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今、腸内フローラという言葉が流行っており、フロ→フローラが引っ張り出せれば、菌にふたをするイメージはできると思う。
フロリードゲル(ミコナゾール)の作用機序の前に、真菌について確認する。
真菌はヒトと同様に、真核生物なので、薬がヒトの細胞も攻撃してしまう恐れがある。よってヒトには影響を与えないような作用機序が必要である。
真菌の細胞において、ヒトと違うところは、細胞膜がエルゴステロールで構成されていることや細胞壁が1,3-β-D-グルカンで構成されていることなどがあげられる。主にこの2つを攻撃すれば、ヒトに影響を与えることなく真菌のみをやっつけることができる。
今回のフロリードゲル(ミコナゾール)はアゾール系に属する。アゾール系は先ほどの真菌構成成分のうち、真菌の細胞膜の構成成分であるエルゴステロールの生合成を阻害することで作用をしめす。
細かい機序は、アセチルCoAから始まり、スクアレン、ラノステロールなどを経て、エルゴステロールが作られる。そのうち、ラノステロールからエルゴステロールになるのに必要な酵素を阻害することで、エルゴステロールが作られないようにする。
実物はなめられなかったが、インタビューフォームに白〜微黄白色の糊状で、味はわずかに甘いとある。
臨床試験のデータでは、口腔カンジダに対する有効率は84.4%、食道カンジダに対する有効率は94.1%となっている。
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1日10〜20gを4回(毎食後、寝る前)にわけ、口腔内にまんべんなく塗布する。病巣が広範囲に存在する場合は口腔内にできるだけ長く含んだ後、嚥下する。
1日10〜20gを4回(毎食後、寝る前)にわけ、口腔内に含んだ後、少量ずつ嚥下する。
原則14日間とし、7日間投与しても改善がみられない場合には中止し、他の適切な療法に切り替えることと明記されている。
薬の使い方のメーカーから配られており、以下のようになっている。ゲルなのに飲み込むという不思議な使い方だ。
ステロイドパルスの患者でプレドニンを漸減していた患者がいたが、口腔内の荒れを主張していた。味覚障害も起きており、口腔内カンジダが疑われた。しかし入院前から口腔内が荒れていたようで、ステロイドの副作用とも言い難い。
とりあえず、はじめはファンギゾンシロップ(アムホテリシンB)が使われた。しかし、使用開始の日、患者は吐き気を訴えた。
次の日、先生の判断で、ファンギゾンシロップ(アムホテリシンB)を中止して、フロリードゲル(ミコナゾール)が開始された。当院はフロリードゲル(ミコナゾール)は置いておらず、借用しての使用だった。
フロリードゲル(ミコナゾール)を初日は10g/日を試してみて特に問題はなかった。そのため先生は次の日から20g/日にフロリードゲル(ミコナゾール)を増やした。しかし、増量した日の夜にまたしても吐き気があり、今度は嘔吐までしてしまった。
嘔吐した次の日、看護師さんから「主治医の先生が、ちょうど休みで困っている。どうすればよいか?」という相談の電話を受けた。
添付文書を見てみると、嘔気嘔吐は0.9%で、起こりうる副作用の中でもっとも確率が高いものだった。しかも過量投与のところにも嘔吐は明記されていた。だからといって、必ずしもフロリードゲル(ミコナゾール)の副作用とも言えない。なんとも言えないので、メーカーに聞いてみると、対処法まで追えている件数が少ないようで、休薬した症例や、カイトリル(グラニセトロン)を使用した症例くらいしかないのだそう。嘔吐が起こるメカニズムもはっきりしていないらしい。
私は悩んだ挙句、「今日は休薬して、明日先生が来てから判断を仰ぐのが良いのではないか?」という回答をし、そのような方針となった。
次の日、先生の判断でフロリードゲル(ミコナゾール)の継続が決まった。添付文書上、原則14日までとなっているので、どうにか持ちこたえてほしいと思った。
でもゲルを塗って飲み込むなんて使い方はなかなかないんじゃないかなぁ。他にもあるのか気になるところである。