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前回の核磁気共鳴スペクトル(NMR)の原理では、核磁気共鳴スペクトル(NMR)の基本について見ました。今回は、1HNMRについて見ていきたいと思います。
1HNMRスペクトルでは縦軸が相対強度、横軸が化学シフトのグラフから水素核の状態や水素の数に関する情報が得られます。
縦軸の相対強度の基準物質には一般的にはテトラメチルシラン(TMS)が用いられます。横軸の化学シフトは、様々なものによって影響を受けます。
外部磁場の中に入れた原子核は、ある大きさの周波数の電磁波を吸収してシグナルを示しますが、電子密度があると守られて核が実際に受ける磁場が小さくなります。これを遮へいと言います。
1H核周辺の電子による遮へいが大きいと化学シフトが小さくなり、1H核周辺の電子による遮へいが小さいと化学シフトは大きくなります。
なおグラフの右側を高磁場側、左側を低磁場側と言います。
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電気陰性度が高い原子が存在すると、その原子が周囲の水素から電子を引っ張り、水素原子核のまわりの電子密度が減るため、化学シフトを低磁場側へ移動させます。
覚えておくべきものは以下の6つです。
1HNMRスペクトルのグラフを読むうえでは以下の3つが重要となってきます。
シグナルの面積は、等価なプロトンの数に比例します。シグナルの面積は一般に積分曲線で表されます。
例えば、CH3-CH2-CH2-Brを見ると、次のカップリング(スピンースピン結合)も含めると以下のような1HNMRスペクトルとなります。
カップリング(スピンースピン結合)が、1HNMRを読むうえで最も重要と言っても過言ではありません。隣接する原子につく等価な水素原子の数をn個とすると、(n+1)個に分裂します。つまりシグナルの数が1であれば、隣の原子につく水素は0個、シグナルの数が2であれば、隣の原子につくは1個というような形になります。
なお、この分裂の間隔をスピンースピン結合定数(J値)と呼び、単位はHz(ヘルツ)です。
O、N、Sに直接結合するプロトンは、少量の重水を加えると、プロトンが重水素2H(D)と置換されてシグナルが消失または移動します。これによって、OHやNHなどの存在を確認することができます。
なかなかイメージがわかないと思うので、次回例題編を交えてこれらを見ていきたいと思います。