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八綱(陰陽、虚実、寒熱、表裏)
皆さんは漢方が得意でしょうか?私は学生の頃から生薬が嫌いで、そのまま薬剤師となり、漢方は食わず嫌いのまま放置してきました。しかし、このままではいかんと思い、まとめることにしました。このカテゴリーでは漢方の基本的な内容をまとめていきたいと思います。今回は主に漢方の歴史や病態把握の指標について見ていきます。
西洋医学が最先端理論に基づいた医学の探求により発展してきたのに対して、東洋医学は医学古典に基づいた実践と応用の積み重ねにより発展してきました。そのもととなる代表的な古典には以下のようなものがあります。
- 黄帝内経;黄帝内経は現存する最古の本格的な中国医学書で紀元前2〜1世紀ごろにできたと考えられている。東洋医学における生理や病理などに基づいた養生法や鍼灸の治療学なども書かれている
- 神農本草経;紀元1〜2世紀ごろにできたとされる薬物学書。365品の生薬を有効性や危険性の観点で上薬、中薬、下薬に分類
- 傷寒雑病論;3世紀ごろにできたとされる薬物治療学書。そののち、傷寒論や金匱要略にわかれた。
漢方は西洋医学とは全く異なった診断治療体系を持ちます。西洋医学では病気の診断をつけてから治療が行われます。
西洋医学に対して漢方は例えばガンの末期で食欲がないなど、患者の何かしらの不都合な自覚症状に対して治療が行われます。つまり、明らかな病変部位がない機能異常を主とする疾患に漢方は使いやすいということができます。
つまりそれぞれ得意分野を持っているので、お互いの得意分野を上手に活かすことで良い医療を行うことができます。西洋医学と東洋医学を飛行機に例えるならば、左の翼が西洋医学、右の翼が東洋医学でそれぞれの翼がバランスを取ることで空を飛べるようなイメージです。
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病態把握の指標
漢方を考えるに当たって、西洋医学とは異なる考え方が必要という話をしましたが、漢方における病態把握をする指標には八綱(はっこう)があります。八綱には以下のようなものがあります。
- 陰陽
- 虚実
- 寒熱
- 表裏
陰陽
陰陽は性質や作用を表し、漢字からある程度推測はつくかと思います。例えば陰は、暗い、寒い、不活発、消極的、閉鎖的のようなイメージがあると思います。逆に陽は、明るい、温かい、活発、積極的、開放的などのイメージがあると思います。
陰陽で注意すべきなのが、絶対的なものではなく常に何かと比較した相対的なものであるということです。例えば、お父さんがお母さんと比べたときに、お父さんが陽、お母さんが陰であったとします。しかしお父さんと子供を比べたときにはお父さんが陰、子供が陽であるなど、比較対象によって変わってくるということです。
虚実
虚実は量の過不足を表し、陰陽と同じく漢字のイメージを考えてみると、虚は例えば空虚などというように空っぽのような言葉で使われます。ここから緊張がない、無力的な、生命力が衰えて不足した状態などのイメージがわくかと思います。逆に実は充実などというようにぎっしり詰まったような言葉で使われます。ここから緊張が強い、力が強いなどのイメージがわくかと思います。
虚実を考える上で、体質の虚実と病毒の虚実を区別することが必要です。体質の虚実とは、普段の全体的な体質傾向のことです。例えば筋肉質で体力がある人は実、やせていたり体力がない人は虚といった具合です。しかし実際にはすべての人にこれを当てはめることは難しいので、消化器症状と活動性に注目して考えます。実は、食べるのが早い、食事を抜いても平気、活動的、疲れにくいなどの特徴があります。虚は胃腸が弱い、下痢しやすい、疲れやすい、抵抗力が無いなどの特徴があります。
これらの虚実にあった処方を出すのが一般的ですが、例外もあります。それを考えるのに使えるのが、次の病毒の虚実です。病毒の虚実は体内にある病毒の量、発熱、発赤、腫脹、疼痛など、からだに現れた闘病反応で測ります。例えば月経痛を訴えるやせて体力がない体質が虚証の女性が、下腹部の圧痛が強い場合は実と考えて実証向きの処方を出したりします。
寒熱
寒熱は状態を表し、寒い、熱いと思いがちですが、自覚的な感覚で、必ずしも体温の高低ではないことに注意が必要です。例えば高熱が出ていても悪寒があるようなら寒と判断します。
表裏
表裏は病邪がどこにあるかを示します。表は表側のイメージで例えば、皮膚、皮下組織、表位筋肉、頭部、咽頭、鼻、四肢、関節などです。裏は内側のイメージで例えば消化管などがあげられます。その他にも半表半裏もあり、これは表と裏の中間地点で横隔膜周辺などがあります。
まとめ
- 西洋医学と東洋医学は異なった診断体位系をとるため、両者を組み合わせるとよい医療ができる
- 病態把握の指標に八綱(陰陽、虚実、寒熱、表裏)がある
八綱(陰陽、虚実、寒熱、表裏) 関連ページ
- 気血水、六病位、五臓六腑
- 漢方において、病態把握の手段には気血水、六病位、五臓六腑などがあります。五臓とは肝、心、脾、肺、腎を指し、六腑は胆、小腸、胃、大腸、膀胱、三焦を指します
- 証、四診、補瀉
- 証は処方の適応病態ということができ、証を決める方法が四診で望診、聞診、問診、切診などがあります。漢方の治療原則には補瀉があり、これに則った治療方法に汗、吐、下、利、和、温があります。
- 漢方の副作用、麻黄、甘草、附子、大黄
- 麻黄に含まれるエフェドリンには交換神経興奮作用があります。甘草に含まれるグリチルリチンには尿細管においてカリウム排泄促進作用があります。そのため副作用には注意が必要です
- 小児への漢方薬の飲ませ方
- 漢方薬を小児に用いる場合は、年齢や体重をもとに少なめに出し、小児に飲ませるには、甘いものなどを用いると飲ませやすいです。漢方を食前で飲み忘れる場合は食後服用でも問題ないです。