質量スペクトルの読み方、例題編

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質量スペクトルの読み方、例題編

前回の質量分析法の質量分析計と質量スペクトルでは、質量スペクトルの基本的なことを見ました。今回は質量スペクトルの読み方について例題を見ながら解いていきたいと思います。

 

 

さっそく例題にいきましょう!!

 

例題1

次の図は、C9H10O2の質量スペクトルである。この質量スペクトルは次のア〜ウのどれか?ただし、スペクトルの上に書いてある数字はm/zを表し、回答の判断に関係のない細かいピークは省略している。

 

 

 

一置換ベンゼン誘導体ということでm/z77にピークがあります。77はC6H5というのは覚えておくと質量スペクトルでは役立ちます。そしてこれはア〜ウ全てに共通しているのでヒントにはなりません。

 

さて次に注目するべきはm/z43です。Cは12、H1、Oは16であり、43と奇数であることから、Hの部分は奇数個必要であることが推測できます。そこで選択肢ア〜ウまでを見てみると全てCH3が入っていることがわかります。ここからCH3の15を43から引くと、残りは28となります。再び選択肢ア〜ウの構造式のCH3の隣を見てみると、アのCOがちょうど28であるため、このことから答えはアと判断できます。

 

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例題2

次の図は、以下のア〜オのいずれかの質量スペクトルである。この質量スペクトルはどの化合物の構造式か答えよ。ただし、スペクトルの上に書いてある数字はm/zを表し、回答の判断に関係のない細かいピークは省略している。

 

 

 

まず選択肢ア〜オを見てみると、全ての構造式に臭素(Br)や塩素(Cl)を含まれていることがわかります。そのため、臭素(Br)や塩素(Cl)を含む場合のルールをまず考えます。

 

分子イオンピークのところを見ると、強度比が約1:1のピークが現れています。これは臭素を含んでいるサインと読み取れるので、臭素を含むエかオのどちらかと判断することができます。

 

またその他にも分子イオンピークが170なので、エは170、オは184となるため、これだけでエが答えとわかってしまうのですが、せっかくなのでもう少し質量スペクトルを見てみましょう。

 

基準ピークは91です。これもエとオを比較してみると、それぞれC6H5とBrは一緒でそれ以外が違っています。エはC6H5CH2であり、これはm/z91です。またオはC6H5COであり、これはm/z105です。91にピークがあり、105にピークがないことからもエが答えであることがわかります。

 

以上より答えはエとなります。

 

質量スペクトルは例によって習うより慣れよなので、多くの問題を解いて身につけるようにしましょう。

 

まとめ

  • 質量スペクトルは習うより慣れよ(笑)

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擬1次反応には、エステルの特殊酸触媒と特殊塩基触媒の反応などがあります。特殊酸触媒と特殊塩基触媒の影響を受ける医薬品では、kH[H+]=kOH[−OH]の時が最も安定となります。
活性化エネルギーと反応エンタルピー
活性化エネルギーが大きいほど反応が進みにくく、小さいほど反応が進みやすいです。触媒は活性化エネルギーに影響を与えて、反応エンタルピーには影響を与えないということができます。
Arrhenius式(アレニウス式)とグラフ
Arrhenius式(アレニウス式)は、反応速度と温度の関係を表した式です。アレニウスプロットではそのグラフから薬の安定性などがわかります。
酸と塩基の基本
酸と塩基のには、Arrhenius(アレニウス)の定義、Lewis(ルイス)の定義、BronstedーLowry(ブレンステッド・ローリー)の定義などがあります。弱酸においてはKa=[A−]・[H+]/[HA]が成り立ち、Kaを酸解離定数と言います。
弱酸のpHの計算
pH=−log[H+]で表されます。強酸の場合は、全て解離するためpHの計算はやりやすいですが、弱酸の場合は[H+]=√(Ka・C)で計算する必要があります。
Henderson-Hasselbalch(ヘンダーソンーハッセルバルヒ)の式と計算
あるpHのおける弱電解質の分子形やイオン形の割合を求めるのがHenderson-Hasselbalch(ヘンダーソンーハッセルバルヒ)の式です。Henderson-Hasselbalch(ヘンダーソンーハッセルバルヒ)の式を使って計算できるようになりましょう。
真度と精度の違い
真度は真の値からのかたよりの程度です。精度は均質な検体から採取した複数の試料を繰り返し分析して得られる一連の測定値が互いに一致する程度です。真度と精度の違いを間違えないようにしましょう。
容量分析法、標定と滴定
容量分析法には中和滴定、非水滴定、キレート滴定、沈殿滴定、酸化還元滴定などがあり標準液、標準試薬、指示薬が決まっています。
直接滴定と逆滴定、対応量の計算
直接滴定と逆滴定によって、対応量を計算します。対応量とは用いた標準液1mLに対応する資料の量(mg)のことで、おちついて計算できるようにしましょう。
中和滴定のグラフ
中和滴定は酸性医薬品や塩基性医薬品を中和反応を利用して滴定する方法で、指示電極にはガラス電極が使われます。中和滴定の指示薬には、メチルレッド、メチルオレンジ、フェノールフタレインなどがあります。
非水滴定、キレート滴定
非水滴定は、きわめて弱い酸や塩基を滴定します。キレート滴定はエチレンジアミン四酢酸二水素ナトリウム(EDTAナトリウム)と金属イオンは1:1で反応します。
沈殿滴定、Fajans法(ファヤンス法)、Volhard法(フォルハルト法)
沈殿滴定は銀を利用して、Fajans法(ファヤンス法)やVolhard法(フォルハルト法)などがあります。沈殿滴定では銀イオンがハロゲン化物(フッ素以外)、シアン化物イオン(CN-)、チオシアン酸イオン(SCN-)などと反応します。
酸化還元滴定、ジアゾ滴定
酸化還元滴定では、デンプン試薬が指示薬として使われるが、過マンガン酸カリウムについてはそれ自体が指示薬として働きます。ジアゾ滴定は酸化還元滴定の1つです。
クロマトグラフィーの原理と種類
クロマトグラフィーの原理は、試料の固定相への親和性の違いによって分離します。クロマトグラフィーの移動相固定相による分類では、液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィーなどがあります。
保持時間(tR)、分離度(Rs)、分離係数(α)、シンメトリー係数(S)、カラム効率
クロマトグラムの指標には、保持時間(tR)、分離度(Rs)、分離係数(α)、シンメトリー係数(S)、カラム効率などがあります。分離度(Rs)と分離係数(α)の違いは、ピーク幅があるかどうかです。
クロマトグラフィーの定性と定量
クロマトグラフィーの定性には保持時間が使われます。クロマトグラフィーの定量は、ピーク高さやピーク面積を用いる。方法には内標準法、絶対検量線法、標準添加法などがあります。
ガスクロマトグラフィーと検出器
ガスクロマトグラフィーの検出器には、熱伝導度検出器、水素炎イオン化検出器、電子捕獲検出器、炎光光度検出器、アルカリ熱イオン化検出器などがあります。
液体クロマトグラフィーと種類
液体クロマトグラフィーの種類は固定相により吸着クロマトグラフィー、分配クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルクロマトグラフィーなどにわけられる。
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標識するイムノアッセイには、ラジオイムノアッセイ(RIA)、エンザイムイムノアッセイ(EIA)、蛍光イムノアッセイ(FIA)、発光イムノアッセイ(LIA)などがあります。
電気泳動法の原理
電気泳動法の原理は、電荷のある物質を電極の間に入れて電圧をかけることで分離を行います。イオンの電荷により分離する電気泳動法には、等電点電気泳動法、等速電気泳動法などがあります。
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