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肝代謝?腎排泄?
薬が肝代謝なのか、腎排泄なのかわからないときがあります。どのようにしたらよいでしょう?
@用法用量
薬によっては添付文書に「腎機能に応じて減量すること」などと文言がついていることがあります。この文言がある場合は、その経路で消失することが多いです。
例えばクラビットを見てみるとそのような文言が書いてあり、さらに「使用上の注意」にも高度の腎機能障害と書かれていて、高い血中濃度が持続されると書かれています。
このように書いてあれば、大変わかりやすいです。しかし必ずしも、このような記載があるわけではありません。そのような場合どうすればよいでしょう?
A静脈注射後の尿中未変化体排泄率
ADMEで学習したように、腸から吸収された薬は、肝臓の代謝を受けて、体内に分布し、尿中排泄されるのが一般的な流れになります。
ここでもし、尿中に排泄されているのが代謝を受けていない「未変化体」だったら、どうでしょう?
肝臓での代謝を受けないで、腎臓で尿排泄されていることになるので、この薬は腎排泄であることが予想されます。つまり、「尿中未変化体排泄率」に着目すればよいのです。
しかし、注意する点があります。経口摂取したあとは腸でまず吸収されるので、腸での吸収率が悪ければ、吸収された薬のすべてが尿中排泄されたとしても、投与量に対する割合が低くなります。
よくわからないと思うので例をあげます。先ほどの代謝の流れをイメージしてもらい、薬を100mg投与したとしましょう。腸での吸収率が30%とすると、30mgが吸収されることになります。全く肝臓での代謝を受けないとしても腎排泄されるのは30mg以下となるはずです。これでは腎排泄と呼ぶのはいかがなものかとなってしまいます。
よって、「静脈注射後の尿中未変化体排泄率」に注目しましょう。静脈注射であれば、吸収の過程はスルーでき、先ほどの例であれば、100mg静脈注射すれば、100mg血中にのることになるので、そのあとの尿中未変化体排泄率であれば、ほぼ腎臓で排泄されているものと判断できます。
まとめると、静脈注射後の尿中未変化体排泄率が、
- 低いもの;肝代謝
- 高いもの;腎排泄
となります。
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B相互作用
相互作用のところに、ニューキノロン(ノルフロキサシン、シプロフロキサシン)、シメチジン、エリスロマイシン、アゾール系(イトラコナゾール、ミコナゾール、フルコナゾール、ケトコナゾール)などが書かれていたら、肝代謝と考えてよいでしょう。
なぜならこれらの薬はCYPの阻害薬だからです。ちなみにCYPとは肝細胞内に存在する酵素で代謝に関わります。すなわち肝代謝に関わる要因の1つです。
国家試験の暗記法ですが、ゴロを紹介しておきます。
- おニューの湿ったスロットマシーンを、オメーがなぞーる。
- おニュー;ニューキノロン系
- 湿った;シメチジン
- スロットマシーン;エリスロマイシン
- オメー;オメプラゾール
- なぞーる;アゾール系
今日は待ちに待ったスロットの新台の日!!先頭で楽しみにしながら、店の中をのぞくとスロットマシーンがなぜか湿っています。よく見ると店員(オメー)がスロットマシーンをなぞっていたという話です。
同様に、カルバマゼピン、フェニトイン、フェノバルビタール、リファンピシンなどはCYPを誘導します。
これも国家試験の語呂合わせですが、「カーとフェリーで誘導」があります。車とフェリーで誘導しているイメージです。車はともかくフェリーで誘導するってどんだけデカいもの誘導しているんだよ!と突っ込みがありそうですが、気にしないでください。
- カー;カルバマゼピン
- フェ;フェニトイン、フェノバルビタール
- リー;リファンピシン
- 誘導;CYP誘導
これらも書かれていれば肝代謝の可能性が高いです。
C分配係数
分配係数って何だっけ?となる方も多いのではないかと思います。ビーカーに水と油をいれて2層にわかれるイメージのやつです。分配係数では油に溶けるのか、水に溶けるのかがわかります。
分配係数=油層中の濃度/水中の濃度と表されます。
この式では分子の油の濃度が上がれば、油に溶けやすく、水中の濃度が上がれば水に溶けやすいのがわかると思います。この式において、
- 分配係数>1であれば、肝代謝型
- 分配係数<1であれば、腎排泄型
ということができます。一般的に、水溶性の薬は腎排泄で、脂溶性の薬は肝代謝であるためです。これらからもある程度予想がつけられます。
必ずしも肝代謝なのか、腎排泄なのかのっているわけではないので、これらの情報を考えるとどちらの経路なのか見えてきます。
まとめ
- 用法用量、静脈注射後の尿中未変化体排泄率、相互作用、分配係数に代謝経路のヒントがある
肝代謝?腎排泄? 関連ページ
- 添付文書から正しい情報を得る。
- 添付文書は唯一の法的根拠のある文書です。添付文書には薬を正しく使うための最低限の内容が書かれていて、それを補うのがインタビューフォームです。新人や実習生だけでなく、薬剤師も安定性などでインタビューフォームはお世話になります。
- 添付文書で見落としがちな項目
- 添付文書には効能効果などの有名な項目に加えて様々な項目が載っています。ここでは見落としがちな、改定年月日、薬価収載年月、使用期限、過料投与についてみていきます。
- 薬の商品名を覚えるには
- 実習生の時には成分名で覚えます。それに対して、現場では商品名を使うことがあります。このギャップを埋めるにはインタビューフォームをみて、薬の由来で関連付けると、理解が深まり覚えやすいです。
- 適応、用法用量は正しく確認を。
- 薬によっては、同じ成分でも適応自体異なったりすることがあります。薬を正しく使えるように薬剤師は常にアップデートし、確認する必要があります。
- 警告、禁忌、慎重投与、併用禁忌、併用注意をもとに疑義照会する
- 新人や実習生でも疑義照会する機会があると思います。警告、禁忌、併用禁忌は必ず疑義照会し、併用注意や慎重投与は問題が起きてから考えましょう。
- 副作用をモニタリングし、服薬指導へ
- 重大な副作用と呼ばれる致死的なものがあります。それの前兆のサインとして、その他の副作用があります。薬の作用機序などで特徴的なものは患者さんに伝えるべきです。わかりやすい言葉を心がけ、対処法も伝えてあげることが重要です。