農薬の毒性、構造式もひもづけて覚えよう。

農薬の毒性、構造式もひもづけて覚えよう。

農薬には、有機塩素系農薬、有機リン系殺虫剤、カルバメート系殺虫剤、有機フッ素剤、ジピリジリウム系除草剤、含リンアミノ酸系除草剤などがあります。これらの毒性と構造式をひもづけて覚えることが大事です。

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農薬の毒性、構造式もひもづけて覚えよう。

前回のメチル水銀、カドミウム、ヒ素、クロム、スズ、鉛の毒性では重金属の毒性についてみました。今回は農薬の毒性について見ていきたいと思います。

 

 

農薬には様々な毒性や機序がありますが、今回見ていくのは以下の農薬です。

 

  • 有機塩素系農薬
  • 有機リン系殺虫剤
  • カルバメート系殺虫剤
  • 有機フッ素剤
  • ジピリジリウム系除草剤
  • 含リンアミノ酸系除草剤

 

これらの農薬は農薬取締法で管理されており、農薬取締法に登録されていれば日本で使うことができますが、登録がなければ日本で使うことができません。日本で使うことができない農薬の代表例には、有機塩素系農薬、パラチオン、メタミドホスなどがあります。

 

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有機塩素系農薬

構造式の中に塩素を含む農薬です。有機塩素系農薬は、脂溶性が大きく脂肪組織へ蓄積しやすく、難分解性であり排泄されにくいため、慢性毒性が問題となります。主な作用としては、神経細胞へのK+流入やNa+流出を抑制します。

 

有機塩素系農薬には以下のようなものがあります。

 

殺虫剤
ジクロロジフェニルトリクロロエタン(DDT)

殺虫剤として使われ、名前からも構造式がイメージしやすいです。

 

 

ヘキサクロロシクロヘキサン(HCH)

こちらも名前からヘキサンに6つの塩素がついていることがイメージしやすいですが、塩素の位置によって性質が変わってきます。例えば

 

 

  • β体;脂肪中に蓄積されやすい
  • γ体;殺虫作用が強い

 

という性質を持ちます。β体はベタベタ蓄積、γ体はガンガン殺すと覚えると覚えやすいかもしれません。

 

アルドリン、ディルドリン、エンドリン

殺虫剤として使われ、その毒性はアルドリン→ディルドリン→エンドリンの順番で強くなりエンドリンが一番強くなります。これの覚え方は「アイウエオ」です。「ア」ルドリン→デ「ィ」ルドリン→「エ」ンドリンという感じです。ウとオがないのはツッコまないように。(笑)

 

クロルデン、ヘプタクロル

こちらは名前に「クロル」と入っているので、塩素系農薬に紐づけやすいです。

 

除草剤
ペンタクロロフェノール(PCP)

名前のように、フェノールに5つ塩素がついています。フェノールの水溶性から除草剤をイメージしましょう。

 

 

2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D)、2,4,5-トリクロロフェノキシ酢酸(2,4,5-T)

これらはベトナム戦争で枯葉剤として使われました。不純物にダイオキシン類が含まれていたため、人体への影響もかなりありました。これらは枯葉剤を覚えられれば除草剤に結び付けることは容易かと思います。

 

除草剤をしっかり抑えられれば、消去法で殺虫剤を選ぶことができます。

 

ざっと見たところで、塩素系農薬の覚え方を簡単にまとめておきます。名前にクロルやクロロと入っていればわかるのですが、それ以外は塩素系と結び付けるのが難しいです。そこで、塩素系農薬はおおまかに以下の3つで覚えられます。

 

  • アルファベット3文字の農薬は、基本塩素系(DDT、HCH)
  • 2,4-などの数字のものは塩素系(2,4-D、2,4,5-T)
  • 〜ドリン(アルドリン、ディルドリン、エンドリン)

 

有機リン系殺虫剤

神経伝達物質であるアセチルコリンはコリンエステラーゼによって分解されます。有機リン系殺虫剤によりコリンエステラーゼが阻害されると、アセチルコリンの濃度が高まり副交感神経や運動神経が過剰に働きます。

 

有機リン系殺虫剤は名前にあるようにリンを含み、基本的にチオリン酸エステル(P=S)が、シトクロムP450によってオキソン型(P=O)となります。コリンエステラーゼはセリン残基を持ちますが、オキソン体はセリン残基の水酸基にリン酸エステル結合してコリンエステラーゼを阻害します。

 

 

有機リン系殺虫剤の解毒薬に2-PAM(2-ピリジンアルドキシムメチオダイド)があります。これはコリンエステラーゼと有機リン系殺虫剤のリン酸エステル結合を分解することで解毒作用を示します。2-PAM以外にもアトロピンが解毒薬として使われます。アトロピンはアセチルコリンと拮抗することで対症療法として使われます。

 

有機リン系殺虫剤には以下のようなものがあります。

 

パラチオン、フェニトロチオン、マラチオン、クロルピリホス

これらは構造式内にP=Sを含みます。クロルピリホスはシロアリ駆除剤として使われ、シックハウス症候群の原因と言われています。

 

ジクロルボス、メタミドホス

これらは構造式内にP=Oを含みます。つまり始めからオキソン体なのでP450の代謝を必要としません。メタミドホスは過去に中国の冷凍餃子から検出されて問題となりました。

 

有機リン系殺虫剤をざっと見たところで、また覚え方です。

 

  • 〜チオンときたらP=Sがある(パラチオン、フェニトロチオン、マラチオン)
  • 〜ホス、ボスときたらPをもつ(クロルピリホス、ジクロルボス、メタミドホス)

 

カルバメート系殺虫剤

カルバメート系殺虫剤も、コリンエステラーゼを阻害することで作用します。こちらは、コリンエステラーゼのセリン残基をカルバモイル化して阻害します。有機リン系殺虫剤に似ているじゃないかと思いますが、大きく2つ違うところがあります。

 

  • 有機リン系殺虫剤のコリンエステラーゼ阻害は不可逆的、カルバメート系殺虫剤は可逆的
  • 有機リン系殺虫剤の解毒薬として2-PAMは有効だが、カルバメート系殺虫剤には無効

 

ここをしっかりおさえましょう。ちなみにアトロピンはどちらでも解毒剤として使えます。

 

カルバメート系殺虫剤の代表例にはカルバリルがあります。

 

有機フッ素剤

有機フッ素剤の代表例にはモノフルオロ酢酸ナトリウムがあり、これは殺鼠剤として使われます。モノフルオロ酢酸ナトリウムは体内でモノフルオロクエン酸となって、TCA回路のアコニターゼを阻害します。

 

 

覚え方は、「フッソ、サッソ、フッソ、サッソ・・・・・」と覚えられるまで繰り返してください。多分そのうち覚えます(笑)

 

ジピリジリウム系除草剤

ジピリジリウム系除草剤は、「ジ」「ピリジ」リウムということで、構造式内にピリジンを2つ持ちます。代表例には、パラコートやジクワットがあります。構造式と名前を結び付けます。パラコ「ー」トの中央部は線でつながり、ジク「ワ」ットの中央部は輪っかがあります。

 

 

パラコートは、血液から肺に選択的に取り込まれて、パラコートラジカルとなります。パラコートラジカルは酸素に電子を与えて活性酸素ができ、これが肺障害を起こします。

 

原因不明で救急に運ばれたりしたときに、苦しそうにしているため酸素吸入をしてしまうと活性酸素の材料となる酸素を与えることになってしまい、意味がないことがこの機序からもわかります。

 

含リンアミノ酸系除草剤

含リンアミノ酸系除草剤は、リンを含み、かつアミノ酸を含む除草剤です。そのアミノ酸はグリシンで、代表例にはグリホサート、グルホシネートがあります。これらは含リンとあるように、有機リン系殺虫剤と混同しがちですがコリンエステラーゼを阻害する作用はありません。なぜかというと構造式に違いがあるからです。

 

 

  • 有機リン系殺虫剤;Cが1〜2(必ず両方ついている)
  • 含リンアミノ酸系除草剤;Cが0〜1(ついていても片方のみ)

 

Cの数が増えるほど毒性(コリンエステラーゼ阻害作用)が上がるので、ここが大きな違いとなります。

 

まとめ

  • 農薬は毒性だけでなく、構造式もひもづけて覚えることが大事。

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