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国民皆保険制度の破綻でも述べたように社会保障費を削減していかなければなりません。薬は治療効果を求められるのは当然ですが、その治療効果を得られるのにいくらかかったのかという経済的な面もよくなければ、社会保障費の削減につながりません。今回は薬物治療における経済評価方法についてみていきたいと思います。
冒頭で確認したように、その薬を使うといくらかかって、どういう効果が得られるのかという視点のもと経済評価が行われます。薬物治療の経済評価の種類には以下のようなものがあります。
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費用最小化分析は薬物治療において同じ効果である場合、費用が小さいものを効率的と判断する分析方法です。
例えば、降圧薬Aと降圧薬Bが同じくらい降圧効果があるとしましょう。この時、降圧薬Aの方が降圧薬Bよりコストが低ければ、降圧薬Aの方が優れていると考えます。
費用最小化分析はシンプルな考え方であるためわかりやすいですが、効果が同じであるという縛りがあるのが欠点です。
費用効果分析は効果の指標を1つ定めて、それにいくらかかったのかを分析する方法です。
例えば、抗がん剤Aと抗がん剤Bを使ったときに、どれくらい生存年数が伸び、どれくらい費用がかかったのかを調べます。ここで、抗がん剤Aが従来から使われている抗がん剤で、抗がん剤Bが新薬だったとしましょう。
新薬である抗がん剤Bが費用も安く、生存年数が伸びているのならば、間違えなく経済的な視点では抗がん剤Bの方が優れていると言えます。しかし、抗がん剤Bの方が生存年数が伸びているけれども、費用がかかっているというケースも考えられます。そういったときに使われるのがICERです。
ICERはIncremental Cost-Effectiveness Ratioの略で、増分費用効果比と訳されます。ICERは以下の式で表されます。
この時ICERの値が小さいほど費用対効果が優れていると言えます。さらにICERが負の値になることを優位と言います。
費用効果分析は特定の病気の治療効果の比較はしやすいですが、逆に効果の指標となる病気が異なるものには使えないというのが欠点です。
費用効用分析は効果の指標にQALYを使う分析方法です。
QALYとはQuality Adjusted Life Yearの略で、質調整生存年と呼ばれます。QALYはQOLを考慮した生存年数で、完全に健康な状態で生存した1年を1、死亡を0とした時に、各健康状態におけるQOLが0〜1のどこに位置するのかを考えます。
QALY=QOL×生存年数で求められ、例えば半身不随の状態ではQOLは0.5だったとし、半身不随の状態で10年生きたとすると、QALY=0.5×10=5と求められます。
費用効用分析はQALYを用いているので様々な病気に対する治療薬どうしも比較可能となります。
費用便益分析は治療効果を金銭に換算して分析される方法です。
例えば、ある薬Aを使って死亡を回避できたとしたら、得られた命の年数を金銭に換算して計算します。
費用便益分析は先ほどの例のように倫理面や現実的に難しいケースも多いのであまり使われません。