アブストラル舌下錠(フェンタニルクエン酸塩舌下錠)、使い方と患者選択

アブストラル舌下錠(フェンタニルクエン酸塩舌下錠)、使い方と患者選択

アブストラル舌下錠(フェンタニルクエン酸塩舌下錠)は、オピオイドμ受容体を刺激することによりがんの突出痛を抑える。従来のレスキューと比べて使用方法が煩雑なため、使い方と患者選択を間違えないようにしたい。

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アブストラル舌下錠(フェンタニルクエン酸塩舌下錠)、使い方と患者選択

由来

  • absorb(吸収する)とoral(口の)より

 

舌下錠であることと結びつけることができる。

 

特徴

  • 本邦で開発されたフェンタニルクエン酸塩の初めての舌下錠。
  • がん患者における突出痛に対して、速やかな鎮痛効果を発揮する。
  • 試験において、投与30分後に疼痛強度軽減効果および疼痛緩和効果が認められ、効果は60分後まで継続することが示された。

 

アブストラル舌下錠(フェンタニルクエン酸塩舌下錠)の作用機序はオピオイドμ受容体刺激作用によるものである。

 

オピオイド受容体は主に鎮痛に関わる受容体であり、μ(ミュー)、δ(デルタ)、κ(カッパー)といった、いくつかの種類がある。そのうちの一つであるμ受容体を刺激する。

 

アブストラル舌下錠(フェンタニルクエン酸塩舌下錠)は、キャリア粒子に、フェンタニルクエン酸塩と、崩壊剤、粘膜付着剤などが混合されている。これを舌下投与することで、舌下で崩壊し、薬剤が粘膜で保持され、吸収されるように工夫されている。

 

 

用法用量

  • 1回の突出痛に対して、100μgを開始用量として舌下投与する。 用量調節期に、症状に応じて、1回100、200、300、400、600、800μgの順に一段階ずつ適宜調節し、 至適用量を決定する。なお、用量調節期に1回の突出痛に対して1回100〜600μgのいずれかの用量で十分な鎮痛効果が得られない場合には、投与から30分後以降に同一用量までの本剤を1回のみ追加投与できる。 至適用量決定後の維持期には、1回の突出痛に対して至適用量を1回投与することとし、1回用量の上限は800μgとする。 ただし、用量調節期の追加投与を除き、前回の投与から2時間以上の投与間隔をあけ、1日あたり4回以下の突出痛に対する投与にとどめること。

 

 

その他注意事項として、「誤用防止のため、含量の異なるアブストラル舌下錠(フェンタニルクエン酸塩舌下錠)を同時に処方しない」「他のフェンタニル速放性製剤からの変更でも必ず100μgから投与を開始する」などがある。

 

 

使い方が煩雑である。医療側、患者側を含めて、使い方を間違える可能性があるので、十分な教育が必要である。文章だけでなく、図を用いて説明することで、確実な理解が必要である。

 

 

重大な副作用

  • 呼吸困難、依存性、意識障害、ショック・アナフィラキシー、痙攣など

 

経験したこと

アブストラル舌下錠(フェンタニルクエン酸塩舌下錠)を絡めた、緩和の勉強会に参加した。

 

がんによる痛みには、持続的な痛みの他に、一過性の痛みが出現することがあり、突出痛と呼ばれている。突出痛の90%は1時間以内におさまるが、患者の苦痛は大きい。

 

そんな突出痛に、アブストラル舌下錠(フェンタニルクエン酸塩舌下錠)が使われる。しかし、この薬は従来のレスキューの薬に比べて、使い方が煩雑であり、うまく使わないと痛みをコントロールできない恐れがある。

 

公演された先生の病院では、院内で運用しようと試みたが、「入院中の患者は状態が不安定であり、薬の自己管理が困難である」「安全性を重視したがために、院内ルールが煩雑すぎて処方がされない」などの問題を抱えていたそうだ。そのため、アブストラル舌下錠(フェンタニルクエン酸塩舌下錠)の外来での導入を考えたそうだ。

 

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アブストラル舌下錠(フェンタニルクエン酸塩舌下錠)を外来で導入するにあたって、以下の3点が重要となると話していた。

 

  • 患者選択
  • 十分な指導
  • 導入後の支援

 

患者選択
  • 大前提としてがん患者であり、舌下錠でのレスキューが必要であること。
  • 添付文書的な、お作法として、定時投与されている強オピオイド鎮痛剤が低用量の経験は限られている。よってそれ以上の量を使っている患者かどうか。
  • 患者自身に理解力があるか。(用法用量を正しく理解し、従来のアブストラル以外のレスキューの使い分けを理解しているか。医療者が効果を判定するための記録を正しく残せるか)

 

最初の2つは医療者側が気を付けるべきことなので、一番は患者の理解力によって判断されるだろう。

 

十分な指導

先ほどの患者の理解力に関わってくることだが、フローチャートを用いて患者に説明する。また、誰が話してもズレが生じないように、院内で統一されたフォーマットを作り、指導内容を統一させるなどの工夫がされていた。また使用記録についても院内で統一されたものを作っていた。

 

導入後の支援

初回導入1週間以内に、再診又は電話対応することで効果と使用状況を追っているそうだ。また、常に緩和ケアチームに直接つながる電話番号を伝えて、相談できる体制を整えているそうだ。

 

説明を聞いて、大病院であれば、人数や体制が整えられるかもしれないが、人数が少なめの中小規模だとそこまでの手厚いサポートは厳しそうな気がした。だが、患者選択さえ間違えなければレスキューの武器が増えることも確かだ。

 

当院でも、アブストラル舌下錠(フェンタニルクエン酸塩舌下錠)は院内で処方されるが、効果的に使えているか謎なときがある。患者選択が本当に正しくされているのか、みていきたい。

 

まとめ

  • アブストラル舌下錠(フェンタニルクエン酸塩舌下錠)はオピオイドμ受容体を刺激することで、がんの突出痛に使われる。
  • 1回の突出痛に対して、効果不十分であれば、30分以降に追加投与可能。突出痛に対して1日4回まで使用できる。
  • 使い方が煩雑なため、正しく使用できる患者を選んで使うことが重要。

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