Sponsored Link
プロトロンビン時間-国際標準比(PT-INR)、ワーファリン(ワルファリンカリウム)との関係
PT-INRは、international normalized ratio of prothrombin timeの略であり、プロトロンビン時間-国際標準比と訳されます。
前ページ、プロトロンビン時間(PT)の基準値、血液凝固系の復習も、で取り扱ったプロトロンビン時間(PT)は、試験によって差(誤差)が出る可能性があります。試験ごとの差が出ないようにしたものが、プロトロンビン時間-国際標準比(PT-INR)です。
ただ、ここで気を付けてもらいたいのが、検査自体はプロトロンビン時間(PT)を測定することでプロトロンビン時間-国際標準比(PT-INR)を算出しており、別の検査というわけではありません。換算式にプロトロンビン時間(PT)を当てはめることで、プロトロンビン時間-国際標準比(PT-INR)を求めています。
プロトロンビン時間(PT)は血液凝固に関わりました。よってプロトロンビン時間-国際標準比(PT-INR)も血液凝固に関わります。
Sponsored Link
Sponsored Link
PT-INRとワーファリン(ワルファリンカリウム)
プロトロンビン時間-国際標準比(PT-INR)は血液凝固の指標ですが、何よりワーファリン(ワルファリンカリウム)が適正に使えているかを判別するための指標と言っても過言ではないでしょう。
ワーファリン(ワルファリンカリウム)は、肝臓でビタミンKと拮抗して、プロトロンビンなどの合成を阻害することで、抗凝固作用を示します。その作用は遅く(長く)、定常状態に達するまでに約7日くらいかかります。そのため、ワーファリン(ワルファリンカリウム)が内服開始となってから、どれくらい時間が経って検査されたかも重要です。内服開始直後のプロトロンビン時間-国際標準比(PT-INR)では、定常状態に達しておらず、参考にならないからです。
通常、ワーファリン(ワルファリンカリウム)のコントロールとして、
- 70歳未満は2.0〜3.0
- 70歳以上は1.6〜2.6
を目標にコントロールされることが多いです。ちなみに覚え方はありません(笑)かなり有名な薬であり、触れる機会が多いはずなので自然と身についてくるはずです!!
プロトロンビン時間-国際標準比(PT-INR)の増減で気にすること
プロトロンビン時間-国際標準比(PT-INR)が増減したときに、薬剤師として考えたいこととして以下のものがあります。
- コンプライアンス(アドヒアランス)
- 相互作用
- 食事
コンプライアンス(アドヒアランス)
正しく薬を飲めていなければ、プロトロンビン時間-国際標準比(PT-INR)がコントロールしたい数値にならないのは当たり前です。大変かもしれませんが、処方日数と残薬がどれくらい理想と離れているかをチェックすると、どれくらい飲み忘れているかがわかります。
逆に予定より減りすぎている場合は飲みすぎの可能性もあります。ワーファリン(ワルファリンカリウム)は、医師が用法用量を調節する可能性が高い薬なので、薬剤師も含めてうまく患者に伝わらないと、前回と同じ用法用量で飲んでしまうこともあります。
経験上、他の薬もそうですが、患者さんが嘘をついて、「飲んでいる」と言っていることも時にあります。そこを聞き出せるかも薬剤師の腕の見せ所です。
相互作用
詳しくは添付文書を参照ですが、ワーファリン(ワルファリンカリウム)は相互作用を起こす薬が多いです。併用注意に載っている薬と併用しても何の影響もないこともありますが、思いもよらぬ薬が開始になったことで相互作用を起こす可能性があります。今まで順調にプロトロンビン時間-国際標準比(PT-INR)がコントロールできていたのに、急にずれてしまったら、新しく開始となった薬との相互作用を疑ってみましょう。
経験談ですが、ワーファリン(ワルファリンカリウム)を使っている患者にエルネオパ1号が開始となって、プロトロンビン時間-国際標準比(PT-INR)がずれてしまったということがあります。輸液なども、ビタミンKを含むものがあるので注意が必要です。
食事
有名なのが、納豆、青汁、クロレラなどの食材です。これらは有名なので、併用がないかチェックすることが多いと思います。
しかし、他の食材を含めた食事にも微量ながらにビタミンKは入っています。何らかの理由で食事量が極端に減っていた患者が元気になり、食事がとれるようになってきて、食事量が増えたらどうなるか?「塵も積もれば山となる」ということわざにあるように、ビタミンKの量も増えてきます。
ビタミンKが増えれば当然、ワーファリン(ワルファリンカリウム)と拮抗するので、プロトロンビン時間-国際標準比(PT-INR)が理想のコントロールの値からずれてきます。
結構このケースは遭遇すると思います。
ワーファリン(ワルファリンカリウム)の調節は、薬剤師も薬物治療に大きく関わることのできる薬の一つなので、注意してみましょう。
まとめ
- プロトロンビン時間-国際標準比(PT-INR)は、ワーファリン(ワルファリンカリウム)の治療のコントロールの指標の1つとして、使われる。
- 薬剤師として、コンプライアンス、相互作用、食事などの観点からチェックすることで問題点が見えてくることもある。
プロトロンビン時間-国際標準比(PT-INR)、ワーファリン(ワルファリンカリウム)との関係 関連ページ
- 薬剤師は、安全で効果的な薬物治療に検査値を役立てる。
- 薬剤師は安全で効果的な薬物治療する上で、検査値をある程度知らなければなりません。ただし、正しい検査値が出るとは限らず、個人差があります。基準値を信じすぎないことも根本的に大事なことです。
- カルシウムの基準値、カルシウム入りの箱豆腐
- カルシウムは骨のイメージが強いですが、血液凝固、神経伝達、筋収縮などに関わります。基準値のゴロとして、カルシウム入りの箱豆腐と覚えてください。
- ケトン体と糖尿病性ケトアシドーシス
- ケトン体は、アセト酢酸、β-ヒドロキシ酪酸、アセトンの3つの総称で酸性です。ケトン体は、飢餓状態や糖尿病などで糖がうまく利用されないと、増えてきます。特に糖尿病性ケトアシドーシスに関わります。
- クレアチニンクリアランス、GFR、Cockcroft-Gault式の覚え方
- クレアチニンからクレアチニンクリアランスを予測した式がCockcroft-Gault式で、腎機能障害をある程度予想できます。日本人の体格によりあったものがGFRとなります。
- クレアチンキナーゼの基準値、CK-MM、CK-MB、CK-BBも。
- クレアチンキナーゼは骨格筋、心筋、脳などに含まれる酵素であり、何らかの損傷を受けると、上昇します。アイソザイムには、CK-MM、CK-MB、CK-BBの3種類があり、どこに損傷があるか推測できます。
- 血小板の基準値、決勝戦は40万円もする!?
- 血小板は、出血した時、初期の止血に関わります。しかし血小板が多すぎてしまうと、今度は血栓のリスクが高まります。覚え方のゴロとして、「決勝へ行こう40万で」が覚えやすいです。
- CRPの基準値、プロカルシトニンとKL-6も
- CRPは炎症の検査値として有名ですが、これだけでは細菌性やウイルス性なのかの判断がつきません。プロカルシトニンは敗血症、KL-6は間質性肺炎に特異的な検査値として使われます。
- 総ビリルビンの基準値、間接ビリルビンと直接ビリルビン、ウロビリノーゲンとの関係
- 総ビリルビンは、主に黄疸の指標として使われます。赤血球のヘモグロビンが壊されできたものが、間接ビリルビンで、肝臓で処理されたものが直接ビリルビンです。総ビリルビンはそれらの和となります。またビリルビンは腸内細菌によってウロビリノーゲンとなります。
- 尿潜血の基準値、陽性が意味するものは?
- 患者さんで、尿が明らかに赤いことがあります。見た目ではわからない血尿を調べるものが尿潜血です。尿潜血が陽性(+)だと、腎臓、尿管、膀胱、尿道などに異常がある可能性があります。
- 尿蛋白の基準値、腎臓との関係
- 尿蛋白は腎臓や尿路系の障害に主に関わります。障害部位によって、腎前性、腎性、腎後性とわけられます。その他にも、妊娠によっても蛋白尿がでることがあるので注意が必要です。
- 尿沈渣の基準値、尿蛋白、尿潜血、尿糖が異常な時に調べる検査
- 尿沈渣は、尿蛋白、尿潜血、尿糖が異常な時に行われる検査です。顕微鏡を用いて調べる検査で、尿沈渣を調べることで、腎臓や泌尿器系の疾患を調べることができます。
- 尿糖の基準値、血糖値と尿細管のバランス
- 尿糖は血糖値が高くなり、尿細管での再吸収が間に合わなくなると、出てきます。尿糖は食事による影響を受けるため、採尿する時間帯によって、様々な判断材料になりえます。
- 尿比重の基準値、とうとう父様が・・・
- 尿比重は、主に腎臓の尿濃縮力を見ることができる検査値です。覚えるゴロとしては、とおとお(とうとう)、父様(とうさま)の尿比重が基準値外にで覚えてください。
- 白血球の基準値、白血球区分の基本の5つとは
- 白血球は主に生体防御に関わります。白血球の基準値が異常値を示すようであれば、基本的な5つの区分をみてみましょう。白血球は、好中球、好塩基球、好酸球、リンパ球、単球の5つにわけられます。
- プロトロンビン時間(PT)の基準値、血液凝固系の復習も
- プロトロンビン時間(PT)は主に外因系に関わる基準値です。血液凝固系には、内因系と外因系と共通系があります。プロトロンビンを含めた血液凝固因子は肝臓でほとんどつくられているので、肝障害の可能性もあります。
- HbA1cの基準値、グリコアルブミンと1,5AGとの関係。
- HbA1c、グリコアルブミン、1,5AGは糖尿病における長期的な血糖コントロールの検査値です。HbA1c、グリコアルブミン、1,5AGは反映される期間の長さが違いの1つと言えます。
- ヘモグロビンの基準値、MCVも合わせてチェック
- ヘモグロビンは酸素や二酸化炭素の運搬に関わります。基準値を下回ると、貧血を起こす可能性があります。貧血の種類は赤血球の大きさを表すMCVによって細かくわけることができます。
- ASTとALTの基準値、アセトアミノフェンには特に気を付けよう!
- ASTとALTはアミノ酸の代謝に関わっています。ASTは肝臓の他に、心臓や骨格筋にも含まれています。ALTは主に肝臓に含まれていて、肝障害を見ることが出来ます。代表的な薬にアセトアミノフェンがあり、頻度も高いため注意が必要です。