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禁止表国際基準(The List)総論
前回のスポーツファーマシストが関わる規則、Codeとは?では、禁止表国際基準(The List)が重要だという話をしました。今回は禁止表国際基準(The List)のルールなど総論的な形で見ていきたいと思います。
習うより慣れよになってしまいますが、まず禁止表国際基準(The List)は以下のようになっています。
常に禁止される物質と方法「競技会(時)および協議会外」
禁止物質
禁止方法
- M1.血液および血液成分の操作
- M2.化学的および物理的操作
- M3.遺伝子および細胞ドーピング
競技会検査で禁止される物質と方法
禁止物質
特定競技において禁止される物質
とりあえずみてもらった上で、捕捉をしていきます。
ちなみに、S、M、Pは以下の略称となっています。
- S;substance(物質)
- M;Method(方法)
- P;Particular(特定競技)
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禁止表国際基準(The List)に載るには
先ほどの禁止表に載るのはそれなりの理由があるから載せられるわけです。以下のどちらかの条件に当てはまる場合、禁止表国際基準(The List)に載せるかどうか検討されます。
- 当該物質が隠蔽薬であること
- 次にあげる3つの要件のうち2つ以上を満たす場合(1.競技力を向上させたり、させ得ること,2.健康上の危険性を及ぼし得ること,3.スポーツ精神に反すること)
要するにズルをしてはいけないということですね。
競技会(時)、競技会外とは
先ほどの禁止表国際基準(The List)に競技会(時)、競技会外という記載がありましたが以下のように定義されています。
- 競技会(時);競技者が参加する予定の競技会の前日の真夜中(11時59分)に開始され、当該競技会及び競技会に関係する検体採取手続きの終了までの期間(ただし、WADAから異なる期間として承認された競技会においては異なる期間が適用される)
- 競技会外;上記の競技会(時)以外の時間
特定物質
禁止表国際基準(The List)に載る物質は例外を除いて、全て特定物質として扱われます。特定物質であるかどうかによってドーピング違反した時のペナルティが変わります。
S6.興奮薬(a.特定物質でない興奮薬)以外にも、特定物質でない物質があるため注意が必要です。
まとめ
- 禁止表国際基準(The List)には色々な項目があるため、ルールを抑えておくことが大事。
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