芳香族の反応3、求核置換反応とsandmeyer(ザンドマイヤー)反応

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芳香族の反応3、求核置換反応とsandmeyer(ザンドマイヤー)反応

前回のピリジンとピロール、ベンゼンとの反応性の違いまでは芳香族の求電子置換反応を見てきました。今回は求核置換反応の代表例としてsandmeyer(ザンドマイヤー)反応を見ていきます。

 

 

sandmeyer(ザンドマイヤー)反応の前にいくつか下準備です。まずは求核置換反応とベンゼンジアゾニウム塩について見ていきましょう。

 

求核置換反応

求電子試薬は電子不足でしたが、逆に陰イオンや非共有電子対などで電子過剰のものを求核試薬と言います。求核試薬の例には、H-、HO-、NC-、H2O、NH3などがあります。

 

求核試薬は電子過剰であるため、今度は電子不足のものと反応しやすく、これを求核置換反応と呼びます。求核置換反応のイメージとしては求電子置換反応の逆ですね。

 

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ベンゼンジアゾニウム塩の合成

sandmeyer(ザンドマイヤー)反応ではベンゼンジアゾニウム塩が使われます。詳細は割愛しますが、ベンゼンジアゾニウム塩は以下のように作られます。

 

 

まずHNO3とH2SO4でニトロ化して、ニトロベンゼンを作ります。

 

 

次に、SnとHClでニトロベンゼンを還元すると、アニリンができます。

 

 

最後にNaNO2とHClでアニリンをジアゾ化すると、ベンゼンジアゾニウム塩ができます。ベンゼンジアゾニウム塩は窒素が離脱しやすいです。

 

このベンゼンジアゾニウム塩を使い、sandmeyer(ザンドマイヤー)反応が行われます。

 

sandmeyer(ザンドマイヤー)反応

先ほどのベンゼンジアゾニウム塩に求核試薬が攻撃して、代わりに窒素が抜けます。特に銅塩(例えば、CuCl、CuBr、CuCNなど)による求核置換反応をsandmeyer(ザンドマイヤー)反応と言います。「ど」うえんと、ザン「ド」マイヤーと「ド」つながりで意識すると覚えやすいかもしれません。

 

 

銅塩以外の求核試薬の代表例には、以下のようなものがあります。

 

  • KI;Iが導入される
  • HBF4;Fが導入される
  • H2O;OHが導入される

 

sandmeyer(ザンドマイヤー)反応を用いることで、様々な置換基をベンゼンに導入することができるため、とても有用な反応です。

 

まとめ

  • 陰イオンや非共有電子対などで電子過剰のものを求核試薬という。
  • ベンゼンジアゾニウム塩は窒素が離脱しやすい。
  • ベンゼンジアゾニウム塩を利用したsandmeyer(ザンドマイヤー)反応を用いることで、様々な置換基をベンゼンに導入することができる。

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結合角ひずみ、ねじれひずみ、立体ひずみなどが生じるため、シクロアルカンの中で最も安定なのはシクロヘキサンです。シクロヘキサンの場合、アキシアルよりエクアトリアルの方が安定。
アルケンの反応1、syn付加とanti付加
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電子求引基と電子供与基、カルボカチオンとカルボアニオンの安定性
カルボカチオンは電子供与基がつくと安定化し、電子求引基がつくと不安定となります。カルボアニオンは電子求引基がつくと不安定化し、電子求引基がつくと安定化します。
アルケンの反応2、マルコフニコフ則とカルボカチオン
アルケンにHXが結合する時にHは水素が多く結合している炭素にくっつくことをマルコフニコフ則と言います。逆マルコフニコフ則ではHは水素が少ない方に結合します。
アルケンの反応3、アルコールの作り方
アルケンのヒドロホウ素化-酸化ではsyn付加かつ逆マルコフニコフ則でアルコールが作れます。オキシ水銀化-還元法ではanti付加かつマルコフニコフ則でアルコールが作れます。
アルケンの反応4、アルデヒドやカルボン酸の作り方
オゾン酸化でオゾニドを作り、その後ジメチルスルフィドを用いた場合、アルデヒドやケトンが得られます。過マンガン酸カリウム酸化は徹底的に酸化して酸性条件ではカルボン酸まで作ることができます。
ブタ-1,3-ジエンへのハロゲン化水素の付加
ブタ-1,3-ジエンはs-trans配座の方が安定です。ブタ-1,3-ジエンへのハロゲン化水素の付加はマルコフニコフ則や共鳴などにより2つの可能性があり、温度によって生成物が異なります。
アルケンの反応5、Diels-Alder(ディールズアルダー)反応
Diels-Alder(ディールズアルダー)反応の共役ジエンはs-cis配座が関わります。Diels-Alder(ディールズアルダー)反応はエンド則に一般的には従ったものができます。
アルキンの反応1、アルキル化反応
カルボアニオンの安定性は、アルキン>アルケン>アルカンとなります。アルキンに強塩基を反応させることで、カルボアニオンを作り、第一級ハロアルカンに反応させることでSN2置換反応が起こりアルキル化反応が起こります。
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芳香族の反応1、求電子置換反応、ニトロ化、スルホン化、ハロゲン化
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ハロゲン化アルキル、SN1反応とSN2反応
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