みます。このペースメーカーを埋め込みを考慮する項目の1つに、脈拍が40回/分未満というものがあります。40回/分ではペースメーカーを入れてでも、人工的に脈拍を整えないと循環が保てなくなる可能性があるということです。
よって、徐脈の緊急事態の指標は40回/分未満というのが、キーワードになります。
徐脈に使われる薬に関しても、別ページ、徐脈に使われる注射薬、アトロピンで簡単ではありますが、まとめています。
徐脈の原因
徐脈の原因は主に以下のようなものがあります。
- 睡眠;副交感神経の活性化
- スポーツ心臓;日常のトレーニングにより、少ない脈拍数でも十分な拍出量が得られる。
- 髄膜炎、脳圧亢進;頭蓋内圧が上がると脳血液循環障害が起こって、代償的に末梢血管抵抗が増え全身の血圧があがる。血圧が上がると、血圧を下げようとして心拍数の低下を起こす。
- 甲状腺機能低下症;頻脈のときと逆のメカニズム
- 徐脈性不整脈;洞不全症候群、房室ブロックなど
- 強心剤、β遮断薬、カルシウム拮抗薬などの薬
まとめ
- 脈拍は心臓の拍動を体表面の動脈で触れるもの
- 頻脈は、140回/分以上が緊急事態
- 徐脈は、40回/分未満が緊急事態
脈拍の基本、頻脈と徐脈 関連ページ
- バイタルサインは8つの項目をみよう
- バイタルサインは患者が生きている証です。現代の薬剤師にもバイタルサインを読む力は求められ、薬の効果や副作用により深く関われます。意識、呼吸、血圧、脈拍、体温、酸素飽和度、血糖値、尿量の項目から成り立ちます。
- 血圧の基本、高血圧と低血圧
- 血圧とは、血管にかかる圧力のことです。高血圧の緊急事態の指標として、180/120mmHg以上があります。また、低血圧の緊急事態の指標としては、収縮期血圧が90mmHg以下があります。
- 体温の基本、発熱と解熱
- 体温は、年齢、時間帯、運動、食事、性などの影響を受け個人差があります。発熱が始まると、悪寒や鳥肌が起こります。ピークでは熱感や皮膚が紅潮します。解熱に向かうと、皮膚の紅潮や発汗が見られます。
- 呼吸の基本、呼吸数と呼吸音
- 呼吸は延髄の呼吸中枢によって調整されています。呼吸数が30回/分以上や10回/分以下では緊急事態となります。また副雑音のラ音は、笛声音、いびき音、捻髪音、水泡音の4つがある。
- 意識の基本、意識障害の原因と評価
- 意識障害があると危険な状況が多いです。意識障害の評価方法として、JCSやGCSがあります。また原因をみつける方法として、アイウエオチップスがあります。意識障害や麻痺の評価は最後に行われ、まずは生命維持の対応をします。
- 酸素飽和度の基本、酸素分圧との関係
- 酸素飽和度はヘモグロビンと酸素がくっついている割合を示します。酸素飽和度が90%を下回ると、臓器障害が起こる可能性が高まります。酸素飽和度が低下する原因には、ショックや不整脈、貧血などがあります。
- 血糖値の基本、低血糖と高血糖
- ブドウ糖は、肝臓でグリコーゲンとして貯蔵され、筋肉では主にエネルギー源として使われます。低血糖も高血糖も意識障害が起こる前に対処することが、患者さんを守るうえで重要となります。
- 尿量の基本、減少と増加の原因と尿色
- 尿量は1日1500ml前後は出ていて、400ml以下を乏尿、100ml以下を無尿、3000ml以上を多尿と呼びます。尿量が減少する原因は腎前性、腎性、腎後性、サードスペースへの移行などがあります。また尿色からも様々な情報が得られます。
- アレルギーとアナフィラキシー、原因と症状と対策
- アレルギーを起こすと、様々な症状などを起こし、時にアナフィラキシーショックと呼ばれる生命の危機を起こす可能性があります。原因となるアレルゲンを摂取しないように気を付け、正しい対策をする必要があります。
- 災害現場とトリアージ、START(スタート)法とは
- 災害現場では、トリアージが行われ患者の選別が行われます。行われた証として患者にトリアージ・タッグが巻き付けられ、色によって優先順位が記されます。トリアージを行う方法の1つにSTART(スタート)法があります。
- 視診、触診、打診の基本、薬剤師でも異常に気付けることはある。
- 視診や触診や打診は、医師や看護師が基本的には行います。しかし薬剤師も視診や触診や打診の基本的なことを知っておけば、チーム医療に参加することができます。また服薬指導時に異常に気付くことができます。