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前回の農薬の毒性、構造式もひもづけて覚えよう。では農薬の毒性について見てきました。今回はその毒性がどれくらい強いのかを評価する指標について見ていきたいと思います。
薬理でLD50を学んだように、化学物質は一定以上の用量から毒性が出始めてきます。逆にそれよりも少ない用量では毒性が出ないということも言えます。この境界線の量をNOAEL(no observed adverse effect level)と呼び、無毒性量と訳されます。NOAELの単位はmg/kg/日です。
先ほどのNOAELを正確に知るには、動物ではなくヒトで実験を行わないと正しいデータが得られません。しかし、倫理的にヒトに毒物を投与してデータを集めるというのは問題となってしまいます。そのため動物を用いた実験から毒性を評価して、そこからヒトならこれくらいまでなら大丈夫だろうという量を求めていきます。
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このヒトへの補正をする係数を安全係数と呼びます。一般的には動物の種差(10倍)に個体差(10倍)を掛け合わせた100を安全係数とします。先ほどのNOAELを安全係数で割ったものがADIと呼ばれるものです。ADIはacceptable daily intakeの略で、1日許容摂取量と訳されます。先ほどのNOAELとADIと安全係数の関係は
となります。
ADIはヒトが一生涯摂取し続けても健康に有害な影響がないと考えられる摂取量のことであるため、食品添加物や農薬などに対して設定されています。ADIに対してTDI(tolerable daily intake)は、耐容1日摂取量と訳され、ダイオキシンなど本来ヒトが意図的に摂取しないようなものに設定されています。
VSDはvirtually safe doseの略で、実質安全量と訳されます。ヒトが一生涯を通して摂取しても危険度がある限られた確率以下にとどまる量と定義されていて、発がん性物質などに設定されています。
例えばタバコを人生で1本しか吸わなかったとしたら、それが原因で癌となる確率は極めて少ないでしょう。しかし、タバコを長年吸い続けていくと癌になってしまう確率が上がっていきます。このような形でVSDは使われ、一般的に1/1000000の確率が使われます。