薬剤師の調剤過誤と対策、ヒューマンエラーとバイオレーション

薬剤師の調剤過誤と対策、ヒューマンエラーとバイオレーション

薬剤師の調剤過誤は日々起こります。調剤過誤には、ヒューマンエラーとバイオレーションがあります。原因を深掘りして考え、対策を行っていくことで、ミスが減ってきます。

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薬剤師の調剤過誤と対策、ヒューマンエラーとバイオレーション

多くの医療機関や保険薬局で日々調剤過誤防止対策を重要課題としていますが、調剤過誤は起こり続けます。先日もワーファリンを倍量患者さんに渡してしまうというニュースが放送されていました。調剤過誤で不利益を被るのは、薬剤師ではなく、患者さんです。

 

 

日々発生する調剤過誤や調剤ミスに慣れてしまい、調剤過誤防止に向けた活動がマンネリ化するのはなぜでしょうか?

 

その理由の1つとして、調剤過誤防止活動のための必要な知識を知らないため、具体的な改善策が立案できていないことがあげられます。その結果、調剤過誤や調剤ミスの発生が日常的となってしまいます。

 

まず調剤過誤を起こす原因を知るために、ヒトの情報処理のメカニズムを簡単に確認すると、

 

  • インプット→プロセス(知覚、判断、動作)→アウトプット

 

という手順を踏みます。

 

 

この過程を私たちは当たり前のように行っているので、ミスなく薬のお渡し(アウトプット)ができています。調剤過誤が起きるときは、ここのどこかの過程でミスが起きています

 

調剤過誤とは

調剤の不具合の分類には以下のようなものがあります。

 

  • 調剤事故;医療事故の一類型。調剤に関連して、患者に健康被害が発生したもの。薬剤師の過失の有無を問わない。
  • 調剤過誤;調剤事故の中で、薬剤師の過失により起こったもの。調剤の間違いだけでなく、薬剤師の説明不足や指導内容の間違い等により健康被害が発生した場合も、「薬剤師に過失がある」と考えられ、調剤過誤となる。
  • インシデント事例(ヒヤリハット事例);患者に健康被害が発生することはなかったが、「ヒヤリ」としたり、「ハッ」とした出来事。患者への薬剤交付前か交付後か、患者が服用に至る前か後かは問わない。

 

要するに調剤過誤は薬剤師の過失によって起こるわけです。調剤過誤には、2つのタイプがあります。

 

  • ヒューマンエラー;意図しない行為。つい、うっかり。
  • バイオレーション;意図した行為。起こるべくして起こった過誤。

 

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ヒューマンエラー

ヒューマンエラーに関わる要因は、その名の通り、ヒトのみとなります。先ほどのヒトの情報処理メカニズムで言うところでは、プロセスが異なります。プロセスが異なる結果、違うアウトプットが出てきて調剤過誤となってしまいます。

 

 

ヒューマンエラーは、意図しない行為であるため防ぐことが難しいです。

 

バイオレーション

バイオレーションに関わる要因は主に4つのMからなります。

 

  • Man(ヒト)
  • Machine(設備)
  • Material(材料)
  • Method(手順)

 

バイオレーションは、ヒューマンエラーと異なり、プロセスもないため、アウトプットがどのようになるかすらわかりません。

 

 

バイオレーションは起こるべくして起こった過誤であるため、バイオレーションを防いでいくことが重要となってきます

 

では、バイオレーションを防ぐにはどうすればよいのか?

 

答えはすでに書いてあります。バイオレーションは主に上記の4Mからなるため、そこの観点から改善策を打っていけばよいわけです。改善策を考える上で、重要となってくるのが、フールプルーフです。

 

フールプルーフ

フールプルーフとは、エラー及びそれに起因する種々のトラブルを防止するための作業方法に関する総合的な工夫を言います。要するにミスを防ぐための工夫です。

 

フールプルーフは、リスク評価の視点より、ミスの発生を防ぐ、ミスを検出する、ミスの影響を無くすという視点で整理していきます。これらの視点から見たときに以下の5つの要素から考えていきます。

 

  • 代替化;エラーしやすいものを、機械等のより信頼できるもので置き換える
  • 容易化;作業をヒトにとって簡単なものにする
  • 排除;条件を変えることで、エラーを起こしやすい作業や注意を不要にする
  • 異常検出;操作や結果における異常を発見し、是正処置がとられるようにする
  • 影響緩和;冗長化や制限、保護を設けることで、エラーの影響を少なくする

 

それでは、例と対応策の例をみてみます。

 

 

 

 

 

 

気をつける指導より、気をつけなくてよい仕組みができるならば、それに越したことはありません。それを可能にする一番手っ取り早いのは機械化です。コストやスペースなどの問題がありますが、得られる恩恵は非常に大きいです。これからは対人業務にシフトしていかなければならないことも考えると、機械化は必須です。機械に投資せず、ケチるような経営陣ならば、これから保険薬局で起こることが全然わかっていないと言えます。

 

そして対策を立てる際に、原因をしっかりと考えることが重要です。原因はただ「薬の名前が似ていたため」だけではなく、なぜ似ている名前の薬を取り間違えたのか?例えば、「類似名の薬があることをスタッフに周知していなかった」となぜなぜなぜと深掘りして原因を追究していくことが重要となってきます。

 

対策を立てられたら、しっかりと明文化しないと結局なぁなぁのまま行われて、風化していく・・・となるため記録に残したり、マニュアルを改定していくことも大事です。「うちはずっと前からこの方法でやっているから」と固定観念にとらわれるのも良くないので、必要に応じてマニュアルを改定する勇気も必要となってきます。

 

対策を実施して効果を確認して、問題なければ継続、問題があるようならば再検討と繰り返していくことでミスが減っていきます。残念ながら、調剤過誤などのミスをしない人はいません。失敗した後にどう改善していくかで、その人に対する評価は変わってくるので、しっかりとマネジメントをしていきましょう。

 

まとめ

  • 調剤過誤には、ヒューマンエラーとバイオレーションがある。
  • ヒューマンエラーはヒトのみに起因し、防ぐことが難しい。
  • バイオレーションは4Mに起因し、こちらの改善をすることが重要。
  • 原因を深掘りして考え、そこから導き出される対策を実行し、見直しを続けていくことでミスは減る。

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