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前回のS0.無承認物質、S1.蛋白同化薬。スピロペント(クレンブテロール)に要注意では、禁止表国際基準(The List)のうち、S0とS1を確認しました。今回は、S2.ペプチドホルモン、成長因子、関連物質および模倣物質を見ていきます。
S2.ペプチドホルモン、成長因子、関連物質および模倣物質は大きく以下のようにわけられます。
赤血球が増えれば、理論的には酸素の運搬能力が上昇します。つまり持久力が上昇するため、これらに関わる薬は禁止物質となりえます。赤血球ができるまでには、おおまかに以下のような過程を経て作られます。
この図からもわかるように、エリスロポエチンは赤血球の分化を促進します。ネスプ(ダルベポエチンアルファ)、ミルセラ(エポエチンベータベゴル)をはじめとするエリスロポエチン受容体作動薬は、受容体に結合してこの反応を起こすため禁止物質となります。
その他にもエリスロポエチンは体でも作られる物質であり、エリスロポエチンの遺伝子発現は体が調節しています。このエリスロポエチンの遺伝子発現に関わるものには、HIF(低酸素誘導因子)やGATAがあります。
HIFはエリスロポエチンの遺伝子発現を亢進します。しかし、PHDという酵素により通常大気中ではHIFは分解されます。ところが、貧血や低酸素環境下ではPHDの活性が低下します。つまり貧血や低酸素環境下ではHIFの分解が抑えられ、エリスロポエチンの遺伝子発現を亢進させます。
HIFに対してGATAはエリスロポエチンの遺伝子発現を抑制する因子です。通常大気中ではGATAもエリスロポエチンの遺伝子発現抑制に関わります。
前置きが長くなりましたが、エリスロポエチンの遺伝子発現を増やすには以下の方法などが考えられます。
よって、HIF活性化薬、GATA阻害薬なども禁止物質となりえます。HIF活性化薬には、ダーブロック(ダプロデュスタット)、マスーレッド(モリデュスタット)、エベレンゾ(ロキサデュスタット)、バフセオ(バダデュスタット)、エナロイ(エナロデュスタット)など現場でも割とみかける薬があります。
性ホルモンはおおまかに以下のような形で出てきます。
視床下部から黄体形成ホルモン放出ホルモン(LH-RH;Luteinizing Hormone-Releasing Hormone)が出てきます。ちなみに性腺刺激ホルモン放出ホルモン(Gn-RH;Gonadotropin Releasing Hormone)とLH-RHは同じです。
この黄体形成ホルモン放出ホルモン(LH-RH)が脳下垂体前葉にある、黄体形成ホルモン放出ホルモン受容体にくっつくと、黄体形成ホルモン(LH)が出てきます。ちなみにLHは男性に働く場合は、間質細胞刺激ホルモン(ICSH;Interstitial Cell stimulating Hormone)と呼ばれ、同じものです。黄体形成ホルモン(LH)の他にも、卵胞刺激ホルモン(FSH;Follicle Stimulating Hormone)も、脳下垂体前葉から放出されます。
最終的に、以下のものが出てきます。
この図からもわかるように、リュープリン(リュープロレリン)などをはじめとする薬は男性ホルモンの分泌などを促進する作用があるため禁止物質となりえます。ただし、男性のみで禁止となっています。
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性腺ホルモン以外にも、副腎皮質ホルモンに関わる薬も禁止物質となりえます。副腎皮質ホルモンも確認してみると
副腎は外側の副腎皮質、内側の副腎髄質という構造をとっていて、副腎皮質はさらに3つの層からなっていて、外側から、球状層、束状層、網状層と呼ばれます。
よって副腎皮質を刺激するような薬は、禁止物質となる糖質コルチコイドなどの分泌を促進するため禁止物質となりえます。