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薬は病気を治すために有効な作用もありますが、副作用もあります。そして、医薬品が適正に使われて生じた副作用のうち、被害を食い止めるための対策が十分行われなかったり、あるいは対応が遅れたことによって被害が拡大し、社会的問題になったものを薬害と呼びます。
薬剤師は薬害が起こらないように監視しなくてはなりません。今回は過去に起こった以下の薬害についてみていきたいと思います。
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ペニシリンによるアナフィラキシーショックで100人以上亡くなっていましたが、特に東京大学の教授が亡くなったことが新聞で報道されて世間に認知されました。
ペニシリンショック死事件の結果を受けて、ペニシリン製剤の「使用上の注意」に使用前に既往歴の問診や応急処置の準備を行うように義務付けられるようになりました。
サリドマイドは発売当初副作用も少ない安全な睡眠薬とされ、妊婦の不眠症やつわりの苦痛改善にもちられていました。しかし、サリドマイドを使った妊婦から四肢の発達不全や未発達な状態である四肢奇形児(アザラシ肢症)が生まれるということが起きました。
サリドマイド薬害の結果を受けて、新薬申請時の動物による催奇形性試験の実施が義務付けられるようになりました。
キノホルムはアメーバ赤痢の治療薬として用いられましたが、安易に投与されたキノホルムによって、亜急性脊髄視神経末梢神経症(Subacute Myelo-Optico Neuropathy;SMON)が起こりました。スモンは下痢や腹痛を伴い、次第に足、腰、胸がしびれ、視力低下などの症状を引き起こしました。
スモン事件の結果を受けて、医薬品副作用被害救済基金が設立され、有効性安全性の確保を図るために薬事法改正が行われました。
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染したと思われる供血者からの血液を原料に作られた血液凝固因子製剤を加熱処理せず、血友病患者などに使ったことによって薬害エイズが起こりました。
薬害エイズの結果、感染症症例報告が義務付けられました。また薬害C型肝炎の救済処置がとられました。
ソリブジンは帯状疱疹に使われていましたが、抗がん剤のフルオロウラシル(5-FU)の代謝酵素を阻害してしまうため、無顆粒球症などの重篤な血液障害を引き起こし被害者を出しました。他の薬害では単剤のことが多かったのに対して、ソリブジン事件では併用薬による薬害のため医薬品の同時併用の危険性が認識されました。
ソリブジン事件の結果、緊急安全性情報(イエローレター)が配布されました。その他にも添付文書の警告や禁忌に特に注意の必要のある内容を記載するなどの対応がなされました。
クロイツフェルト・ヤコブ病は脳外科手術により移植されたヒト乾燥硬膜から感染し、脳に異常なたんぱく質(ブリオンタンパク)が蓄積して脳神経細胞が障害されました。クロイツフェルト・ヤコブ病は、視覚異常、歩行障害などから始まり、身体の麻痺、意識障害などの経て、全身衰弱、肺炎などで死に至るという症状を引き起こしました。
医原性クロイツフェルト・ヤコブ病はヒト乾燥硬膜が原因で、薬の副作用ではありませんでしたが医療機器に対する危険性の認識が低いことが浮き彫りとなりました。
医原性クロイツフェルト・ヤコブ病の結果、生物由来製品に関する規制、感染症定期報告などの安全確保措置がとられました。その他にも生物由来製品感染等被害救済制度が作られました。