意識障害の評価はJCSやGCS、原因はアイウエオチップス

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意識の基本、意識障害の原因と評価

病院に緊急でくる患者さんには意識がない人がいます。なんとなくイメージでわかると思いますが、意識がない人は危険な状況が多いです。今回は意識についてみていきます。

 

 

JCS

まずは、意識の評価項目について知りましょう。比較的カルテに使われることが多いのがJCS(Japan Coma Scale)です。JCSは、9つの評価にわかれますが、まず以下のことを抑えます。

 

  • JCSが一けた;刺激していなくても覚醒
  • JCSが二けた;刺激すると覚醒
  • JCSが三けた;刺激しても覚醒しない

 

 

これを踏まえたうえで細かい評価を覚えましょう。

 

  • JCS1(JCS-T-1);意識清明とは言えない
  • JCS2(JCS-T-2);見当識障害がある
  • JCS3(JCS-T-3);自分の名前、生年月日が言えない
  • JCS10(JCS-U-1);普通の呼びかけで開眼
  • JCS20(JCS-U-2);大きな声で体を揺さぶると開眼
  • JCS30(JCS-U-3);痛み刺激を加えつつ呼びかけを繰り返すと開眼
  • JCS100(JCS-V-1);痛み刺激に対し、払いのけるような動作をする
  • JCS200(JCS-V-2);痛み刺激で少し手足を動かす、顔をしかめる
  • JCS300(JCS-V-3);痛み刺激に反応しない

 

JCSは人によって、表記が異なることがあるのでそのことを念頭にいれておくことも大事です。例えばJCS20のことを、JCS-U-1と表記する人もいます。

 

JCSは意識障害の評価に加えてさらに以下の項目を付け足すこともあります。カルテにここまで書いてあることはほぼないですが・・・

 

  • R(restlessness);不穏
  • I(Incontinence);失禁
  • A(akinetic mutism);自発性の欠如

 

これも記載されていれば、JCS20Rなど表記されます。

 

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GCS

JCSが日本でよく使われているのに対して、世界で使われているのがGCS(Glasgow Coma Scale)です。GCSは開眼(E)、最良言語応答(V)、最良運動応答(M)の3つで点数をつけて評価されます。E1V1M1といった具合に記載されます。

 

開眼(E)

E(Eye opening)は開眼で以下のようになっています。

 

  • 4点;自発的に
  • 3点;呼びかけに応じて
  • 2点;疼痛刺激に対して
  • 1点;開眼せず

 

点数が低くなるほど、刺激が必要なことがわかります。

 

最良言語応答(V)

V(Best verbal Response)は最良言語応答で、言ってしまうと言葉がまともかどうかです。以下のようになっています。

 

  • 5点;見当識あり
  • 4点;混乱した会話
  • 3点;混乱した言葉
  • 2点;理解できない声
  • 1点;発生なし

 

5点はほぼ会話が成り立つ状態です。4点は、ここはどこですか?お名前はなんですか?が答えられるけれども、それ以外の会話が成り立ちにくい状態です。3点はそれ以下でほぼ単語だけとイメージしましょう。そこから点数が低くなるにつれて会話ができなくなります。

 

最良運動反応(M)

M(Best motor response)は最良運動反応で、運動の機能をみています。

 

  • 6点;命令に応じる
  • 5点;疼痛部位の認識ができる
  • 4点;痛みからの逃避
  • 3点;痛みに対して屈曲運動をする
  • 2点;痛みに対して伸展運動をする
  • 1点;痛みに対して全く動かさない

 

4点は痛みに対して手足を引っ込めます。3点は痛みに対して胸の前で腕をМの字の形に合わせるような動きがみられます。これは大脳皮質に障害が起きたときに見られる反応です。2点は痛みに対して手足が伸びる動きがみられます。これは中脳などに障害が起きたときに見られる反応です。

 

刺激の方法

呼びかけ刺激

普通の声で名前を呼びます。反応がなければ、さらに大きい声で呼びます。覚醒したときに、見当識障害があるのか、ないのかもついでに確認すると、より評価できるでしょう。

 

痛み刺激
  • ペンなどを親指の爪の付け根に押し付ける。
  • 眼窩上縁の内側を圧迫する。
  • 耳下のくぼみを同時に圧迫する。

 

 

意識障害の原因

意識障害は様々な原因によって引き起こされます。原因を覚える上で「アイウエオチップス」という有名な語呂合わせがあります。

 

  • ア;Alcohol(アルコール中毒)
  • イ;insulin(インスリン)
  • ウ;Uremia(尿毒症)
  • エ;Encephalopathy(脳症)、Endocrinopathy(内分泌疾患)、Electrolytes(電解質)
  • オ;Oxygen(低酸素)、Opiate(薬物中毒)
  • T;Trauma(外傷)、Tumor(腫瘍)、Temperature(体温異常)
  • I;Infection(脳炎、髄膜炎、敗血症)
  • P;Psychiatric(精神疾患)、Porphyria(ポルフィリア)
  • S;Stroke(脳卒中)、Shock(ショック)、Seizure(痙攣)、Syncope(失神)

 

一部捕捉を。

 

インスリンは、低血糖や高血糖、ケトアシドーシスなどで起こる。

 

尿毒症は腎不全末期の症状で、体内の老廃物が捨てられないことによる。

 

脳症には高血圧性や肝性脳症、内分泌疾患には粘液水腫や甲状腺クリーゼなどがある。

 

ポルフィリアはヘム合成経路(ポルフィリン合成経路)の酵素が機能しない疾患。その結果、ヘムの前駆体が体内にたまり、排泄されるようになる。ポルフィリンはギリシャ語で紫の色素を意味するそうで、患者の便や尿が紫色になる。

 

麻痺を評価するための簡易テスト

 

バレー兆候(Barre’s sign)

中枢性の運動障害による麻痺があるかのテストです。上肢と下肢の2つの試験法があり、脳出血や脳梗塞などで陽性反応となります。

 

上肢の試験法;両腕を前ならえのようにしてもらい、手のひらを天井の方に向けてもらいます。両目を閉じて、そのままの状態を維持するように伝えて、観察をします。手のひらが返り下降してくると陽性となります。

 

 

下肢の試験法;うつ伏せで寝てもらい、両方の脚の膝から下を90°もしくは45°あげて維持してもらいます。この時に両足はくっつかないように(くるぶしはくっつけないように)します。維持ができなければ陽性です。

 

 

ミンガッツィーニ徴候(Mingazzini’s sign)

同じく中枢性の運動障害による麻痺があるかのテストです。バレー兆候がうつ伏せだったのに対して、ミンガッツィーニはあお向けで行います。

 

試験法;あお向けで寝てもらい、足をあげてもらい、膝から下を90°まげてもらい維持してもらいます。丁度こういう感じです→(足) ̄|_O(頭)維持できなければ陽性です。

 

 

ドロッピングテスト

運動麻痺があるかのテストです。これも上肢と下肢の2つあります。

 

上肢;患者があお向けに寝た状態で、腕を持ち上げて、手を放します。麻痺があると、抵抗なく落ちます。

 

 

下肢;患者があお向けに寝た状態で、膝を持って立たせます。こういう感じです→(頭)O_/\(足)この状態で支えた手を放します。麻痺があると、抵抗なく外側や内側に足が倒れます。

 

 

意識障害の対応

意識障害がある場合には、危険な状態が多いため、優先順位をもって対応されていきます。意識障害や麻痺の評価は最後で、以下のように進められることが多いです。

 

  1. 呼吸・循環の安定。バイタルサインのチェック。
  2. 静脈確保
  3. 採血、血糖値
  4. 意識障害、麻痺の評価

 

まとめ

  • 意識障害はJCSやGCSで評価される。
  • 意識障害の原因としてアイウエオチップスがある。

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