DNAの複製に関わる酵素

DNAが受け継がれるというような話をしますが、受け継ぐためには正しく複製(コピー)をしなければなりません。今回からDNAの複製について見ていきます。今回は特に複製に関わる酵素について見ていきたいと思います。

 

 

DNAの複製の総論

DNAは二重らせん構造をとりますが、この二本鎖DNAもとに新たに二本鎖DNAを作ります。これを複製と呼びます。DNAの複製は以下のような手順で行われます。

 

1. 二本鎖DNAを一本鎖DNAにする
2. 一本鎖DNAをもとに、それに対する新しいDNAを作る。(5’→3’方向に新しいDNAは伸びていく)

 

つまり複製では、もととなったDNAと新しいDNAから二本鎖DNAが2セットできることになります。

 

 

DNAの複製に関わる酵素

DNAの複製に関わる酵素には以下のようなものがあります。

 

• DNAヘリカーゼ；複製を行うにあたり、二重らせんをほどく酵素
• プライマーゼ(DNA依存性RNAポリメラーゼ)；RNAプライマーを作る酵素
• DNA依存性DNAポリメラーゼ；プライマーにデオキシリボヌクレオチド三リン酸をくっつけ、5’→3’方向にDNA鎖を作る酵素
• DNAリガーゼ；ラギング鎖の岡崎フラグメントをくっつける酵素

 

 

先ほどの総論をイメージしながら、複製について上記の酵素を絡めてもう少し細かく見ていきます。

 

 

DNAの複製は開始点と呼ばれる、複製を開始する場所があります。真核生物は複数ありますが、原核生物は1つしかありません。いずれにしてもDNAの二重らせんをほどく必要があります。その二重らせんをほどくのがDNAヘリカーゼです。ちなみに補足ですが、DNAの二重らせんがねじれたりしていると複製がうまくいきません。このねじれを直すのがトポイソメラーゼです。トポイソメラーゼは以下の二種類あります。

 

 

• �T型DNAトポイソメラーゼ；二本鎖DNAの1本を切断してひずみを調製して再結合する
• �U型DNAトポイソメラーゼ；二本鎖DNAの両方を切断してひずみを調製して再結合する

 

 

一本鎖となったDNAを鋳型にして、プライマーゼがRNAプライマーを作ります。プライマーは電車でいうところの、始発駅です。このプライマーをもとに5’→3’の方向に新しいDNAの合成が行われます。この新しいDNAの合成を行うのが、DNA依存性DNAポリメラーゼです。このDNAポリメラーゼによりできたDNA断片を岡崎フラグメントと呼びます。ちなみにDNAポリメラーゼの働きはとても正確ですが、たまに間違えてしまうことがあります。間違えて複製すると、正しく情報が受け継がれず大変なことになってしまいます。この誤りを正す働きをエキソヌクレアーゼ活性と呼びます。

 

先ほど複製は真核生物は複数あるという話をしましたが、複数の開始点があることから、複数の岡崎フラグメントが作られることになります。そうすると、駅から線路は伸びるもののどこかで次の駅と線路を繋げなくてはなりません。その岡崎フラグメントどうしをくっつける、のりのような役割をするのがDNAリガーゼです。

 

まとめ

• DNAヘリカーゼは二重らせんをほどく酵素
• プライマーゼはRNAプライマーを作る酵素
• DNA依存性DNAポリメラーゼはプライマーにデオキシリボヌクレオチド三リン酸をくっつけ、5’→3’方向にDNA鎖を作る酵素
• DNAリガーゼはラギング鎖の岡崎フラグメントをくっつける酵素