前回の銅の働き、多く含む食品、薬との併用のまとめでは銅について見ました。今回はマグネシウムについて見ていきます。
マグネシウム
マグネシウムは小腸などで吸収され、全身に運ばれます。生体内ではマグネシウムは主に骨に存在し、筋肉、脳、神経などにも存在しています。マグネシウムはカルシウムと同じく血清中の濃度がほぼ一定に保たれていて、濃度が低くなると骨のマグネシウムが血中に溶けだして血中濃度を維持しようとします。
マグネシウムの働きは主に補酵素として生合成反応や代謝反応に関わります。その他にも、骨の弾性維持、神経伝達、ホルモン分泌、筋収縮などにも関わっています。よってマグネシウムが不足すると、食欲不振や悪心嘔吐、神経障害、脱力感やふるえ、歯の形成不全などが起こると言われています。
マグネシウムの過剰症
現在のところ、食品によるマグネシウムの過剰症はないとされています。過剰に摂取されたマグネシウムは速やかに尿中排泄されるからです。しかし、高齢者などの腎機能が低下していて、慢性的に酸化マグネシウム製剤が投与されている場合では高マグネシウム血症を起こすことがあるため注意が必要です。
マグネシウムを多く含む食品
以下の食品はマグネシウムを多く含むと言われています。
- 動物性;さくらえび、マイワシ、イクラ、アサリ、ハマグリ
- 植物性;干しひじき、削り昆布、カットわかめ、ココア、インスタントコーヒー
マグネシウムは調理による流出も大きく、水洗いや煮たりすると失われやすくなります。よって煮汁まで食べられる料理にすることで効率よくマグネシウムを摂取できます。
マグネシウムと薬の相互作用
マグネシウムと相互作用を起こす薬の代表例には以下のようなものがあります。
- テトラサイクリン系抗生物質;難溶性のキレートを作り、マグネシウムと投与策剤の吸収が阻害される。
- キノロン系抗菌薬;難溶性のキレートを作り、マグネシウムと投与策剤の吸収が阻害される。
- ビスホスホネート系薬剤;難溶性のキレートを作り、マグネシウムと投与策剤の吸収が阻害される。
- アイセントレス(ラルテグラビル) ;難溶性のキレートを作り、マグネシウムと投与策剤の吸収が阻害される。
- ゲンボイヤ配合錠;難溶性のキレートを作り、マグネシウムと投与策剤の吸収が阻害される。
- スタリビルド配合錠;難溶性のキレートを作り、マグネシウムと投与策剤の吸収が阻害される。
- セフゾン(セフジニル);薬剤の吸収が低下し効果が減弱する(機序不明)
- セルセプト(ミコフェノール酸) ;薬剤の吸収が低下し効果が減弱する(機序不明)
- レスクリプター(デラビルジン) ;薬剤の吸収が低下し効果が減弱する(機序不明)
- メタルカプターゼ(ペニシラミン) ;薬剤の吸収が低下し効果が減弱する(機序不明)
- ジギタリス配糖体製剤;マグネシウムの吸着作用や消化管内のpH上昇により薬剤の吸収・排泄に影響を与えることがある。
- アレグラ(フェキソフェナジン) ;マグネシウムの吸着作用や消化管内のpH上昇により薬剤の吸収・排泄に影響を与えることがある。
- コロネル、ポリフル(ポリカルボフィル);効果が減弱するおそれ
- カリメート(ポリスチレンスルホン酸) ;効果が減弱するおそれ
まとめ
- マグネシウムを含む食品は、煮汁まで食べられる料理にすることで効率よく摂取できる。
- マグネシウムと相互作用を起こす薬は意外とあるので注意が必要。